2021 Fiscal Year Research-status Report
人工知能を用いた口腔がんの細胞診・予後判定システムの開発
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20K10163
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
見立 英史 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (00552019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 郁夫 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 教授 (10392953)
酒井 智弥 長崎大学, 情報データ科学部, 准教授 (30345003)
下本 陽一 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (80244036)
角 美佐 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (90284702)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔がん / 口腔細胞診 / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔がんは増加傾向であるが、希少がんであるため、死亡率が高い。そのため本研究では、人工知能(AI)を用いた口腔がんの細胞診のClass分類そして予後判定システムを開発することを目的に、以下の4段階での研究を計画して進めている。(1)まず口腔細胞診の画像と診断結果、治療予後の情報を用いてClass毎の画像Datasetを構築する。研究開始からの2年間で計10000枚超の口腔細胞診のプレパラート画像を撮影し、Datasetを構築した。(2)次にこのDatasetを用いて交差検定を行い、口腔細胞診画像からClass分類する識別器を開発する。現在は他の先行研究から公開されている畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、転移学習を試している。現在は2つの方法に取り組んでおり(a)細胞全体を識別する方法、(b)細胞核の形から識別する方法それぞれを進めている。細胞全体を識別する方法では、細胞の写り込んでいない背景の情報を用いていることがわかり、注視機構(ヒトが画像を認識する際に注視しやすい部分を画像で表現した顕著性マップを用いる)を組み込んで、その正診率の向上を試みている。細胞核の形の形から識別する方法でも、病理医が診断に使う細胞の選択についてどこまで自動化できるかを検討中である。(3)AIがどの部分を見て診断したのかを明らかにし、口腔がんの細胞診識別器の作成方法の確立、AIによる口腔細胞診の診断基準を確立することを目指している。その結果を発展させて(4)細胞診の結果からその予後予測をAIに判断させ、その有用性を検証する。現在は(2)(3)を研究分担者らとともに進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) まず、口腔細胞診のデータセット(対物40倍、Tiff形式)について、前年度に引き続き症例の蓄積を行い、Class1から5まで計10000枚超まで拡充した。 (2) 畳み込みによる視覚的特徴を利用したCNNによる識別器では、細胞以外の背景に存在する特徴量をも用いてClass識別していることが明らかとなった。この結果は生体画像と医用人工知能研究会 第4回若手発表会(2022年3月10日)にて「口腔細胞診のための教師なし深層学習による細胞領域検出」で発表した。医学的な説明の観点から、背景の特徴量を抑制することが必須と考えて、その検討を行っているところである。背景の特徴量を抑制するため、細胞診画像を複数枚集めて行列化した際に確認できる行列の低ランクスパース性に着目することとした。核ノルムとL1ノルムを損失関数としてU-Netのようなセグメンテーションモデルに与える事で、ネットワークはスパースな前景成分である細胞領域を教師無しで検出できると考えている。検出された細胞領域を示す画像を注視機構として導入した深層学習モデルを設計し、注視機構の有無による識別性能や生成される特徴量の分布の変化を検証している。Class識別の精度の向上が見込める結果が出てきているため、第41回日本医用画像工学会大会(2022/7/29-31)にて「教師無し深層学習による細胞領域検出を用いた注視機構による口腔細胞診画像分類」の発表を予定している。 (3) AIがどの領域を見て識別しているかについて、Mask R-CNNを用いた細胞核、細胞辺縁の形態を見ていることが明らかとなり、その結果は第40回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会(2022年1月)にて「MASK-R CNNを用いた口腔細胞診におけるClass識別に関する研究」で発表し、論文化したものを現在雑誌投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はU-Netを用い、背景領域の情報を用いてClass識別を回避することで正診率の向上を図る。 また、細胞のどの部分を見てClass分類しているかについて、特徴をより細かく調べることで明らかになる余地があるため精査を進めていく。ただし、画像枚数の増大に伴い、Graphics Processing Unit(GPU)の画像処理能力が律速段階になっているため、さらなる設備拡充(GPUの追加購入、Amazon Web Serviceの利用など)も併せて検討している。 前述の第41回日本医用画像工学会大会で発表する内容をさらに進め、その結果までを取りまとめて日本口腔腫瘍学会総会・学術大会、口腔科学会学術集会での発表および論文作成を行う。
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Causes of Carryover |
参加予定の学会が全てWeb開催に移行し、その分の旅費を次年度に繰越すこととした。また投稿論文については年度をまたいで査読が行われており、その投稿料・掲載料に使用予定である。
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