2020 Fiscal Year Research-status Report
嚥下頻度を用いた重症心身障害児者の誤嚥性肺炎のリスク評価法の確立
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20K10292
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 信和 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (20570295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野原 幹司 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (20346167)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 嚥下頻度 / 嚥下障害 / 誤嚥性肺炎 / 重症心身障害児者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,施設入所の重症心身障害児者(重症児者)を対象として,日常生活における嚥下頻度と肺炎の関連についての研究を実施した. 対象は,医療福祉センターに入所する重症児者57名(平均年齢44.8±12.7歳,男女比=30:27)とした. この57名の日常の嚥下頻度を測定し,1)被験者間での嚥下頻度の違い,2)同一被験者内での嚥下頻度のばらつき,3)嚥下頻度の多寡と肺炎の関連を検討した.1,2)に関して,嚥下頻度は喉頭マイクロフォンを用いた測定法を用い,各被験者につき3回の測定を行った.測定は,午後2~4時の任意の1時間とし,食事と入浴以外の活動は制限しなかった.3)については,各被験者の嚥下頻度測定前の1年間での肺炎の既往を確認した.肺炎の既往は,被験者の診療録, 各種検査結果(血液検査,画像検査など)から被験者の主治医が肺炎と診断したもののみを「肺炎の既往あり」とした. 測定の結果,全被験者の嚥下頻度は,平均21.3±22.6回/時,その範囲は最小で1回,最大で111回となり,被験者間で広い範囲をとった.一方被験者内の嚥下頻度は,測定した3回の級内相関係数ICC(1,1)は0.941と高い相関を示し,同一被験者内では嚥下頻度が一定している事が明らかとなった.また嚥下頻度と肺炎の関連については,肺炎の既往「あり」群と「なし」群の比較において,1年以内に肺炎を発症した既往あり群と発症していない既往なし群の1時間あたりの嚥下頻度はそれぞれ,12.2±12.2回,27.0±20.4回となり,肺炎「なし」群とくらべ肺炎「あり」群の嚥下頻度が有意(P<0.001)に低い値を示した. 以上から,重症児者において,日常の嚥下頻度は,同一被験者であれば一定の値をとること,慢性的に嚥下頻度が低下した例では,有意に肺炎の発症が多かったことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により,研究フィールドである施設への出入りや測定について制限を受けたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,引き続き嚥下頻度の測定を続け,重症児における嚥下頻度と肺炎の関連を強さを検討していく予定である.また,嚥下頻度の多寡が嚥下機能に与える影響についても検討を行う予定にしている.
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルスの影響等により,研究が計画どおりに進行しなかったこと,学会を含む国内外での研究発表、意見交換などの機会が著しく制限されたことにより支出は少なくなった. 次年度以降は、徐々に旅費を使用する機会も増加すると予想される.また研究の進行に合わせて,嚥下頻度を測定する器具の追加の購入、消耗品の交換、保存媒体の購入などを検討している.
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Research Products
(2 results)