2021 Fiscal Year Research-status Report
性ホルモンと機械的刺激による変形性顎関節症の病態発生機序の解明とその治療戦略
Project/Area Number |
20K10215
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
石井 武展 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (80433978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 智 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (70453751)
中村 貴 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (80431948)
溝口 利英 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (90329475)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 変形性顎関節症 / 性ホルモン / メカニカルストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「性ホルモン欠如」と「顎関節への過度なメカニカルストレス付加」の複合要因により、より重度な変形性顎顎関節症(TMJ-OA)マウスモデルを確立し、マイクロアレイ解析により遺伝子の網羅解析を行いTMJ-OA疾患感受性遺伝子を新たに発見することを目指した。 組織形態計測分析により、雌マウスにおいて「性ホルモン欠如」と「顎関節への過度なメカニカルストレス付加」の条件を組み合わせた実験群でより重度なTMJ-OAが発症することを確認した。「性ホルモン欠如」と「顎関節への過度なメカニカルストレス付加」により、従来からTMJ-OAマウスモデルで言われているようにMMP13の亢進による軟骨基質の破壊が認められ、さらに軟骨細胞層直下の骨化領域での破骨細胞の増加により顎関節の破壊がTMJ-OAの病態の実態であることが示唆された。 そこで今回新たに、このマウスモデルの顎関節頭から抽出したRNAを用いて、マイクロアレイ解析による遺伝子の網羅解析を行なったところ、Angptl7およびCar1遺伝子がコントロール群と比較して約3倍から5倍の発現亢進を示した。免疫組織染色により、Angptl7は軟骨細胞、Car1は骨芽細胞に局在することを明らかにした。これらの結果より、in vitroで各遺伝子の機能解析を行ったところ、Angptl7を過剰発現する軟骨様細胞が石灰化を増強し、骨芽細胞様細胞がCar1を過剰発現することにより細胞増殖および石灰化が抑制されることを示唆するデータを得た。 本研究により、TMJ-OA発症への関与が示唆されるMMP13などの細胞外マトリクス分解酵素以外のTMJ-OA病因関連遺伝子Angptl7とCar1を新たに見出した。 本研究成果はTMJ-OA発症メカニズム解明の一助になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該研究テーマの実績の一部について、本年度、Osteoarthritis and Cartilageに投稿し、掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、「顎関節への過度なメカニカルストレス」を除外すれば、変形性顎顎関節症(TMJ-OA)は軽度になることが証明された。しかしながら「性ホルモン欠如」が最も重要な原因であるとするならば、「性ホルモン欠如」と「顎関節への過度なメカニカルストレス付加」を行った重度な変形性顎顎関節症(TMJ-OA)マウスモデルに対して、性ホルモンを補充することにより、重症化を防げるかという疑問が出てくる。そこで、「性ホルモン欠如」と「顎関節への過度なメカニカルストレス付加」を行った重度な変形性顎顎関節症(TMJ-OA)マウスモデルに対して、性ホルモン(エストロゲン)を投与することにより、MMP13および破骨細胞の亢進抑制が可能であるかという評価およびTMJ-OA疾患関連候補遺伝子であるAngptl7とCar1の発現亢進抑制がなされるかという点について解明を行いたいと考える。さらに、性ホルモン(エストロゲン)とAngptl7やCar1などのTMJ-OA疾患関連候補遺伝子の間におけるシグナルトランスダクションについても解析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスにより、活動制限があったことによる研究活動自粛が影響している。さらに、 新型コロナウイルスによる学会参加の制限があり、旅費の出費がなかったためと思われる。 次年度は、 新型コロナウイルスによる感染状況を見据えながら徐々に学会活動も再開する。研究活動についてもある程度収束してきつつあり、感染状況を踏まえて今まで準備してきたため、これから物品購入や解析委託、学会参加等を予定している。従って、次年度はより活動的に実施するために基金として翌年度に持ち越した分は相殺されると考えられる。
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Research Products
(3 results)