2020 Fiscal Year Research-status Report
高機能細胞治療薬E-MNCを用いた放射線性顎骨壊死の治療法の確立
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20K10143
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大場 誠悟 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (80363456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住田 吉慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (50456654)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射線性顎骨壊死 / 高機能細胞(E-MNC) / マイクロCT / 骨シンチ |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線性顎骨壊死(ORNJ)は、放射線治療後の極めて難治性の有害事象であり、患者のQOLを大きく損なうことになる。早期に正常な骨組織から傷害を受けて腐骨化した骨を分離して排出させることが可能になれば患者のQOLは大きく改善することになる。そこでORNJの治療法の確立のために、まずはORNJモデルの作成を行った。過去の報告及び自家の経験を参考にして、種々の量のガンマ線を照射したところ、12Gy以下では全例生存し、15Gy以上ではほぼ全て、18Gy以上では全て死滅することが明らかとなった。そこで以降のガンマ線の線量は12Gyで行うことと決定した。上顎骨は海面骨が少なく、腐骨分離を評価するには不向きであると考え、下顎にフォーカスした。ただし照射は上顎にも等量当たっており、下顎のモデル作成がうまくいかない場合には上顎をターゲットとすることとした。ガンマ線の照射直後及び1週間後に抜歯あるいは露髄を行い、ORNJ発症を促すようにした。その結果、同時であれ1週間後であれ露髄させた群では該当歯の周囲骨がマイクロCT上で骨梁に変化があるように見られた。しかしながら腐骨の有無に関しては評価困難であった。 これまでの研究で、マウスから採取した細胞を特定の条件で培養することによって得られる細胞群(高機能細胞治療薬:E-MNC)が放射線性顎下腺障害マウスの唾液分泌量を増加させることが可能であることを見出してきた。放射線性顎下腺障害の改善には炎症制御が重要であるため、E-MNCの細胞群はTh2優位になることが好ましいと考えている。一方でORNJの場合には、感染した骨組織を積極的に排除させるために、炎症を制御しないようにTh1優位の細胞群にシフトした方が良いと考えられる。現在培養日数を変化させることで、細胞群の性質にどのような変化があるか検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は放射線性顎骨壊死(ORNJ)モデルの作成を予定した。マウスは過去の報告に倣ってC3Hを予定していたが、これまでの放射線性顎下腺障害モデルの経験があり、かつ使用する細胞培養の条件を確立させているC57/B6マウスを使用することとした。9週齢の同マウスを用いてガンマ線照射を行った(12, 15, 18, 20Gy)ところ、12Gy照射群では前例生存したが、15Gy照射マウスで1/3匹生存し、18, 20Gyでは全例死亡した。以降の研究は12Gyで行うこととした。照射当日に抜歯した当日群と照射1週間後に抜歯した遅延群でORNJの形成を試みたが、抜歯そのものを安定して行うことが困難であり、場合によっては残根状態となっていた。そこで歯冠部のみを切断し、露髄させることでORN京成を誘導することした。抜歯の際と同様に照射当日及び照射後1週間で露髄処置をおこなった。研究途中で死亡したマウスは存在しなかった。マイクロCTで顎骨の評価を行ったところ、処置後約10週以降で露髄した歯の周囲の骨形態が反対側に対してやや塑像な像を示す傾向が認められた。しかしながらマイクロCT の画上所見のみでは腐骨形成は明らかではなく、ORNJとは断定できない状態であった。そこで、今後は骨シンチ検査を行い、顎骨の炎症の状態を検討する予定である。 高機能細胞治療薬(E-MNC)の調整に関しては、これまでの培養条件は同様に培養日数のみを変更することで、M1/M2名黒ファージの占有比率を検討しているところである。これまで行ってきた5-7日の培養日数を中心に、3, 5, 7, 9日間培養を行い、それぞれの細胞群の特徴を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
ORNJ モデルの確立:2020年度の結果、マイクロCTではORNJの確実な診断は困難であったことから、骨シンチ検査を行うことで顎骨内の炎症を評価することとした。MDP(メチレンジホスホン酸テクネシウム)を尾静脈から注入し、アイソトープセンターに設置されている小動物用のPET/SPECT/CT装置で炎症の状態を評価する。ガンマ線は顎骨全体が照射野になっており、炎症所見が顎骨全てに均等に生じていた場合には、照射量を8-10Gyまで減らして再度検討を行う。炎症所見が局所(露髄した歯の周囲の顎骨のみ)に限局していた場合には、組織を作成する。組織で骨細胞のない腐骨組織が認められる時期を検討する。過去の報告では10週齢で優位に骨細胞の存在しない死腔が増加しているととであるので、照射10週以降で4週毎に撮影を行うとともに組織所見を検討していく。適切な時期(確実に限局してORNJが発症している時期)が確認できたら、この時期を細胞投与時期と設定して、以降の細胞注入実験へと移行する。もし適したORNJモデルができない場合には、上顎の抜歯を行い同様にORNJモデルの作成を目指す。上顎は抜歯が下顎に比較すると容易であり、安定して抜歯が可能である。欠点は骨髄が少なく、腐骨が確認できるかが不明な点である。 E-MNCの調整:3, 5, 7, 9日間培養した細胞を、それぞれ解析を行い、同時に尾静脈からORNJモデルマウスに注入する。注入後に組織への細胞移行にかかる時間が不明であるため、まずは8週後に骨シンチを撮影し炎症変化を検討する。所見次第で、細胞投与量や撮影時期などを修正していく。2021年度はこの細胞注入の条件設定までを予定する。 2022年度には決定した条件でORNJモデルの作成及び細胞注入を行い、マイクロCT/骨シンチでの精査及び組織の解析を行う。
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Causes of Carryover |
参加予定の国内学会・国際学会に参加できなかったため。 細胞の条件を設定するのに必要なマウスの購入に充てる予定。
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