2021 Fiscal Year Research-status Report
免疫チェックポイント阻害剤に耐性を示す口腔癌に対する腫瘍溶解ウイルス療法の新戦略
Project/Area Number |
20K10090
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
齋藤 謙悟 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (70451755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白澤 浩 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00216194) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント阻害剤 / 治療耐性 / 腫瘍溶解ウイルス / 腫瘍免疫療法 / 口腔癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害剤による治療耐性メカニズムの大きな要因は、①癌細胞において腫瘍抗原の免疫原性が低下し免疫応答が不活化する事や、②宿主側において腫瘍微小環境が免疫抑制状態になることである。一方、腫瘍溶解ウイルスは、腫瘍溶解により腫瘍抗原を放出し免疫応答を活性化すると同時に、炎症性サイトカインを惹起し免疫細胞を誘導するため、腫瘍免疫療法に対する耐性を解除する事に応用できると考えられる。 よって、今研究は、担癌マウス(SCC7/CH3マウス)において免疫チェックポイント阻害剤(抗CTLA-4、PD-1、PD-L1)に対し耐性を示すが、シンドビスウイルス(SIN)との併用療法にて耐性解除を行い治療効果が向上する腫瘍免疫療法の開発を目指す。 今年度は、腫瘍免疫の獲得を評価する脾臓細胞の免疫学的解析を行うために、昨年度構築に成功した免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体に治療抵抗性を示し、免疫を有する担癌マウスのモデルの条件を改良した。昨年は、抗PD-1の投与量を臨床基準の3 mg/kg、治療回数は3日間間隔で4回の条件で投与したが、週2回で3週間の計6回とした。昨年と同様に、副作用は無く、抗PD-1抗体療法に治療抵抗性を示すモデルであることを確認した。 次に、再度SINとの併用効果を検討するために、抗PD-1抗体のみ、SINのみ、抗PD-1抗体とSINの併用、未治療の4群間で腫瘍の大きさ、体重の変化を検討した。結果は、抗PD-1抗体とSINの併用群では腫瘍増大が有意に抑制された。腫瘍が寛解する症例も認めた。抗PD-1抗体のみとSINのみの群も、それぞれ未治療群と比較して腫瘍の増殖は抑制されていた。各治療群の脾臓細胞を採取し、各免疫細胞(CD4、CD8、MDSC細胞)の比率を比較したところ、CD4細胞が併用療法群で有意ではないが増加することを認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、免疫細胞の解析を行うために、昨年作成した免疫チェックポイント阻害剤に治療抵抗性を示し、かつ免疫を有する担癌マウスのモデルの条件のうち、抗PD-1抗体の投与量は3 mg/kgで固定し治療回数を週2回で3週間行い総回数を6回で行う条件にした。治療抵抗性と副作用の出現は変化ないことを確認した。 次に、再度腫瘍溶解ウイルスであるシンドビスウイルス(SIN)との併用効果を検討するために、抗PD-1抗体のみ、SINのみ、抗PD-1抗体とSINの併用、未治療の4群間で腫瘍の大きさ、体重の変化を検討した。結果は、抗PD-1抗体とSINの併用群では腫瘍増大が有意に抑制された。腫瘍が寛解するが症例も26%で認められた。抗PD-1抗体のみとSINのみの群も、それぞれ未治療群と比較して腫瘍の増殖は抑制されていた。しかし、抗PD-1抗体のみでは、腫瘍増大抑制効果が高い症例と、逆に増大する症例もあり、ばらつきが大きかった。各治療群の脾臓細胞を採取し、各免疫細胞(CD4、CD8、MDSC細胞)の比率の変化を比較したが有意な差を確認できなかった。しかし、CD4に関しては、抗PD-1抗体とSINの併用療法とSINのみの併用療法で比率が上昇していた。 以上のように、免疫チェックポイントに対して未治療群より効果はあるが治療耐性を示す担癌モデルに置いて、腫瘍溶解ウイルスであるSINを併用する事により、腫瘍増大抑制効果が上昇、あるいは、寛解する事を確認できた。しかし、免疫細胞の解析による腫瘍免疫獲得の有無やメカニズムの解明が十分進行しなかった。しかし、臨床応用されている抗PD-1抗体でモデルの確立とシンドビスウイルスとの併用療法で腫瘍の寛解する症例も確認でき、さらには、腫瘍免疫獲得の有無や、治療効果のメカニズムを免疫細胞の解析で開始することが出来たことから、概ね計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、免疫チェックポイント阻害剤による腫瘍免疫療法に耐性を示す口腔癌に対して、我々が開発してきた腫瘍溶解性ウイルス(シンドビスウイルス)を応用し、腫瘍抗原に対する免疫応答と免疫細胞の誘導を活性化させる事でその耐性を解除し、治療効果の向上と腫瘍免疫の獲得を目指す。 引き続き、別の免疫チェックポイント阻害剤とシンドビスウイルスの併用方法を検討する。 ①担癌動物での投与方法と安全性を確認:担癌マウス(SCC7/CH3マウス)を作成し、免疫チェックポイント阻害剤(抗CTLA-4、PD-L1)とシンドビスウイルスを投与(腫瘍内、静脈)し、安全性を評価する。次に、シンドビスウイルスの投与時期、投与量等を検討し、まずは腫瘍の大きさで治療効果を判定する。同時に、癌部と正常臓器からウイルスを回収し、ウイルスの集積性を検討する。②担癌動物での腫瘍免疫誘導性:担癌マウス(SCC7-OVA/CH3マウス)を作成し、免疫チェックポイント阻害剤とシンドビスウイルスを投与し、リンパ節、脾臓、腫瘍から免疫担当細胞を回収し、フローサイトメトリーにてCD4陽性細胞(Th1, 2, 9, 17, Treg)、CD8陽性細胞、樹状細胞、NK細胞、MDSCの分布をコントロール群と比較検討する。 ③担癌動物での腫瘍免疫の評価とその免疫細胞の抗腫瘍効果の解析:免疫チェックポイント阻害剤とシンドビスウイルスを投与した担癌マウスの脾臓、腫瘍内から、各CD4陽性細胞(Th1, 2, 9)、CD8陽性細胞を精製し、抗原に対する活性化や、同系の担癌マウスに移植した際の抗腫瘍効果を検討する。さらに、シンドビスウイルスを投与する前に、各免疫担当細胞特異抗体を投与し、免疫担当細胞の機能を抑制し、抗腫瘍効果の免疫学的メカニズムを比較解析する。
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Research Products
(2 results)