2022 Fiscal Year Annual Research Report
口腔潜在的悪性疾患のがん化における細胞老化の関わり
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20K10182
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
笹部 衣里 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (40363288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00200824)
仙頭 慎哉 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (30635264)
北村 直也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (70351921)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 口腔扁平苔癬 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性の慢性炎症性疾患である口腔扁平苔癬(OLP)の病因については未だ明らかにされていない。酸化的ストレスやテロメアの短小化などによってもたらされるDNA損傷ストレスは細胞周期チェックポイント機構の活性化を介して細胞分裂を不可逆的に停止させ、細胞老化を誘導することが知られている。さらに、老化状態に陥った細胞は、炎症性サイトカイン、ケモカインといった生理活性物質を分泌する細胞老化関連分泌現象(SASP)を介して慢性炎症を引き起こすが明らかとなっている。そこで、本研究ではOLPの病態形成における細胞老化の関わりを検討することとした。材料および方法は、線維腫(対照群、30例)およびOLP罹患口腔粘膜組織(OLP群、30例)のパラフィン切片を作製し、細胞増殖関連蛋白(Ki-67)、細胞周期関連蛋白(p53、p21CIP1、p16INK4a)、DNA損傷マーカー(γ-H2AX)、SASP因子(IL-6)の発現について免疫組織化学的に検討した。さらに、OLP病変部における細胞老化およびSASP関連分子の発現と臨床的因子(部位、部位数、臨床病型、病悩期間、症状の有無)との関連を検討した。その結果、対照群と比較して、OLPにおけるKi67の発現は上皮基底層において若干低下しており、γ-H2AXの発現は上皮全層において有意に亢進していた。p21CIP1およびp16INK4aの発現は、基底層から有棘層にかけて発現が亢進していたが、p53の発現に有意差は認められなかった。さらに、IL-6の発現は上皮全層において有意に亢進していた。臨床的因子との関連では、舌を含んで多発性に生じたOLP上皮において細胞老化関連分子の発現が亢進していた。これらのことより、OLPの口腔粘膜上皮細胞は細胞老化に陥っており、これが炎症の持続に関与している可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)