2020 Fiscal Year Research-status Report
GABAAサブユニット作動薬を用いたバーニングマウス症候群の新規治療法開発
Project/Area Number |
20K10171
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
野間 昇 日本大学, 歯学部, 准教授 (70386100)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バーニングマウス症候群 / 表皮内電気刺激 / temporal summation / CPM / 下降性疼痛抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
バーニングマウス症候群(BMS)は舌や歯肉,口蓋粘膜等に器質的な障害が認められないにもかかわらず慢性的な疼痛や違和感を訴える歯科固有の疾患である。 本研究では、表皮内電気刺激(IES)の新規な方法を用いて、BMS患者と健康被験者において表皮内電気刺激(IES)を用いてtemporal summation (TS)とconditioned pain modulation (CPM)を観察した。方法としてBMS患者26名と健康被検者:女性27名を対象に,右側下口唇にIESを用いてテスト刺激を行った。なお刺激の強さは,患者の自覚する刺激強度がnumerical rating scale (NRS)で20-30/100となるように調節した。一方,条件刺激としては,左側手掌にペルチェ素子を用いて温熱刺激 (40℃,47℃)を加え,CPM効果を検討した。口唇部および前腕部のテスト刺激に対する主観的評価は単発および10回連続刺激後に行い,単発刺激時のNRSと10回連続刺激後のNRSの差をもって,TSを算出した。左側手掌に40℃と47℃の条件刺激を与えている間,口唇部へはIESの刺激を加えた。条件刺激終了直後に,NRSを用いて主観的評価を測定し,CPMの評価を行った。 結果では単発刺激から10回連続刺激後のTSではBMS群と健康被験者の両方(口唇部および前腕部)で観察された。47℃侵害性条件刺激下のCPM(口唇部)において、BMS群は健康被検者よりも有意に少なかった。40℃非侵害性条件刺激下においてはBMS群と健康被検者間でCPMの値に有意な差は認めなかった。一方、前腕部における47℃侵害性条件刺激下のCPMは40℃非侵害性条件刺激下よりも大きかった。結論ではこれらの結果は、BMS患者は健康被検者に比較して下降性疼痛抑制が欠如している可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍での状況により、日本大学歯学部付属歯科病院ペインクリニック科へ受診する、BMS患者の受診率の低下により、本実験遂行がやや遅れている。これまでは1週当たりに3名のBMS患者が受診し、内1~2名が本実験に参加していただいた。2020年4月~11月のBMS患者初診受診率は1月当たりに3~5名に減少した。12月以降はさらに初診BMS患者が減少し、研究が計画通り遂行できていない状況であった。一方、健康ボランティアに対して表皮内電気刺激(IES)を用いたtemporal summation (TS)とconditioned pain modulation (CPM)の観察は15~20名の被検者に対して行った。
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Strategy for Future Research Activity |
GABAAサブユニット作動薬を用いる前に、下降性疼痛抑制がBMSの疼痛発症とどのような関係があるのか、疼痛抑制行動(ガム咀嚼、自律訓練法)の効果について検討する。ガム咀嚼を用いて,その介入前後で下降性疼痛抑制の変化を観察する。具体的には,心理テスト(CSI,PCS,STAI,POMS2)によって心理ストレス状態を評価するとともに,CPMとoffsetを指標に,BMSや慢性口腔顔面痛と健康対照において自律訓練法とガム咀嚼を行った場合の客観的な心理ストレスレベルと疼痛やCPM, offsetとの関係の検討を行う。またCPMとoffset効果から下降性疼痛抑制の起こり方の違いを観察し,BMSと慢性口腔顔面痛疾患の病態における心身の相関関係を検討する。昨年度同様CPMの測定は口唇部のテスト刺激に対する主観的評価は単発および10回連続刺激後に行い,単発刺激時のNRSと10回連続刺激後のNRSの差をもって,TS(Temporal summation:時間的加重)を算出する。左側手掌に40℃と47℃の条件刺激を与えている間,口唇部へはIESの刺激を加える。条件刺激終了直後に,NRSを用いて主観的評価を測定し,CPMを評価する。Offset測定にはCPMで使用したペルチェ素子(Intercross社製,既存)を用いて右側下口唇に温熱刺激を加える。ベースライン32℃から①痛みスコアでNRS:20-30/100程度の痛みを感じる46℃に上昇させ,5秒間維持(T1),②さらに1℃だけ上昇させ,5秒間維持(T2),③続いて元の温度(46℃)に戻して,20秒維持(T3),最後に32℃に再び低下させる。温熱刺激前後の疼痛強度の違いにより,痛みの感じ方に慣れ(habituation)が生じるか観察する。
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Causes of Carryover |
予定していた国際疼痛学会(2020/08/04~2020/08/08)がアムステルダム/オランダで開催予定であったが、コロナの影響で中止になったため、残金が生じた。使用計画の記入例:令和3年度は繰越金と助成金を合わせて、計画通りにCPMまたはoffsetの機構を解析を行い、CPMで使用する電気刺激センサー(消耗品)・定量感覚検査器具購入、謝礼費、国内発表(WEB開催)、参加費、論文投稿費、論文掲載料について使用する。
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