2021 Fiscal Year Research-status Report
GABAAサブユニット作動薬を用いたバーニングマウス症候群の新規治療法開発
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20K10171
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
野間 昇 日本大学, 歯学部, 教授 (70386100)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バーニングマウス症候群 / 定量感覚検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
閉経が舌体性感覚を変調するのを明らかにするため、昨年度はBMS患者の行動学的研究により女性ホルモンと体性感覚の関係を調査した。定量的感覚検査(QST)を使用して、閉経前後バーニングマウス症候群(BMS)患者と健常被検者の体性感覚機能感覚の違いを調査した。健康被検者男女24名(平均25.4歳)を対象に,検査部位は舌および前腕部の2ヶ所に対してQSTを実施した。6種類の温冷的刺激を9㎜および25㎜のプローブで行った。次に健康ボランティア男女14名(24-27歳)を対象に,1回目;舌尖部および前腕内側部の2ヶ所に対してQSTを実施。2回目は1-2週間の間隔を空け同様のQSTを同一検査者により施行し、級内相関係数を求めた。第3研究ではBMSに罹患している女性患者36人と健常被検者42名を対象に舌尖部に13種類のパラメーターを使用したQSTを行い、閉経前、閉経後早期、閉経後後期の体性感覚の違いを解析した。結果:小径のプローブ(9㎜)の使用は口腔内で温冷覚認識を感知しやすい結果となった。第2研究では冷痛覚閾値のICCは腕、舌ともにexcellent, 温痛覚閾値のICCは腕、舌ともにfairであった。冷痛覚閾値は信頼性・再現性のあるパラメーターであることが示された。第3研究では閉経後後期のBMS群において冷痛覚閾値(Z = 2.08),温痛覚閾値(Z = 3.38)は感覚の亢進を認めた。BMSの灼熱痛(VAS)を従属変数とした重回帰分析ではBMS閉経前群の予測因子として振動覚識別閾値が抽出された。結論:BMS患者閉経後後期に三叉神経系体性感覚機能に影響を与える可能性があることを示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
BMS患者の舌尖部に対し、ドイツ神経障害性疼痛研究ネットワークの13種類の検査法を用いて、感覚評価を行い侵害刺激、非侵害刺激に対する反応を調べ、健常者における反応と比較することで神経障害性疼痛に特有の所見が得られるかを調べている。またBMS患者と健康成人において、カプサイシン投与前後で疼痛強度をVASで評価したのち、各種味覚(甘味、塩味、酸味、苦味)のいずれがその疼痛強度を修飾しうるかを全口腔法により味覚解析を推進している。 一方で、2021年度は当初から緊急事態宣言などの影響で日本大学歯学部での被験者リクルートが困難になり、研究推進が大きく制限された。本研究の主要部分であるBMS患者で医療用医薬品(GABAAサブユニット作動薬)の効果の検証が叶わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は慢性ストレスが舌体性感覚を変調することを調査するため、行動学的研究により明らかにする。また臨床研究では、実際にうつ傾向・不安傾向の高い患者(中枢性BMS)と末梢性BMS患者でのGABAAサブユニット作動薬の効果の違いをConditioned Pain Modulationと各種質問票(中枢感作:Central Sensitization Inventory Score)を用い定量的に検討する。 本年度はBMS患者と健康被験者のリクルートを通常通りに進め、特にGABAAサブユニット作動薬および自律訓練法の治療介入前後の縦断的研究を重点的に推進する予定である。 日本大学歯学部生理学教室との共同研究を、遠隔会議と迅速な倫理申請により実質的に開始し、OVXラットで舌粘膜の細径線維の状態を観察し、健康ラットの舌粘膜と比較する。次にOVXラットとコントロールラットの舌に逆行性トレーサーのfluorogoldを注入して、三叉神経節と膝神経節で標識細胞数ならびにTRPV1発現細胞数をそれぞれデジタルカウントし、免疫染色研究を実行する予定である。基礎的・臨床的研究からトランスレーショナルリサーチを行い更なる競争的資金獲得を目指す。
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Causes of Carryover |
2021年度は当初からコロナ感染症拡大による緊急事態宣言などの影響で日本大学歯学部での被験者リクルートが困難になり、臨床研究推進が大きく制限された。その結果、BMS患者、健康被験者数が減少し、定量感覚検査、下降性疼痛抑制(CPM;IES電極使用)が制限された。それに伴い、被検者への謝礼、消耗品(IES電極)が未使用となった。同様に、コロナ感染症拡大により動物実験においてラット搬入が困難となり、免疫染色抗体など購入がかなわなかった。最後に、研究結果を海外で発表を行う予定であったが、日本大学歯学部の規定により渡航が制限された。繰越金と令和4年度助成金を合わせて、本年度は慢性痛患者と健康被験者への謝礼金を通常通りに進め、動物実験においてはラット購入、各種抗体を購入予定である。
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