2020 Fiscal Year Research-status Report
CD44高発現口腔扁平上皮癌細胞におけるメカノトランスダクション機構の解明
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20K10138
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
重石 英生 広島大学, 医系科学研究科(歯), 講師 (90397943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 重弘 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (70379882)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / CD44 / amoeboid-like CD44high細胞 / AMT |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 口腔扁平上皮癌細胞株であるOM-1細胞を用いて、CD44high細胞のcell sortingを行った。ラミニン332でコーティングした2.0kPaの弾性率のシリコンゲル上で、CD44highOM-1細胞の培養を行った結果、amoeboid様形態を示す細胞(amoeboid-like CD44high細胞)が確認された。 amoeboid-like CD44high細胞は、Cofilin-1タンパク質の高発現を示し、amoeboid-like CD44high細胞の浸潤能は、Cofilin-1ノックダウン後に低下したことから、Cofilin-1がamoeboid-like CD44high細胞の浸潤能に関与していることが示唆された。 2.TGF-β1により、N-cadherin や Snailの mRNA発現が上昇し、線維芽細胞様形態を示す細胞が確認された。さらに、マイクロアレイによるmiRNA発現解析により、TGF-β1によりmiR-422aの発現が抑制されることが明らかとなった。また、TGF-β1により抑制されたmiR-422aの発現は、ERK inhibitor またはERK1/2 knockdownにより有意に上昇した。さらに、miR-422a inhibitorにより、N-cadherin や Snailの mRNA発現が上昇した。 3.amoeboid-like CD44high細胞は、Cofilin-1ノックダウンおよびERK1/2によるmiR-422a発現の抑制により、amoeboid-to-mesenchymal transition(AMT)が誘導された。以上の結果から、amoeboid-like CD44high細胞において、Cofilin-1のリン酸化とERK1/2の活性化によるmiR-422aの発現抑制が、AMTの促進に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞外基質であるラミニンをコーティングした2.0kPaのシリコンゲル上で、amoeboid-like CD44high細胞の培養が可能であることが明らかとなった。さらに、amoeboid-like CD44high細胞の維持にはCofilin-1が重要な役割を担うことが明らかとなった。さらに、TGF-β1によるAMTの制御機構が明らかとなり、癌幹細胞周囲の微小環境(細胞外基質、足場の弾性率、サイトカインなど)による癌幹細胞形質の制御機構の存在が強く示唆された。これまでの研究結果から、amoeboid-like CD44high細胞が、口腔扁平上皮癌における高度悪性化機構に関与している可能性が示唆され、本研究課題はおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
amoeboid-like CD44high細胞における、メカノトランスダクション機構を明らかとするため、以下の研究を行う予定である。1.amoeboid-like CD44high細胞におけるROCK, LIMK シグナル経路の解析を行う。amoeboid-like CD44high細胞において、LIMKの siRNA knockdownを行い、Cofilin-1 のリン酸化レベルをWestern blottingにて検討し、ROCK, LIMK シグナル経路とCofilin 不活化との関係を明らかとする。2.amoeboid-like CD44high細胞におけるアポトーシス抵抗性について検討する。docetaxelにより誘導されるアポトーシスと膜タンパク質であるPANX1との関係を明らかとする。PANX1の発現を制御するmiRNAを同定し、miRNAとdocetaxelにより誘導されるアポトーシスとの関係を検討する。さらに、mesenchymal-like CD44high細胞における、アポトーシス抵抗性のメカニズムについて検討する。3.抗体マイクロアレイを用いて、CD44highOM-1細胞においてmesenchymal-to-amoeboid transition(MAT)が誘導される前後での、シグナル伝達に関与するタンパク質発現およびそのリン酸化を定量化し、比較検討する。パスウェイ解析を行い、MATに最も重要な役割をもつシグナル伝達経路を明らかにする。さらに、同定されたシグナル伝達経路に関与する遺伝子のノックダウンや過剰発現を行い、amoeboid-like CD44high細胞の癌幹細胞形質の変化を検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)ラミニンなどの細胞外基質をコーテイングした培養デイッシュ作成のための費用が予定金額を下回ったため。 (使用計画)次年度使用額については、引き続いてラミニンなどの細胞外基質をコーテイングした培養デイッシュ作成のために必要な費用に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)