2021 Fiscal Year Research-status Report
高齢者における免疫再構築症候群としてのカンジダ症の発現機序と治療法の開発
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20K10252
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
清浦 有祐 奥羽大学, 歯学部, 教授 (90194951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カンジダ症 / 免疫再構築症候群 / 易感染性宿主 / Candida albicans / Candida tropicalis / Candida glabrata |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫再構築症候群は、AIDS患者の回復期にみられる疾患だが、近年は高齢者で多数出現する自己免疫疾患に対する生物学的製剤の投与中止でも起こることが報告されている。この疾患は、急激な免疫抑制の解除で免疫機能が再構築されて、微生物感染に対する過剰な免疫反応が起こるものでカンジダ症も含まれる。本研究は、免疫再構築症候群としてのカンジダ症に特有の発症メカニズムを解明することを目的とする。 本年度は、以下の結果を得た。1. Candida albicans, C. tropicalis, または C. glabrata 感染後摘出したマウス脾臓を検討した結果、C. albicans による有意な IL-1α, IL-1β, IL-6 及び MCP-1 産生がみられたが、TNF-α, MIP-1α, IL-17 及び IL-33 の産生は認められなかった。一方、C. tropicalis の場合は、IL-1α, IL-1β 及び MIP-1α 産生がみられた。そして、C. glabrata では、IL-1α 産生のみ非感染マウスより有意に高かった。2. C. albicans を ICR マウスに10の8乗CFU感染させた場合は0%の生存率で、10の7乗CFUでは60%であった。C. tropicalis 10の8乗CFU感染では20%の生存率、10の7乗CFUでは100%だった。また、C. glabrata を10の8乗CFU感染で40%の生存率、10の7乗CFUでは100%の生存率であった。3. T細胞欠損の BALB/cAJcl-nu/nu ヌードマウスでは、C. tropicalis 10の8乗CFU感染で10%、10の7乗CFUでは20%の生存率であった。一方、C. glabrata では10の8乗CFU感染で10%、10の7乗CFUでは100%の生存率であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
保有する Candida spp. の3菌種によるサイトカイン産生能の差が認められた。次に、免疫再構築症候群をマウスで起こすために免疫抑制剤の投与時期を変化させてカンジダ症の発現に及ぼす影響を調べたが、投与時期を変化させてもカンジダ症の病態に大きな差異は認められなかった。実際の人の免疫再構築症候群では免疫抑制剤の長期投与が行われ、その突然の中断でこの疾患が起こるので、より長期間の投与が必要と考える。一方、免疫抑制剤の投与と異なる方法で免疫応答を高め、C. albicans 感染によるサイトカインの過剰産生を導くことでマウスの致死性が高まる結果が得られた。具体的には、マウスに C. albicans の加熱死菌を投与するとその後に生菌を投与した場合には、生菌のみを投与した場合よりも致死性が高まった。通常であれば、C. albicans の加熱死菌の前投与で C. albicans に対する免疫をマウスは獲得し、その後の生菌投与による致死性が減少するはずである。しかし、死亡率が上昇する逆の結果であった。この理由としては、加熱死菌による前処理が免疫細胞を活性化して、生菌感染によるサイトカイン、特に炎症性サイトカイン産生が急激かつ過剰に起きたためと考えられる。マウスに実験的なサイトカインストームを発生させることができたので、具体的にどのような種類のサイトカインの産生が起きたのか調べる。さらに、この実験的サイトカインストームを発症させる方法に再現性と確実性が認められれば、サイトカインストームのマウスモデルは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病態解明にも役立つと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
C. glabrata を10の7乗CFU投与した場合、ICRマウス、BALB/cAJcl-nu/nu ヌードマウスともに生存率100%であった。一方、C. glabrata によって産生されないが、他の2菌、C. albicans または C. tropicalis 腹腔投与によって産生されるサイトカインとして IL-1βが挙げられる。ゆえに、マウスの致死率を増加する因子の一つとしてインフラソームが考えられる。そこで、インフラマソームを抑制する低分子治療薬を投与することで、サイトカインストームを抑制する。低分子治療薬の投与は数日連続して行うことでマウスの免疫機能を抑制することができる。その後に低分子治療薬投与をストップして、マウスにいかなる変化が起こるのか C. albicans の菌数、産生されるサイトカインの種類及びその量の増減を調べる。さらに、免疫再構築症候群モデルマウスを確立するために、レンチウイルス(増殖能欠損のHIV-1)を用いて上記の方法をマウスの口腔内でも行う。すなわち、前日にプレドニゾロンを投与したマウスの舌にレンチウイルスを塗布し、その後に C. albicans の生菌を接種することで、生菌のみの接種に比較してウイルスの塗布が口腔カンジダ症の増悪を起こすか否かを明らかにする。具体的には、マウスの舌症状の観察、舌組織中の C. albicans の菌数測定と病理組織像の解明、舌組織で産生されるサイトカインの種類とその増減を検討する。そのことによって、局所的なサイトカインストームによって口腔カンジダ症の増悪が起こるか否かも明らかにできる。さらに、口腔カンジダ症がカンジダ血症に移行する可能性を明らかにするために、舌組織以外に小腸、胃、脾臓、腎臓中の C. albicans 菌数の測定、病理組織像の解明、産生されるサイトカインの種類とその量の増減を検討する。
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Causes of Carryover |
残金は6,556円、すなわちICRマウス7~8匹分であるので、次年度に繰り越した。
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