2021 Fiscal Year Research-status Report
口腔レンサ球菌のペプチドグリカン-アセチル化酵素の機能解析とビルレンス制御機構
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20K10268
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
林 幾江 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (00346503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 勝 大垣女子短期大学, その他部局等, 教授 (80253095)
飛梅 圭 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (40350037)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペプチドグリカン |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔レンサ球菌の細胞壁ペプチドグリカンを溶菌酵素mutanolysinで消化し、可溶化したムロペプチドをHPLCと質量分析計にて分析する手法で3次元の網目構造を有する不溶性の巨大分子・ペプチドグリカンの構造を解析した。基本構造のグリカン鎖や架橋ペプチド鎖及び軸ペプチドの組成を明らかにすることに加えて、(脱)アセチル化修飾の有無やその修飾部位の特定、さらには架橋を反映するムロペプチドの割合(monomer, dimer, trimer等)や軸ペプチド(tri体, tetra体, penta体)の比率等、詳細に分析し、lyzozymeやautomutanolysin等の溶菌酵素に対する感受性の差異からペプチドグリカンの構造がビルレンス発現に関与するか検討した。 さらに、S.sobrinusのペプチドグリカンに見出したアセチル化修飾体(Thr-OAc)について、エドマン分解反応を組み合わせた質量分析や加水分解によりアセチル化修飾体が存在している事を確認した。新たに見出したThr-OAcのアセチル修飾体が同菌種のS.sobrinus OMZ 176 や S. sobrinus 5に同様に存在する事、また架橋アミノ酸にThrを含む他菌種(S. downei, S. cricetus, S. salivarius)のThrにThr-OAcの修飾体が存在するか検討した。 アセチル化修飾の責任遺伝子をNCBIデータベースにアクセスし、S.sobrinus whole genome 情報からペプチドグリカン架橋アミノ酸・Thrのアセチル化酵素候補遺伝子及びグリカン鎖のN-アセチルムラミン酸のアセチル化候補遺伝子を得て、遺伝子クローニングの準備を行った。またこれら遺伝子の一次構造、高次構造、ドメイン別機能などタンパク質のバイオインフォマティクス解析を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ペプチドグリカンの構造解析に不可欠な質量分析装置(MALDI-TOF/MS)が経年劣化により故障し測定不能となった。ペプチドグリカンの構造解析を担う研究代表者が所属する研究機関には本機にかわる質量分析装置を有しておらず、また近隣の近県(中国地区)に共同利用が可能な装置がなく、関東地方にある装置の利用を試みたもののコロナ禍で移動が制限され測定がはかどらない状況である。 また、バイオインフォマティクス的方法により同定したacetyltransferase遺伝子候補の組み換え体・発現実験は本研究で重要な部分の実験であるが、組み換え体発現実験を担当する研究分担者が施設承認を得た研究機関へ往来し実験する事がコロナ禍のため叶わず研究遂行に支障をきたした。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオインフォマティクス的手法により得られたS.sobrinusペプチドグリカンアセチル修飾酵素のうち、架橋アミノ酸・Thrのアセチル化候補遺伝子及びグリカン鎖・N-アセチルムラミン酸のアセチル化候補遺伝子として得られたOat2, Oat34の2つの候補遺伝子について、アルファフォールドによる立体構造予測を行い、ペプチドグリカンもしくはムロペプチドとの作用点のシミュレーションを行う等さらなるバイオインフォマティクス的手法を駆使して情報を得る。 分子生物学的方法として、同定された遺伝子候補Oat2, Oat34を用いて、アセチル化酵素の組み換え体の発現・精製を行う。Hydrohobicity解析からOat2は612アミノ酸中453番目以降のC末部分を、Oat34は593アミノ酸中391番目以降のC末部分を“可溶化可能酵素”部としてPCR遺伝子クローニングする。クローニングした遺伝子を大腸菌にて大量発現し粗精製を行う。組み換えタンパク質を用いてin vitroで酵素反応を生化学的に解析する。 S.sobrinus染色体でのThrアセチル化酵素候補遺伝子KO株の作成をpBGK vector, pMC340B plasmid, pIB102を用いてS.sobrinusのKO株を作成する。アセチル化酵素遺伝子欠損株、過剰発現株を作成し、細胞内における活性(機能)を確認する。溶菌酵素に対する感受性、抗生物質に対する感受性をビルレンス制御機構の観点からペプチドグリカン‐アセチル化酵素の機能を解明する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により研究分担者が遺伝子組み換え施設の承認を得た研究実施機関にて組み換えタンパク質を作成する実験がかなわなくなり、そのため予算執行の必要がなかったため次年度使用額が生じた。研究体制を見直し、新たな研究協力機関と研究協力体制を整えた。研究代表者が組み換えタンパク質の作成に携わることとし、すでに研究協力機関の流動研究員の手続きも終えている。次年度は組み換えタンパク質作成・精製に取り組むため、遺伝子発現ベクターや核酸増幅酵素試薬等の購入や細胞培養用試薬やそれに伴う理化学容器、精製用キットの購入など消耗品の購入、及び共同研究施設で実験するため往来に必要な交通費(旅費)の予算執行を計画している。
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Research Products
(1 results)