2020 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞由来ペプチドを利用した炎症抑制と組織再生の両立を実現する治療法の確立
Project/Area Number |
20K10014
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
帖佐 直幸 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (80326694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下山 佑 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (90453331)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 炎症 / 炎症抑制 / 組織再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞(MSC)は組織再生以外にも免疫抑制作用など生命維持のために重要な役割を担っている。本研究では、炎症の場に集積したMSCから分泌されたサイトカイン様ペプチドSCRG1がオートクリンにMSCのstemness維持と遊走促進に寄与するとともに、マクロファージ(Mφ)にパラクリンに作用して炎症の抑制や収束、ならびにそれに引き続く組織再生に寄与することを明らかにする。加えて、MSCをセル・デバイスとする移植実験で、SCRG1による炎症抑制効果と組織再生の両立を実現できるかを検証する。SCRG1の作用を分子レベルで解明するとともに、炎症抑制と組織再生を両立するペプチド創薬ならびに細胞治療への応用へと発展させることを目的とする。研究計画の初年度は ①SCRG1が誘導するシグナル伝達経路を同定し、同定されたシグナル経路を活性化するための ②機能ドメイン(SCRG1-FD)を探索する。次年度以降は ③組換えSCRG1-FD(rSCRG1-FD)を作製して ④歯周炎モデルマウスへrSCRG1-FDを投与することで、炎症の抑制効果を検証する。加えて、 ⑤歯周炎モデルマウスへSCRG1遺伝子改変MSCを投与し、炎症抑制効果と歯周組織再生能を検証する。研究初年度となる本年度は、マウスMφ様細胞Raw264.7をSCRG1で処理し、活性化されるシグナル伝達経路についてMAPキナーゼ(ERK、JNK、p38)やJAK/STAT、NFκB、c-fos/NFAT経路を中心に抗リン酸化抗体を用いたウェスタンブロットで解析した。リン酸化陽性の経路についてはpathway特異的な阻害剤を用いてCCL22発現抑制ならびにCCR7発現促進を指標にそれぞれの経路を同定した。その結果、rSCRG1はERKの活性化依存的にCCL22の発現を抑制し、その効果はERK阻害剤U0126で解除されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の初年度に予定していたSCRG1機能ドメイン(SCRG1-FD)の探索において明確な結果を得ることができなかった。コロナ禍の影響によって、年度当初にコロナウィルス感染症の対策に追われたこと、加えて試薬やキット等の納品に大幅な遅れが生じたことが原因であった。SCRG1が誘導するシグナル伝達経路の解析は研究計画に従って実施した結果、概ね期待される結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、炎症の場に集積したMSCから分泌されたSCRG1が、オートクリンにMSCのstemness維持と遊走促進に寄与するのみならず、Mφにパラクリンに作用して炎症ならびにそれに引き続く組織再生に寄与することを明らかにする。加えて、MSCをセル・デバイスとする移植実験で、SCRG1による炎症抑制効果と歯周組織再生の両立を実現できるかを検証する。初年度にMφにおいてSCRG1が誘導するシグナル伝達経路を同定することができたので、次年度以降、同定されたシグナル経路を活性化するためのSCRG1機能ドメイン(SCRG1-FD)を探索する。具体的には、SCRG1の親水性ドメイン(His39-Gly64、Pro80-Gln98)を中心に人工遺伝子を合成し、発現ベクターにサブクローニングする。HEK293細胞にトランスフェクション後の培養上清でRaw264.7を処理し、ERKの活性化を指標に機能ドメインを決定する。SCRG1機能ドメインのみを発現するベクターpSCRG1-FDを作製し、酵母または大腸菌で大量発現させた組換えSCRG1-FDペプチドを作製して歯周炎モデルマウスへ投与する。このin vivo実験においてSCRG1-FD投与による炎症抑制効果と組織再生への寄与を検証する。加えて、歯周炎モデルマウスへSCRG1遺伝子改変MSC(SCRG1を高発現またはノックアウトさせたMSC)を投与し、炎症抑制と歯周組織再生の両立を実現できるかを検証する。これらの結果を総合的に評価することで、SCRG1の有効性ならびに臨床応用の可能性を評価する。
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