2020 Fiscal Year Research-status Report
原因遺伝子同定とそれに基づくプレシジョン・デンティストリーの構築を目指す基盤研究
Project/Area Number |
20K10202
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 慎将 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (40633706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒坂 寛 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (20509369)
山城 隆 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (70294428)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝子変異 / パネルシークエンス / 多数歯先天欠如 / PFE / 象牙質形成不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代日本の高齢化社会において、健康寿命の延伸は目下の課題である。特に健康な口腔環境が老齢期のQOLに直結することは誰もが知るところである。健やかな口腔環境の維持には、幼少期からの環境育成が重要であるが、大きな障壁となる疾患が存在する。代表例は多数歯先天欠如や歯の正常な萌出が障害されるPrimary failure of eruption(PFE)である。ともに矯正歯科治療が必要な疾患であるが、日頃の臨床現場において目にする個々の症例間で、重篤度や疾患範囲に大きなバラつきがあることが分かる。それぞれに対して対症療法を行っているが、症状の多様性の根本には原因遺伝子のバリエーションとの関連が疑われる。 そこで、ガン治療におけるプレシジョンメディシンに倣い、候補遺伝子を予めピックアップした状態で遺伝子変異を特定するパネルシークエンスを導入することをこの度考えた。ピックアップした遺伝子は当教室でこれまでに解析した遺伝子や、すでに論文報告されている遺伝子を含めて合計42種類を選択した。 大阪大学歯学部附属病院矯正科に通院する患者のうち、6歯以上の先天欠如、PFE、象牙質形成不全のいずれかを有する患者から同意を得られた患者本人および家族を含む、20サンプルを得てDNAを精製した。 結果、リストアップした遺伝子の変異が、塩基欠失、挿入、置換、フレームシフトの有無など種類別に抽出された。その中からエキソン領域における非同義置換に絞り込み、ExACデータベースとの照合、CADDスコアなどを複合し、個々の症例に特有の変異特定を試みた。家族を含めて解析したPFE、DIの症例はそれぞれPTH1R、DSPPの一塩基バリアントを特定できた。先天欠如11症例のうち、2症例は特定不能、9症例は原因遺伝子を絞り込み、そのうち2症例は2つ以上の遺伝子変異を特定、7症例は1つの遺伝子を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にもとづいて、症例の選定からサンプル採取、DNA精製を行い、パネルシークエンスを遂行した。結果を解析し、個々の症例に特異的な原因遺伝子の特定を試みた。疾患を有する19症例のうち17症例で特定は可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回解析した20症例のうち、多数歯先天欠如症例にて複数の遺伝子を特定したものに関して、ここからさらに絞り込みを行うには、症状の有無に関わらず、家族の解析を行い結果を照合する必要があると考えられる。 また今回PFE患者を3家系で解析した。その結果、原因遺伝子として代表的なPTH1Rの変異を有する症例と有さない症例があった。いずれの症例も萌出不全の大臼歯を萌出させるための牽引治療が開始されているのだが、反応がみられ改善した症例と、反応がみられなかった症例があり、PTH1R遺伝子変異の有無と治療上の変化の関連が示唆された。これに関しては引き続き解析症例数を増やしていく予定である。
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Research Products
(5 results)