2021 Fiscal Year Research-status Report
歯周病が脂肪肝の発症に及ぼす影響の疫学・細胞生物学研究による解明
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20K10298
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
川戸 貴行 日本大学, 歯学部, 教授 (50386075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 十誉子 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), 研究部研究開発室, 主任研究員 (00597247)
尾崎 愛美 日本大学, 歯学部, 助教 (10867930)
中井 久美子 日本大学, 歯学部, 助教 (50736725)
山本 高司 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), 研究部研究開発室, 研究員 (60868529)
田中 秀樹 日本大学, 歯学部, 准教授 (90434076)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HepG2細胞 / 脂肪滴 / 炎症性サイトカイン / TNF-α / FIB4 / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞研究:エネルギー過多と歯周病の罹患を想定してグルコースと炎症性サイトカイン(TNF-αまたはIL-6)を培地に添加した条件で、ヒト肝臓由来HepG2細胞を培養し、脂肪滴の形成状況を分析した。その結果、グルコース添加で細胞内の脂肪の大滴化が認められたが、TNF-αとIL-6の添加による影響は認められなかった。また、脂肪滴形成関連因子acetyl-CoA carboxylase、fatty acid synthase、 perilipin 2、lipin1のHepG2細胞における遺伝子発現にも、これら炎症性サイトカイン添加による変化は認められなかった。研究1年で実施した歯周病原因菌内毒素を培地に加えた実験でも同様の結果が得られており、歯周病が肝臓細胞内の脂肪の大滴化に影響する可能性は低いと考えられた。 疫学研究:某事業所で2012年の健康診断を受診した対象者を、脂肪肝(腹部超音波検査で2つ以上の所見あり)と線維化指標(年齢と血清生化学検査値から算出したFIB4値が1.3以上)の状況から4群(脂肪肝なしで線維化指標も陰性の群、脂肪肝ありで線維化指標が陰性の群、脂肪肝ありで線維化指標も陽性の群、脂肪肝なしで線維化指標が陽性の群)に分類し、肝臓への脂肪沈着と線維化の状況と歯周ポケットの保有(CPIでコード2以上)との関連性を調べた。その結果、脂肪肝ありで線維化指標が陰性の群と脂肪肝ありで線維化指標も陽性の群を対象とした分析では、6 mm以上の歯周ポケット保有と線維化指標の陽性/陰性に関連性が認められた。一方、脂肪肝なしで線維化指標も陰性の群と脂肪肝ありで線維化指標が陰性の群を対象とした分析では、歯周ポケットの保有は脂肪肝の所見の有無と関連しなかった。これらの結果から、脂肪肝に及ぼす歯周病の影響は、単純性脂肪肝から肝臓の線維化を伴う段階に進行してから認められる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞研究に遅れが認められている。当初、HepG2細胞を刺激する因子としては、グルコース、歯周病原菌体内毒素、TNF-α、IL-6とともに、飽和脂肪酸やIL-17を候補に挙げていたが、これらの因子で細胞を刺激する実験に至っていない。理由としては、研究計画の大幅な見直しを行ったことが挙げられる。すなわち、これまでの実験でグルコース添加条件においても同細胞の脂肪滴の形成が安定的に認められないことに加えて、疫学研究では単純性脂肪肝から線維化を伴う段階に移行してから歯周病が影響を及ぼす可能性が示唆されたことを受け、細胞研究においても線維化に関係するコラーゲンやタンパク分解酵素の産生に分析の視点を変更することとした。これに伴い先行研究を確認したところ、肝臓の線維化については肝星細胞を用いた研究が散見されることから、本研究で培養・分析する細胞も肝星細胞に変更することとした。以上、細胞研究では研究計画の大幅な見直しに時間を要した。 一方、疫学研究では、縦断研究で歯周ポケットと腹部超音波検査による脂肪肝所見との関連性が認められなかった研究1年目の結果を受けて、脂肪肝から肝臓の線維化に着目点を変更した分析を進め、研究実績の概要に記載の知見を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞研究では、修正した研究計画に基づいてヒト株化肝星細胞(LX-2、Merck社)と正常肝星細胞(HHSC、TOYOBO社)を用いることとする。これらの細胞をグルコースなどの食事因子と炎症性サイトカインをはじめとする歯周病関連因子の存在下で培養する。コラーゲン性および非コラーゲン性タンパクの発現・産生状況を細胞染色、real-time PCR、Western blottingまたはELISA法で検討する。また、タンパク分解酵素の発現・産生も線維化の進行に関与することから、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)とその内因性阻害因子(TIMPs)の発現状況も同様に分析する。影響が確認された食事因子と歯周病関連因子の組合せから、単純性脂肪肝から肝臓の線維化への移行に歯周病が影響するメカニズムを考察する。 疫学研究では、脂肪肝の所見の有無と線維化指標(FIB-4)の陽性/陰性別に分けた4つの群について、それぞれの状況を踏まえて歯周病との関連性の有無について詳細な考察を進める。特に脂肪肝の所見を認めず線維化指標が陽性であった群については、単純性脂肪肝から肝臓の線維化へと進行後、生活習慣の見直し等により脂肪肝の所見が改善されつつある状態との解釈が可能であるか、先行研究の知見を集めつつ検討する。
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Causes of Carryover |
細胞研究では、細胞の脂肪滴形成因子の遺伝子発現をreal-time PCR法で調べ、影響が見られた因子についてWestern blottingまたはELISA法でタンパク発現を調べる手順としていたが、いずれの因子も遺伝子発現に変化が無かったためタンパク発現の検索に至らず、試薬の購入を見送った。また、これまでの実験結果を踏まえて研究計画の大幅な見直しに取り掛かったため、培養や分析の実施回数が減少した。これらの理由から次年度使用額が生じた。今後は見直した計画のもと、肝星細胞と専用の培地、ならびにreal-time PCR、Western blotting、ELISA法、細胞染色に用いる試薬・消耗品を購入して研究を遂行する。また、細胞染色で得られた画像データを定量分析するために、画像解析に適したパソコンを購入する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Impact of dental health intervention on cardiovascular metabolic risk: a pilot study of Japanese Adults2021
Author(s)
Yamazaki Y, Morita T, Nakai K, Konishi Y, Goto A, Yamamoto T, Seto M, Ozaki M, Tanaka H, Maeno M, Kawato T
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Journal Title
Journal of Human Hypertension
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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