2021 Fiscal Year Research-status Report
健常者口腔から分離された新菌種のプロバイオティクスとしての可能性の検討
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20K10299
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
齋藤 真規 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (30434096)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | <i>Arachnia rubra</i> / プロジギオシン / 抗菌因子 / 色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
<i>Arachnia rubra</i> SK-1株は健常者口腔から分離され,歯周病原細菌に対する抗菌効果を発揮するGram陽性細菌である。本菌株は培養条件によって赤色集落を形成するユニークな細菌である。SK-1株の赤色集落形成のための培養条件は不明であったため酸素濃度および温度条件を検討した結果,炭酸ガス培養装置で37℃,48時間培養後,好気下で30℃,24時間培養すると安定的に集落が赤色なることが判明した。色素には抗菌効果を有するものもあるため,色素を産生する遺伝子を検索することとした。 SK-1株の全ゲノム配列を決定し,DDBJ(日本DNAバンク)でアクセッション番号NZ_CP072384で登録されている。KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)でSK-1株のゲノムの機能を解析したところ,赤色集落形成に関与する遺伝子が検出された。検出されたのは<i>Serratia marcescens</i>の産生するトリピロ-ル系赤色色素であるプロジギオシンであり,抗菌効果の他にヒトがん細胞に対して選択的にアポトーシスを誘導することが知られている。また,抗菌効果を発揮することから抗菌因子を産生しているかを確認したところカルバペネム,モノバクタム,ストレプトマイシン,バリダマイシンおよびノボビオシン生合成に関与する遺伝子が検出された。また,インスリン非依存性糖尿病治療薬として用いられるアカルボース生合成に関与する遺伝子が検出された。これらの結果から,本菌株が産生する赤色素を含めた抗菌物質によって病原細菌を排除する可能性が示唆された。一方,本菌株のヒトに有害性を検索したところ,リポ多糖(内毒素)生合成に関与する遺伝子が検出されたが,内毒素はGram陰性細菌特有の物質であり結果に疑問が残る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤色集落を形成させる培養条件を確立できたことで赤色色素の成分同定に使用するための菌量が集まりつつある。また,KEGGによるゲノムの機能解析から赤色色素がプロジギオシン系の色素であることが判明したことから成分同定の道筋ができた。 KEGGにより,赤色色素以外にも抗菌物質を産生している可能性が示唆されたた。当初,バクテリオシンを産生していると考えていたため,今後は抗菌物質の確認を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,SK-1株のゲノム解析がKEGGにより進展し,様々な抗菌因子を産生することが判明した。そこで,今後は実際に抗菌因子の産生遺伝子を保有するか,抗菌因子を生合成するのかをPCR,クロマトグラフィー,抗生物質感受性試験などを使用して確認する。 また,本菌株はGram陽性菌であり,Gram陰性菌特有の内毒素を生合成することはないと考えるため,内毒素の検出キットを用いてその真偽を確認する。
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Causes of Carryover |
海外での研究発表を行いたいと考えていたが,コロナ禍であったため自粛した。 今後は海外発表あるいは色素の構造解析等に充当する予定である。
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