2021 Fiscal Year Research-status Report
振動解析を用いた関節頭の機能的な位置付けへの挑戦-顎変形症、骨折、再建において-
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20K10087
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松下 和裕 北海道大学, 大学病院, 准教授 (10399933)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 顎変形症 / 顎関節 / 振動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
下顎枝分割術を施行後、予定の位置で良好に上下の歯牙が嵌合し、顎関節の症状が無く、機能的に安定した咬合関係を長期維持するためには、骨片固定を行う際、関節窩に対する下顎頭の位置づけがとても重要である。ただ、日常の臨床において、これは専ら術者の経験に頼っているのが実情である。よって、この手技の精度向上には客観的で容易に、かつ正確に下顎頭を関節窩内の良好な位置に誘導する基準や手法が望まれる。後世を育成する観点でも必要である。 MRIで関節円板の位置関係は評価でき、結果、高頻度に前方転位していることが確認できるが、それはあくまでも静的な状況であり、前方に偏位した結果、関節が可動する際に関節窩内での力の伝達様態に対しての情報は不明である。そこで、探傷技術にヒントを得て、分割した下顎枝に振動を与え、関節窩内での構造を探る。 今回の研究を遂行するのに際し、加振方法、受振方法、分析方法の3つの観点から評価・検討しなくてはならない。加振は、口腔内での施行を念頭に置き、口腔内で日常につかえる器械を検討した。そこで、歯科用の切削器具の応用を考え、歯科機材のメーカーに適応の可否を相談した。歯科用エンジン、タービン、超音波スケーラー他、振動を発生できる器械を検討した。組織での振動の減衰が比較的抑えられる、低周波の方が望ましいとの過去報告より1000~5000Hz前後の周波数を算出できる装置を考案した。 振動の受振に関しては、頭蓋振動測定の技術を参考にし、類似の計測器械を制作した。予備実験として、口腔内に超音波スケーラーを入れて歯を振動させ、頭部に装着したヘッドセットでその計測の可否を確認した。結果、どの歯に振動を加えても、ヘッドセットで受振できることができ、今回考案した加振・受振のシステムを用いての実験の可能性が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
加振方法として、新たに振動置を制作するのではなく、口腔内で使用することを大前提とし、実際の臨床の場で使われている装置の利用・応用を考えた。予備実験の後、歯科用超音波スケーラーを用いることとし、オサダシリウスを選定した。昨年は、過去の報告より、1,000~3,000Hz程度の周波数が望ましいと考え、60,000rpm~180,000rpm程度の振動を作成するため、圧縮空気の圧力を抑えることでの180,000rpm (3,000Hz)振動を出せることが判明し、歯科用のスケーラーを基本に加振器の加動装置の開発を行った。ただ、圧縮空気の圧力を変えるためのコンプレッサーの工夫が必要であり、その開発を引き続き行っており時間を有している。一方で、手術室での利用となる、手術室壁面の医療ガス供給装置のアウトレットの利用することも検討したところ、容易に圧の変更は可能であった。今後どちらを選択するか、更なる検討が必要な状態である。 同時に、実際に下顎骨切りを行った場合での使用を踏まえ、分割した近位骨片への加振方法、そのチップ先端の考案も行った。プレートで固定する際に、スクリュー孔を形成するため、そのスクリュー孔をそのまま利用する方法や、鋭利なチップ先端そのまま骨に刺す方法を検討した。孔に利用する場合、孔との適合性や深さにも左右させることが判明し、安定したデータを得ることは困難であった。一方で、チップの先端を骨に刺す場合、先端が破折してこまるため、先端形状の工夫やチップの強度への配慮が必要であることも判明した。また、近位骨片と遠位骨片の位置関係も重要であり、両者を密着させると振動が遠位骨片に伝わり、減衰するため望ましくないこともわかってきた。下顎頭だけにいかに効率良く、しかも再現性のある安定したデータを得るように加振するか、検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
下顎に加振することにより、頭部に伝わった振動を経皮的に受振できることは確認できた。ただ、その周波数はさまざまな波の合成波として描出されるため、高速フーリエ変換して、波形の分析も検討している。ただ、受振の周波数は加速度ピックアップにつながったビュアーで確認できるが、実際の加振した際の詳細な波形や振動数は不明であるため、その確認と、その減衰の関係も調査する。ついで、下顎に振動を加える手法として歯を加振したが、骨へ実際に加振する方法も引き続き検討する。 受振に際し、ヘッドセットに組み込んだ加速度ピックアップでの計測スタイルは変えないが、安定したデータを収集するためのヘッドセットの形状や皮膚への設置方法、手術を想定した髪をまとめるための帽子をかぶせたり滅菌覆布をかけたときの検出感度などについても検討する。
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Causes of Carryover |
予備実験のデータが安定せず、コンプレッサーの発注に時間がかかっているため、予算の施行に時間がかかっている。 また、コロナ禍で情報収集のための出張や学会参加ができず、残余金が生じている。 しかし、次年度はコンプレッサーの購入が可能となる予定であり、研究の目処もたっているため助成金は使用できると考えている。
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