2021 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞由来ペプチドを利用した炎症抑制と組織再生の両立を実現する治療法の確立
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20K10014
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
帖佐 直幸 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (80326694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下山 佑 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (90453331)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 炎症 / 炎症抑制 / 組織再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症抑制効果を有する間葉系幹細胞(MSC)と炎症担当細胞であるマクロファージ(Mφ)の相互作用は、炎症の収束において特に重要である。本年度は、MSCが分泌するSCRG1がパラクリンにMφに及ぼす影響に着目した。マウスMφ様細胞Raw 264.7をSCRG1で処理し、サイトカインならびにサイトカイン受容体の遺伝子発現をプライマーアレイにて解析した。同様に、Raw264.7とマウス骨髄由来MSCを共培養後、Raw264.7の遺伝子発現をプライマーアレイにて解析した。その結果、Raw264.7をSCRG1で処理すると、14遺伝子で10倍以上の発現増加が認められた。また、MSCと共培養されたRaw264.7の遺伝子発現を解析した結果、4遺伝子において100倍以上の発現増加が認められた。SCRG1処理で遺伝子発現の増加を認め、かつ、MSCとの共培養で特異的に増加する遺伝子としてケモカイン受容体CCR7が同定された。SCRG1によるCCR7のmRNA発現をqRT-PCRにて定量的に解析した結果、12倍以上の有意な発現増加を認めた。さらにフローサイトメトリーにてRaw264.7に表出するCCR7の発現増強が確認された。これらの結果から、SCRG1はRaw264.7に作用することでCCR7の発現を増強することが示された。CCR7を発現したMφはCCL19やCCL21に対して走化性を獲得する。そこで、SCRG1によってCCR7発現が増強されたRaw264.7の走化性を、migration assayにて検証した。SCRG1で前処理したRaw264.7は、CCL19を添加した場合のみで走化性の有意な促進が認められたが、CCL21に対する走化性は促進されなかった。以上の結果から、SCRG1によってCCR7の発現が増強されたMφは、CCL19に対する走化性を特異的に獲得することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画に従って概ね期待される結果を得ることができたが、コロナ禍の影響によって試薬やキット、プラスチック製品等の納品に大幅な遅れが生じたたため、一部の実験において遅れが生じている。特に標的分子の機能ドメインの探索において、明確な結果を得ることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、炎症の場に集積したMSCから分泌されたSCRG1が、オートクリンにMSCのstemness維持と遊走促進に寄与するのみならず、Mφにパラクリンに作用して炎症ならびにそれに引き続く組織再生に寄与することを明らかにする。加えて、MSCをセル・デバイスとする移植実験で、SCRG1による炎症抑制効果と歯周組織再生の両立を実現できるかを検証する。初年度にMφにおいてSCRG1が誘導するシグナル伝達経路を同定することができたので、次年度以降、同定されたシグナル経路を活性化するためのSCRG1機能ドメイン(SCRG1-FD)を探索する。具体的には、SCRG1の親水性ドメイン(His39-Gly64、Pro80-Gln98)を中心に人工遺伝子を合成し、発現ベクターにサブクローニングする。HEK293細胞にトランスフェクション後の培養上清でRaw264.7を処理し、ERKの活性化を指標に機能ドメインを決定する。SCRG1機能ドメインのみを発現するベクターpSCRG1-FDを作製し、酵母または大腸菌で大量発現させた組換えSCRG1-FDペプチドを作製して歯周炎モデルマウスへ投与する。このin vivo実験においてSCRG1-FD投与による炎症抑制効果と組織再生への寄与を検証する。加えて、歯周炎モデルマウスへSCRG1遺伝子改変MSC(SCRG1を高発現またはノックアウトさせたMSC)を投与し、炎症抑制と歯周組織再生の両立を実現できるかを検証する。これらの結果を総合的に評価することで、SCRG1の有効性ならびに臨床応用の可能性を評価する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による発注取り消し、納品遅れ、ならびに計画実験がやや遅れていることに起因する。今後、実験計画に沿った早目の発注を実施する。また、英文校正等の論文作成に関わる謝金が年末から年度末へと重なったため差額が生じた。これらの差額は次年度に使用予定である。
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Research Products
(2 results)