2020 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原細菌の発現遺伝子をベースとした歯周病診断マーカーの検索と確立
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20K10277
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
桑原 紀子 (篠崎紀子) 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (90287665)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯周病診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は複数の口腔細菌と,宿主および環境要因が複雑に絡みあった混合感染症であり,国民病の一つであると考えられている。歯周病の進行状態と関連性の高い口腔細菌はレッドコンプレックスと呼ばれ、歯周病が重篤になるほど検出率が高い。さらに歯周病は口腔のみならず糖尿病、動脈硬化、脳疾患など全身疾患にも影響を及ぼしているという報告も多い。歯周病の進行度を早期に,迅速かつ適正に診断し,予防・治療方針を決定することは,歯を保存することのみならず,歯周病と関連することが知られている全身疾患の予防と,病態の改善へと波及していくことが予想される。本研究では,歯周病原細菌の遺伝子発現を基盤とした歯周病の迅速診断システムの開発を目的として,ここでは主要な歯周病原細菌の発現遺伝子と歯周疾患の病態との相関性良く示す遺伝子の網羅的解析を行い、その遺伝子を基盤としたバイオマーカーを検索することにしている。令和2年度は講座保存菌株から精製したRNAをサンプルとしてマイクロアレイの実験を実施している。培養した歯周病原細菌に対して、歯周ポケット内で起こると想定される3種類の刺激(温度変化、pH変化、酸素の影響)を設定した。これらのうち酸素の影響に対する遺伝子発現の変化を解析するため、嫌気培養した菌体を振盪することで酸素に暴露し、時間ごとに菌体を回収してRNAを精製した。その後、蛍光ラベルを行いアレイ実験を実施した。現在、数値化されたデータを基に著しく発現量が変化する遺伝子については解析ソフトを使用してリスト化している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の講座保存菌株によるマイクロアレイ実験実施計画では、講座保存の歯周病原細菌に、酸素の影響、pHの影響、温度の影響の3条件でアレイ解析を実施する予定であったが、歯周病原細菌の発育条件の再設定とサンプル調製に時間を要したため、酸素の影響のみアレイ実験の実施と解析にとどまった。そのため実験計画にはやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度以降は令和2年度に実施予定であった、講座保存の歯周病原細菌に、酸性および塩基性の緩衝液を使用したpHの影響および高温と低温の温度変化の刺激を与え、設定した時間ごとに菌体を回収し、RNAを精製後、アレイ解析を実施する予定であり、著しく発現量が変化する遺伝子についても解析ソフトにてリスト化することにしている。さらにリスト化された遺伝子の発現量について詳細に検討を進めるためリアルタイムPCRを行うことにしている。
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Causes of Carryover |
令和2年度の計画ではマイクロアレイの実験をさらに2回行う予定であったが、RNA精製を行うための歯周病原細菌の培養条件を改善し、再設定を行った。そのためにサンプルの調整が遅れ、実験を予定通り実施できなかったことから、令和3年度に実施するマイクロアレイ実験用のアレイガラスの購入と実験を実施するために必要な試薬の購入に充てる。
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