2020 Fiscal Year Research-status Report
着脱可能型レジンセメントシステムにおける近紫外光LED照射器の開発
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20K09983
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
高垣 智博 朝日大学, 歯学部, 准教授 (60516300)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光照射器 / UV-LED / 可逆性接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来から接着性レジンセメントは、歯質への接着性能とその耐久性の向上を主眼に開発されてきた。化学重合と光重合を組み合わせたデュアルキュアタイプが現在では主流であり、近年ではその信頼性は非常に高く、臨床でも間接法修復だけでなく、幅広く応用されている。しかしながら、従来からの「仮着」「本着」の概念では、接着性レジンセメントを使用しての修復物の装着は基本的には不可逆的なものであり、脱離ならびに破折防止への信頼性向上は望めるものの、修復物の部分的な破折や、マージンからの二次う蝕発生時には、破壊的な方法で修復物全体を撤去せざるを得ないのが現状である。申請者らの研究により開発された、光分解性PRX架橋剤を用いることで、可視光照射にて硬化し、紫外光照射で分解するレジン硬化体を作製する技術を応用し、着脱が可能な新規接着性レジンセメントの基礎技術を開発することが本研究の目的である。本研究においては、光分解のためのUV-LED光照射器の検討が不可欠である。UVC領域(波長280nm以下)での光分解性能はすでに検討しているが、臨床応用を進めるためより安全な波長域のUV-LED光照射器を用いる必要がある。 研究協力体制を築いている企業から、試作UV-LEDの提供を受け、電源装置や遮蔽環境下での光照射が可能な実験用の照射装置の確立を試みた。具体的には265,285,300,340nmの波長を持ったLEDを試作し、光源からの距離(ワーキングディスタンス、WD)における照度計測を実施した。 また、UV-LED装置の他用途への応用の検討として、歯質漂白剤との併用や、歯冠修復材料表面のコンタミネーションの除去などの検討を加えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染症に伴う緊急事態宣言の発令により、研究協力機関との協力が困難であり、進捗に遅れをきたしている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力者との共同実施に不安が残るものの、照射器自体の開発は順調に推移しており、検討も順調に進められている。照射器の検討のみならず、今後は可逆性接着システムの構築のためにPRX配合のレジンセメント試作品を用いた実験の実施を検討していきたい。臨床応用の可能性をより実現可能なものにするためにも、より安全な波長域での光分解の可能性を検討することが必要とされる。最終的な製品への検討としては、レジンセメントに配合した 試作品での検討が望ましいが、配合に十分な光分解性PRX架橋剤の合成は困難であるため、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の機器を用いた光分解性の検討などの基礎実験を優先して実施したい。 光学的な解析機器においては、共同研究契約にて使用可能となっており、当分野で所持していない機器を十分に補うことが可能である。積分球にての照度計測を実施し、より信頼できる光照射器の開発に向けての基礎的データを構築したい。実験実施のための研究協力機関との往来が難しいため、オンラインでのミーティング等を積極的に実施し、課題解決を進めていく。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言のため、東京の研究協力機関との往来が制限されたため、出張費や学会参加経費などが使用されなかった。また、研究の進捗が遅れているため、必要な材料や機器の購入も遅れている。今年度にて可能な限り計画の遂行を推進する予定である。
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