2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔バイオフィルムの動脈硬化誘発における病原性獲得メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K10271
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
長田 恵美 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (00304816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
於保 孝彦 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50160940)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオフィルム / Streptococcus mutans / Streptococcus oralis / 内皮細胞 / 過酸化水素 / 動脈硬化 / 病原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔バイオフィルムは動脈硬化のリスクファクターとして注目されている。口腔バイオフィルムの「菌種の集合体」としての病原性の獲得メカニズムを解明するために、炎症反応誘発能はあるが過酸化水素を産生しない口腔バイオフィルム細菌としてStreptococcus mutans を、炎症反応誘発能はないが過酸化水素を産生する口腔バイオフィルム細菌としてStreptococcus oralis を用いて以下の研究を行なった。 まず両菌のヒト動脈内皮細胞(HAEC)の殺傷能を検討した。Streptococcus mutans およびStreptococcus oralis をそれぞれ、あるいは両菌を一緒にHAECとMOI=100で4時間共培養した場合、HAECは障害されなかった。一方Streptococcus oralis をMOI=1000、あるいはStreptococcus mutans MOI=100とStreptococcus oralis MOI=1000を同時にHAECと4時間共培養した場合、HAECは障害された。 次にそれぞれ単独あるいは共存した状態での菌の増殖能を、5% CO2下でHumedia-EG2培地を用いて検討した。Streptococcus mutans を同数のStreptococcus oralis と4時間共培養した場合、Streptococcus mutans の増殖能は単独で培養をした場合と変わらなかった。一方Streptococcus mutans を10倍量のStreptococcus oralis と4時間共培養した場合は、Streptococcus mutans の増殖能は低下した。Streptococcus oralisの増殖能は今回用いた条件ではStreptococcus mutans の存在によって影響を受けなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた当初の研究計画に基づいて成果がでているため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症反応誘発能はあるが過酸化水素を産生しない口腔バイオフィルム細菌 Streptococcus mutansと炎症反応誘発能はないが過酸化水素を産生する口腔バイオフィルム細菌 Streptococcus oralis のヒト動脈内皮細胞(HAEC)への侵入能を検討する。HAECを一定時間、2菌種で同時に刺激した後、HAEC表面に存在する菌は抗生剤で処理する。HAECを0.1% Tween 20で破壊し、細胞内に侵入した菌を回収、BHI寒天培地にて嫌気的に培養する。48時間後に各々の菌のコロニー数を計測し、HAECに侵入した菌数とする。単独の菌の場合、過酸化水素を除去して2菌種で刺激した場合と比較する。過酸化水素が菌の侵入を促進しているか、過酸化酸素単体を培地に加えることによって検討する。
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Causes of Carryover |
物品費は研究が順調に進んだ結果の使用であるが、来年度研究の進行によって繰り返し実験することによって費用がかさむ可能性があるため、これに用いる予定である。新型コロナウイルス感染症流行のため直接移動しての学会参加はできなかったため、旅費は使用できなかった。この状況が続く場合は、他の目的での使用を検討する。
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