2022 Fiscal Year Research-status Report
健常者口腔から分離された新菌種のプロバイオティクスとしての可能性の検討
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20K10299
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
齋藤 真規 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (30434096)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 色素 / <i>Arachnia rubra</i> / 抗菌効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
健常者口腔から分離した赤色色素を産生するGram陽性桿菌である<i>Arachnia rubra</i> SK-1株は歯周病原細菌に対して抗菌効果を発揮したため,本菌が産生する赤色色素の解析を行った。前年度までに全遺伝子配列を決定し,オントロジーに関するデータベースであるKEGGで本菌株が産生する物質の検索を行った。その結果,本菌株が産生する可能性のある色素類はプロジギオシン類とテルペノイド骨格をもつ物質(カロテノイド色素)であることが判明した。そこで当該年度は赤色色素を菌体から抽出して解析することとした。 TSY(Tryptic soy broth supplemented with 0.5% yeast extract)寒天培地に増殖した本菌株の赤色集落を回収し,凍結乾燥後の菌体にメタノールを添加することで赤色色素を抽出した。抽出後の赤色色素をLC/MSで分析を行った結果,7つの赤色の化合物(波長 500 nm のUVクロマトグラム)を検出した。赤色色素のピークについて,精密質量から分子式を算出し,算出された分子式を用いてデータベース(SciFinder-n)検索を行い,構造を推定した。その結果,カロテノイド色素と一致する物質は検索されず,全ての化合物がプロジギオシン類と推定された。しかし,LC-MS/MS分析のプロダクトイオンスペクトルと一致する化合物がデータベースで検索できなかった。以上の結果から,本菌の産生する赤色色素はプロジギオシン類の新規化合物であることが推察された。色素には抗菌効果を有するものが存在するため,本菌の産生する赤色色素が歯周病原細菌に対して抗菌効果を発揮する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
<i>Arachnia rubra</i> SK-1株は培養条件によって赤色色素を産生する口腔常在菌であり,申請者によってはじめてヒト口腔から分離され報告されたものである。赤色集落を形成する培養条件は前年度に確定することができたものの,栄養がリッチな寒天培地でも増殖する量は少ない。また,本菌株は培地固着性であり,集落を回収するのが困難である。今回行ったLC/MS分析にも大量の寒天培地を必要とした。 本来,大量培養に適すのは液体培地での培養を行うべきだが,本菌株の赤色色素は菌体内に存在し,液体培地中で赤色色素を十分に産生する条件を確立できていない。 今回得られた新規物質であるプロジギオシン類に更に解析を加えるのであればLC/MS分析以上に菌量が必要となるため菌体の回収に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,Arachnia rubra SK-1株が産生する色素の追加解析として,7種の新規プロジギオシン類で最も検出量が多かった物質(ピーク3)についてNMR分析を行い,分子構造の解析および未知の化学物質としての同定を行う。また,<i>Serratia macescens</i>が本菌株と同様にプロジギオシンを産生することから本菌株の産生する色素の代用として歯周病原細菌に対して抗菌効果を発揮するか否かを検討する予定である。 <i>Serratia macescens</i>のプロジギオシンに歯周病原細菌に対して抗菌効果を発揮した際には人体への安全性を検討し,創薬開発に寄与しうるかを検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度までにNMRを行い,分子構造の解析および未知の化学物質としての同定を行う予定であったが,LC/MS分析を行うだけでも予定より多くの菌量が必要であった。LC/MS分析より100倍近くの菌をNMRに使用することが判明しておりNMRの費用が残ってしまった。現在,菌の回収を行っており,菌量が十分に集まった時点で次年度使用額をNMRに使用する予定である。
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