2020 Fiscal Year Research-status Report
歯の喪失が認知機能低下を引き起こすメカニズムの解明
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20K10035
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大上 博史 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (70711307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹田 洋輔 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (80812560) [Withdrawn]
横井 美有希 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (90826869)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歯の喪失 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯の喪失を実験的に生じさせたC57BL6マウスを抜歯群として用いて脳血管機能および認知機能に及ぼす影響を明らかにするために実験を行った。実験期間が4週間および16週間では抜歯群と非抜歯群の間に有意差は認められず,認知機能においても差が見られなかった。そのため,実験期間を延長して解析を行った結果,モリスの水迷路を用いた空間学習機能の評価において抜歯群では対照群である非抜歯群に比較して有意な低下を認めた。抜歯群と非抜歯群の体重に差は認められず,臼歯部の有無だけでは体重変化に影響を及ぼさないことが示唆された。さらに,マウス脳組織を回収後血液脳関門におけるタイトジャンクションマーカーをウェスタンブロット法で解析したところ,抜歯群は非抜歯群に比較して有意に発現が低下していた。これは,抜歯群では血液脳関門を構成する血管内皮細胞のバリア機能が低下していることを示唆している。しかしながら予想されていた抜歯群におけるBDNFの発現低下は現在も解析中であるが明らかに有意差があるとは言い難い結果となっている。一方で,マウス脳組織の免疫組織学染色において活性化アストロサイトのマーカーが抜歯群で多く発現している傾向を認めた。これは,歯の喪失によって脳内に炎症が惹起された可能性を示唆している。ここまでの研究実績は本研究の目的である歯の喪失が脳血管機能障害にどうのようなメカニズムで変化をもたらすかについては解明できていないものの,その関係が強く疑われる結果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究計画で予定したマウスを用いた実験において,比較的短期の観察期間では実験群と対照群において差は見られなかった。そのため,観察期間を延長し解析を行ったことで研究の進捗がやや遅延してしまったと考えられる。しかしながら,歯の喪失による影響は臨床においてもある程度期間を経てから顕在化するように,観察期間を長期に設定することはむしろ妥当である可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画ではBDNFが脳血管機能に及ぼす影響をin vitroで明らかにする予定であったが,ここまで得られた結果では炎症の関与が強く疑われる。BDNFと炎症の関連はこれまでのところ明らかになっていないものの,BDNFに限らずストレスマーカーやアポトーシス関連など炎症との関連が報告されている因子をターゲットとして解析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
動物実験の結果から,炎症性サイトカインの関与も強く疑われる結果が得られたため,当初の研究計画で実施予定であったBDNFが血管内皮細胞に与える影響を解析するだけでなく,その他の因子(炎症性サイトカイン)についても解析する必要が生じた。そのため,次年度に当該年度以降の助成金と合わせることで動物実験で得られた結果を解析し,当初の研究計画どおりin vitroの解析を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)