2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of the influences of stress and autonomic nervous activity to oral cancer
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20K10086
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 淳 北海道大学, 歯学研究院, 講師 (60319069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 善政 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (00224957)
大賀 則孝 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (40548202)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自律神経活動 / 口腔癌 / ストレス / 唾液 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌は審美性や摂食・嚥下・会話などの重要な機能低下に繋がる疾患である。進行癌も多く治療成績もいまだ充分ではない。口腔癌の早期発見や適切な治療には、癌化や癌の増殖に関連する新たな因子の同定が必要である。本研究では令和2年度~令和4年度の3年間の研究期間で、全身の免疫を司る自律神経が、免疫チェックポイント分子に代表される腫瘍免疫などと、全身と局所でどのようなネットワ-クを形成して口腔癌の発癌、増殖、転移などに関連するかを明らかにする。 方法の概要として、癌化に繋がる口腔潜在的悪性病変(OPMD)や口腔癌患者さんの全身の自律神経(交感神経および副交感神経)活動とストレスの評価を「心拍のゆらぎ」と「唾液検査」で非侵襲的に行う。対象として、口腔癌、OPMD、良性疾患、正常群としている。本研究はヒトを対象とする臨床研究であるために、研究に参加してくださる患者さん、コントロ-ル群の方への丁寧なインフォ-ムド・コンセントが必要である。現在、当院の自主臨床研究の審査の書類のやりとりを行っている。併行して、自律神経活動の予備的な測定を行っている。口腔内に痛みを訴えている患者さん:10例、および健常コントロール群:15例を対象に自律神経活動を測定した。男性15例、女性10例で、年齢は30歳~70歳(中央値:45歳)であった。心拍数は、54~105/分(中央値:75.7/分)、副交感神経活動を表す高周波数帯域(High Frequency; HF, 0.15-0.5 Hz)は4.3~566.9 (中央値:107.2)、低周波数帯域(Low Frequency: LF, 0.04-0.15Hz)は10.44~3556.06 (平均値:541.4±738.5,中央値: 215.5)、交感神経活動の指標であるL/Hは0.4~11.4 (中央値:3.3)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の主要な柱は、患者さんおよびコントロ-ル群の方に協力してもらうヒトを対象とした臨床研究である。研究に用いる試料として、自律神経活動の測定および唾液の採取が重要な要素を占める。口腔癌:15名/年、OPMD:20名/年、良性疾患:20名/年、正常群:20名/年を目標としている。実際に当科における令和2年度の該当症例患者さんの受診数は令和2年度は口腔癌:10名、OPMD:約30名、良性疾患:約100名/年であったが、コロナ禍の影響もあり臨床現場で臨床研究へ参加していただくリクル-トの対応が困難であった。一方で、自律神経(交感神経および副交感神経)活動は「心拍のゆらぎ」測定から算出するが、従来は心電図検査が必要であった。しかし脱衣せずに手首のクリップで測定できる機器を当院の歯科で開発して、その機器を用いて測定を行っていた。令和2年度にはさらに小型の自律神経活動測定装置(TAS9VIEW)を購入することができ、現在両機器の測定誤差を比較・検討している。両機器の測定デ-タの誤差が少なければ、今までのコントロ-ル群などのデ-タを引き続き応用することが可能になると思われる。また、自律神経活動の日内変動も問題である。同じヒトでの自律神経活動の日内変動も予備測定として行っている。健常コントロ-ル群5名の初期デ-タでは、午前中の方が午後よりも副交感神経活動を表す高周波数帯域(High Frequency; HF, 0.15-0.5 Hz)が高くなる傾向があった。 まずは今年度の早い時期に自主臨床研究審査の承認を得ることが重要課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主要な内容は患者さんおよびコントロ-ル群の方に協力していただき、ヒトを対象とした臨床研究を推進することである。研究に用いる試料として、自律神経活動の測定および唾液の採取が重要な部分を占める。当院歯科で開発した手首にクリップをつけて心拍のゆらぎを測定する従来の自律神経活動測定装置と、令和2年度に導入した指先にクリップをつけるのみで測定可能なさらに小型である測定装置の双方が利用可能となった。2つの機器を用いて健常コントロ-ル群に対する予備測定の結果は蓄積できているが、実際の患者さんに対する測定は自主臨床審査の承認を得てから行う予定である。まずは自主臨床審査での承認を得て、併行して自分や共同研究者などの健常者の唾液測定も開始する。コロナ禍において、実際の臨床現場は厳しい環境であることは変わりがないが、少しでも研究に参加していただけるように、図表、説明用紙などを見やすくして、患者さんに説明していく。また外来受診患者さんのうちの、口腔癌、口腔潜在的悪性病変(OPMD)、良性粘膜疾患患者さんの受診状況を把握して、候補者としてリストアップしていく。 令和2年度はコロナ禍の影響で、ほとんど行えなかった学外の研究者との研究に関する情報交換なども再開していく予定である、現地での情報交換が不可であればリモ-トでの方法などを考えている。
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Causes of Carryover |
令和2年度はまさに「コロナ禍」の影響を受けた1年であった。本来であれば国内学会および国際学会に参加して研究課題について打ち合わせ、相談、発表する機会を予定していたが、対面での学会開催がなくなりそれもかなわなかった。その分の旅費、移動費用などは計上できなくなった。またそれに伴い当初の研究計画に遅れを生じて、研究成果の学会発表、論文投稿も延期となってしまった。令和3年度以降はこの遅れを取り戻すために、コロナ禍の状況を見極めながら研究を継続していく予定である。令和3年度はコロナ禍で令和2年度にはできなかった、現地での学会参加および現地での研究打ち合わせや研究情報収集も積極的に行って行きたい。
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[Book] Oral Science in Japan2021
Author(s)
Kimura Taku, Sato Jun, Kitagawa Yoshimasa
Total Pages
54
Publisher
Japanese Stomatological Society
ISBN
978-4-9908237-3-3