2022 Fiscal Year Research-status Report
Development a new sequential masticatory test by using the sound of mastication to support the individual food intake and nutrition
Project/Area Number |
20K10079
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
河相 安彦 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50221198)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 央 日本大学, 芸術学部, 教授 (20307888)
堀畑 聡 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (20238801)
伊藤 誠康 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (80307876)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 咀嚼音 / 食品の硬度 / 被験食品 / 市販食品 / 咀嚼音の再現性 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会の日本において,一人一人の食品摂取状況を適切に評価し,個々における食摂取の向上と維持を目的とした補綴歯科治療の介入と食支援の計画を行うことは,口腔の形態と機能の低下した患者の生活の質を高める観点から重要な課題である。 食摂取に関わる指標として重要なのが,咀嚼能率の評価であり,その代表的な検査にピーナッツなどを用いた篩分法,変色ガムを用いた方法,グミゼリーを用いた検査法などがある。 しかし,それらの被験食品は日常で摂取される頻度は多くないこと,また,被験食品は口腔外に取り出して評価を行うため,実際の食事の時のように咀嚼から嚥下までを連続した過程として評価しているとは言い難い。したがって,咀嚼から嚥下までの一連の過程を経時的かつ連続的に記録できる新たな咀嚼を含む食摂取の能力や能率に関する検査法の開発が望まれる。 そこで本研究は咀嚼から嚥下までの過程で発生する「音」に着目して検討を行ってきた。食事の時に発する咀嚼音や嚥下音については古くから着目されていたが,主に咬合時の上下の歯による接触音に関する検討が多く,一連の摂食から嚥下までの食事サイクルにおける評価に着目した研究は少ない。 そこで我々は2021年度に実際の食事で摂取されている食品を被験食品として用いることとし,より実体に近い咀嚼評価を行うことを目的に検討した。2022年度は2021年度に行った市販食品の硬さに関する再現性を踏まえて,比較的安定した硬さを示したアーモンドを用いて咀嚼音の収集と,至適な音声データの収集に関する検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に実際の食事で摂取されている食品を被験食品として用いることとし,より実体に近い咀嚼評価を行うことを目的に検討した。2022年度は2021年度に行った市販食品の硬さに関する再現性を踏まえて,比較的安定した硬さを示したアーモンドを用いて咀嚼音の収集と,至適な音声データの収集に関する検討を行った。被験者は20 歳代の男性3 名,女性3 名(26.8±1.3歳)とし,測定者は30 歳代の女性1 名とした。アーモンドは室温22℃,湿度50%で1 時間静置したものを用い,咀嚼音の測定は高機能騒音計(LA-7000,小野測器,神奈川)を用いた。研究参加者が座位にてアーモンドを1 回/s のペースで咀嚼し,発生した咀嚼音を,喉頭隆起から右側50mm で床に対して水平な位置に設置したマイクで咀嚼音の集音を行った。集音は1 回行うごとに1 分の休憩を挟み,3 回行った。集音された音声の解析は時系列データ解析ツール(Oscoape2,小野測器,神奈川)を用い,咀嚼開始から10 秒の咀嚼音をサンプリング周波数64000Hz にて波形表示して切り出し,音のエネルギー量近似値であるdB 二乗和を算出した。再現性の検証は,同一被験者内で得られた3 回のdB 二乗和を用いて検者内級内相関係数 (ICC(1,3))で評価した(1日目)。同じ被験者で同一の測定を別日(2 日目)に行い,同一検者における日間変動を比較した。 その結果,1 日目のdB 二乗和における級内相関係数はICC(1,3)=0.98 であり,Landis の判定基準からAlmost Perfect であり,アーモンドによる咀嚼音は同一検者内における再現性を有することが示唆された。以上から概ね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の展開として被験者の口腔の形態と機能の相違によって,咀嚼音の違いや,再現性について検討していく。またアーモンド以外の被験食品における検討を継続する予定である。再現性の検討において,測定の回数が多くなるにつれて咀嚼時間が短くなることが確認された。すなわち被験者が測定に慣れ,嚥下までの時間が短くなることが考察されたが,検査の値としてどの部分を抽出するのが妥当なのかを検討する必要がある。また,咀嚼音は咀嚼に関わる運動を代替えしたエネルギーとの考え方もできるが,この点,筋の疲労度や,そのほかの外的基準と,発せられた音との関連を検討していく予定である。 最終的には咀嚼音に加え嚥下音の集音も視野に入れて,口腔内で行われている未知の巧緻性や嚥下までのプロセスを連続的に解析する方向で研究を推進したい。その解析の一つとして,引き続き波形を時間-周波数解析(Wavelet解析)を行い,咀嚼音・嚥下音で認められる波形が経時的に定量化が可能かを検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度までに食品の硬度測定を行い,ヒトを用いた咀嚼音の音声分析は再現性の検討に止まったことで,解析担当者が購入予定の高度な音声解析に用いるPC等のハードウエアについては繰越となり,最終年度に購入を予定している。また,集音に用いるコンデンサマイクやその消耗品などの充実を次年度にかけて行う予定である。
|
Research Products
(3 results)