2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K10020
|
Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
辻村 麻衣子 (羽下麻衣子) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (60535219)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中原 賢 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (20610257)
今井 あかね 日本歯科大学新潟短期大学, その他部局等, 教授 (60180080)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 歯科インプラント / 抜歯 / 味覚 / 有郭乳頭 / 味蕾 |
Outline of Annual Research Achievements |
抜歯やインプラント埋入による味覚変化についての情報は、インプラント治療の予後を考えるうえで重要である。本研究では、まず抜歯後の味覚変化を明らかにするための実験に取り組んでいる。昨年度は、上顎臼歯を抜去したラット(抜歯群)と抜歯せずに全身麻酔薬とその拮抗薬の投与のみを行ったコントロールのラット(非抜歯群)を一定期間飼育した後、有郭乳頭を含む舌の一部を採取し、iTRAQ試薬を用いたタンパク質発現・相対定量解析を行った。その結果、抜歯群と非抜歯群で大きな差があるタンパク質がみられたが、味細胞のマーカーに関しては検出されないものが多く、検出されたものでも差は小さかった。この結果には解析した試料の大部分が味蕾以外の組織であったことが影響している可能性があると考え、本年度は、味蕾におけるタンパク質の局在を観察する実験を進めることとした。 まず、未処置のwistar系雄性ラットを灌流固定して、茸状乳頭を含むパラフィン切片と有郭乳頭を含む凍結切片を作製した。これらの切片を用いて、昨年度のiTRAQ試薬を用いた解析で検出されたvesicle-associated membrane protein 2(VAMP2)と検出されなかった数種類の味細胞のマーカーの発現を免疫組織化学により観察し、それぞれの陽性細胞を確認した。これをもとに染色条件を決定し、抜歯したラットとコントロールのラットを用いた実験を行った。両ラットから摘出した舌を浸漬固定し、有郭乳頭を含む組織を凍結切片にした。この切片にVAMP2の免疫染色を施したところ、抜歯したラットもコントロールのラットも同じように染まっているようにみられた。しかし、試料があまり良い状態でなく、詳しい分析ができなかったため、改めて抜歯群と非抜歯群を灌流固定し、有郭乳頭を含む組織のパラフィン切片を作製する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響で研究の開始が遅れたため、研究計画を再考し研究を遂行したが、組織学的解析などが行えず、若干研究が遅れてしまった。本年度は昨年度の実験で得られた結果を考慮して、別の角度から抜歯後の味覚変化を検索することとし、ラットの有郭乳頭を用いた免疫染色を始めている。本実験に最適な抗体を検索するため、未処置のラットの有郭乳頭を用いて、これまで使用経験のなかった抗体を用いた免疫染色も行っている。その際、染色の最適な条件を設定するために、条件を変えながら、丁寧に実験を進めているため、昨年度の遅れを取り戻すには至らなかった。しかし、本実験は研究の本来の目的を達成するうえで非常に重要であると考えており、次年度以降、さらに詳細な検索を進めたいと考えている。 上記のように、昨年度生じた遅れを本年度で取り戻すことはできなかったため、若干遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も本年度から継続して、抜歯による舌の変化に関わる組織学的な検索を進める。まず、未処置のラットから採取した試料を免疫組織化学的手法により解析し、味覚の受容器である味蕾の性質を明らかにする。今年度用いた味細胞マーカーの二重染色を行うとともに、新たな抗体を用いた免疫染色も加えて、味細胞をより詳細に観察する予定である。これにより、抜歯後の味覚の変化に深い考察を加えることができるようになると考えている。 次に、抜歯群と非抜歯群の試料を作製し、免疫組織化学により抜歯群と非抜歯群でのタンパク質の発現を比較する。具体的には、抜歯群と非抜歯群において、味細胞マーカーやその他の抗体を用いた免疫染色を行い、陽性細胞の局在の変化を観察し、陽性細胞数を比較する予定である。その際、未処置のラットでの結果に基づき、抜歯後の味蕾の変化の観察に適した抗体を選択する。 これまで同様、研究計画は随時見直し、修正を加える。味細胞のマーカーを用いた免疫染色の結果次第で、生化学的解析を計画するつもりである。また、昨年度行ったiTRAQ試薬を用いた網羅的なタンパク質の同定と比較定量において、抜歯群と非抜歯群で差が認められたタンパク質に関する組織学的・生化学的解析も加える可能性がある。 実験は研究代表者と研究分担者が行い、研究代表者の所属講座の教員や大学院生にも協力してもらう予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度は研究代表者が日常的に行っている免疫染色の手法を用いたため、既に所有している材料を多く用いることができ、その分の費用が浮いた。また、動物モデルの作製数が多くなかったため、動物実験にかかる費用も少なかった。このような理由から、次年度使用額が生じた。 次年度も本年度と同様に、舌の有郭乳頭の切片を作製し、組織学的に観察する。また、生化学的解析も行いたいと考えている。これらの解析を進めていき、最終的には論文を作成し、投稿する予定であるため、繰越分を含めた交付金は、主にラットの購入や切片作製のための物品の購入、解析で用いる抗体の購入、さらに論文作成・投稿に関わる費用にあてる予定である。
|