2020 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞の抗炎症性免疫細胞誘導能を応用した変形性顎関節症新規治療戦略の確立
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20K10234
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
間山 寿代 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (90382639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 尚樹 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20190100)
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
横田 聖司 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (50802401)
佐藤 和朗 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (60295996)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 変形性顎関節症 / 間葉系幹細胞 / 細胞治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性顎関節症(TMJ-OA)の治療では、顎関節領域への外科的侵襲は術後組織を瘢痕化して顎運動を制限する恐れがあるために、対症療法が主流となっている。このように、患者の摂食機能が著しく障害されてQOLを低下させる可能性の高いTMJ-OAの発症原因に直接効力を示す治療法の開発はされていない。 下顎頭の変形や吸収が起こる際には、1)顎関節周囲の炎症性組織より分泌されたケモカインが働いて、マクロファージなどの炎症性細胞を顎関節炎症巣に動員させる。2)動員後のマクロファージは炎症組織中で活性化され、炎症性マクロファージ(M1-MΦ)へと分極化し、炎症性サイトカインを放出して周囲の炎症反応をさらに高めるとともに、タンパク質分解酵素等を分泌して軟骨組織を破壊する。3)M1-MΦより放出された炎症性サイトカインは、周囲の単球/マクロファージ系前駆細胞に作用して破骨細胞への分化や活性化を誘導し、炎症性骨破壊を進行させる。 そこで初年度(令和2年度)では、下顎頭周囲における炎症組織がどのようにMΦの走化性を誘導するのかについて細胞・分子レベルで明らかとする目的で、マウス顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞に炎症性ストレスとしての酸化ストレスを与えた際にその発現が変化するケモカインについて調査を進めた。具体的には、過酸化水素をマウス顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞に与えた際に、その発現がmRNAレベルで増強するケモカインについて調査をした。その結果、この細胞において、酸化ストレスにより誘導されるケモカインを明らかとすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TMJ-OAの炎症症状の発現に深く関与すると考えられている酸化ストレスをマウス顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞に与えた際に発現頻度差が生じる遺伝子について解析したところ、無菌性炎症に関与すると考えられるケモカインの一部の発現が上昇することを確認した。また、TMJ-OAの発症に大きく関与すると考えられているダメージ関連分子パターンによる刺激でも、この線維芽細胞様滑膜細胞におけるケモカインの発現誘導効果が認められた。現在、プライマーアレイなどを用いた網羅的遺伝子発現頻度差解析を開始しており、複数のターゲット候補遺伝子が認められた。 このように、本課題研究の目的である下顎頭周囲組織中で、MSCがどのように動員されM2-MΦを誘導するのかについて細胞・分子レベルで明らかとして、MSCを応用した新規TMJ-OA治療法を開発するためのターゲット分子のin vitroでのピックアップ作業は、ほぼ予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
① TMJ-OAの患部組織中にMSCが動員される際に働く顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞由来モデルケモカイン分子のさらなるピックアップとその絞り込みを実施する。具体的には、プライマーアレイなどを利用して、この細胞の炎症性刺激存在下におけるケモカインの発現様式の変化を網羅的に捉える。加えて、顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞が炎症性環境下で発現を増大するケモカインに対応する受容体のMSCにおける発現量についても解析し、炎症性環境下のMSCにおいて発現の多いケモカイン受容体を明らかとする。そして、MSCで高い発現を示した受容体に対応する顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞由来ケモカイン分子を真のモデルケモカイン分子として絞り込む。 ② TMJ-OAの患部組織中でMSCがM1-MΦをM2-MΦに分極化するためにキーとなるモデル分子のピックアップとその絞り込みを実施する。緑色蛍光強発現TGマウスと赤色蛍光強発現TGマウス骨髄よりMSCならびにマクロファージ前駆細胞を採取して培養し、増殖させて移植実験に用いる。TMJ-OAモデルマウスにそれぞれの細胞を同時に移植しTMJ-OA患部下顎頭周囲にホーミングさせる。次いで、緑色蛍光と赤色蛍光を指標としてホーミング後のMSCならびにMΦを切離・回収した後、mRNAを抽出する。その後、プライマーアレイ等を利用して、MSCで高発現するサイトカインや成長因子などの液性因子や接着因子を網羅的に調査して、これらをモデル分子とする。同様にしてMΦで高発現するサイトカインや成長因子に対する受容体や接着因子を網羅的に調査してモデル分子とする。この時同時に、ホーミング後のMΦがM2-MΦに分極化していることを分化マーカー(CD206やIL-10)の発現を指標に確認する。
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Causes of Carryover |
2020年度に実施したTMJ-OAの発症に関わるマウス顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞におけるモデル分子のピックアップ作業の一部が完了しておらず、2021年度にも実施する必要性が生じたため。
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Research Products
(2 results)