2022 Fiscal Year Research-status Report
クリニカルパスの診療の質・安全及び病院経営に対する効果と適切な運用に関する研究
Project/Area Number |
20K10322
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 武浩 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (20372237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 浩二 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (60161303) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クリニカルパス / 医療の質 / 医療安全 / 経営改善 / 原価計算 / 地域連携パス / 電子化クリニカルパス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度の「1.入院クリニカルパスの効果評価」では、令和3年度に示した、パス利用例における①平均入院日数の有意な減少効果および③病院経営における、1例あたりの平均収支および黒字症例率の有意な高さに関し、令和3年度症例を加え同様に分析したが、いずれも令和2年度同様、パス利用例はパス未使用例に対し、平均入院日数は有意に短く、1例あたりの平均収支および黒字症例率は有意に高かった。 一方、「2.外来クリニカルパスの効果評価」として、外来パスとして運用中の術前検査パスが、入院日数の短縮効果および経営改善効果が入院単独よりもさらに有意に高い点を示した。令和3年度は、①③の令和3年度症例を加えた分析に加え、医療安全効果に関し、パス利用の有無による平成30~令和2年度間に退院した57,549名に対するインシデント報告率を、影響度レベル3a以上のレポート件数と報告率を比較した。その結果、パス利用例は、24,986名中2,119件(8.5%)に対し、パス未使用例は32,563名中7,452件(22.9%)と、有意にパス使用例の報告数が少なく(p<0.001)、影響度レベル3a以上のレポートにおいても、パス使用例が397件(1.6%)、パス未使用例が1,557件(4.8%)と有意にパス使用例の報告率が少なく約1/3倍の発生率を示した。(p<0.001) さらに、パス利用例による入院日数短縮効果の交絡を減ずるべく、入院日数20日以内入院に絞り、同様の分析を追加したが、これでもパス利用例の報告数は23,026名中1,247件(5.4%)パス未使用例が24,791名中2,607件(10.5%)、影響度レベル3a以上のレポートでは、パス利用例が186件 (0.8%)、パス未使用例が420件(1.7%)といずれも有意にパス使用例の報告数が少なかった。(p<0.001)以上の結果より、パス利用は医療安全面においても有効である点を示し得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「1.入院クリニカルパスの効果評価」では、令和2年度に、パス利用例の①平均入院日数の有意な減少、②医療の質では、退院後2週間以内の再入院率の有意な減少、③病院経営では、1例あたりの平均収支および黒字症例率の有意な高さを示した。令和3年度では令和2年度例を加えた①③分析が、同様の結果が得られた点を報告するとともに、「2.外来クリニカルパスの効果評価」として、外来パスとして運用中の術前検査パスが、入院日数の短縮効果および経営改善効果が入院単独よりもさらに有意に高い点を示した。令和3年度は、「1.入院クリニカルパスの効果評価」に関し、①③の令和3年度症例を加えた分析に加え、医療安全効果として、パス利用例が有意にパス未使用例に対し、インシデントレポート報告数が少ない点を示した。以上により、入院クリニカルパスにおける①入院日数短縮効果、②医療安全を含めた医療の質への効果、③経営改善効果を明らかにした。外来クリニカルパスでは、術前検査パスにより同様に①入院日数短縮効果②医療の質への効果③経営改善効果を示し得た。残るは、地域連携パスの効果評価であるが、本研究開始期間である令和2年度~令和4年度とちょうど合致したCOVID-19パンデミックによる様々な影響により地域連携パスの評価の遅れがみられたため、研究機関を1年延長して進めている。それでも令和4年度より電子化心不全地域連携パスと電子化糖尿病・歯周病管理パスが運用開始でき、令和5年度に本地域連携パスの利用効果を評価する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究手法である「1.入院クリニカルパスの効果評価」については、令和2年度3年度に、①入院日数に関する評価、②医療の質に関する評価、④病院経営に関する評価を実施し③医療安全に関する評価に関しては、令和4年度にインシデントレポートの報告数の差で評価した。「2.外来クリニカルパスの効果評価」については、術前検査パスの分析によりその効果を評価した。「3.地域連携パスの評価」については、長崎県の地域医療情報ネットワーク「あじさいネット」に構築した地域連携パスのうち乳がんパスと心不全パスを対象に想定していたが、乳がんパスの適用患者が結果的に少なく、さらに本研究機関の一致したCOVID-19パンデミックによる診療への影響で、地域連携パスの推進にも影響を受けたため令和4年度予定分を令和5年度実施予定として、心不全パスと別途計画した糖尿病と歯周病の相互治療効果を意図した糖尿病・歯周病パスを対象に、運用状況を評価し、①適切な運用に関する評価、②医療の質に関する評価、③紙媒体地域連携パスとの比較を実施する。
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Causes of Carryover |
本研究機関である令和2年度~令和4年度は、COVID-19によるパンデミック次期に合致したため、特に長崎大学病院の取組みだけでは完結しない地域連携パスの評価に遅れが生じた。次年度にこれを実施しその効果についての報告において学会等の経費として利用する。
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[Presentation] 【シンポジウム】病院経営とクリニカルパス(診療報酬対策) クリニカルパスの経営改善効果 原価計算を利用した詳細分析2022
Author(s)
松本武浩, 木下琢也, 阪本純也, 井上公介, 辻 藍, 岩崎 恵, 辻 明美, 堀田ほづみ, 出口砂緒利, 伊藤眞由美,
Organizer
, 第22回日本クリニカルパス学会学術大会(岐阜), 20221111-12
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[Presentation] 想定される様々な画像レポートに対応した画像・画像レポート未読管理システムの初期評価2022
Author(s)
松本武浩, 田浦直太, 臼井哲也, 木下琢也, 阪本純一, 大伴哲治, 西口真由美, 堀田ほづみ, 藤沢章令, 本田千春, 牛嶋拓也, 伊藤眞由美, 中尾一彦
Organizer
第26回日本医療情報学会春季学術大会(岡山 岡山コンベンションセンター), 20220630-0702
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[Presentation] 重複記録減少に向けた「診療計画・経過サマリ」導入と運用評価2022
Author(s)
伊藤眞由美, 牛嶋拓也, 一橋了介, 橋本淳子, 秋山久美子, 永井千佳子, 小森朋子, 山本純子, 永尾 香, 田浦直太,松本武浩
Organizer
日本医療情報学会九州・沖縄支部会2022年度秋季研究会(長崎 長崎大学病院 第四講義室), 20221001
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[Presentation] 院内パス教育活動の体制化とその取り組み2022
Author(s)
一橋了介, 松本 武浩, 田浦直太, 西口真由美, 辻 明美, 堀田ほづみ, 由良美幸, 伊藤眞由美, 本田千春, 井上公介
Organizer
第22回日本クリニカルパス学会学術大会(岐阜), 20221111-12
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[Presentation] オンライン診療アプリケーション「YaDoc」を利用したPHR構築2022
Author(s)
松本武浩, 木下琢也, 阪本純也, 田浦直太, 臼井哲也, 大伴哲治, 一橋了介, 辻明美, 堀田ほづみ, 山下利佳, 野上朋幸, 伊藤眞由美
Organizer
第23回 日本医療情報学会学術大会(岡山 岡山コンベンションセンター), 20221117-20
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[Presentation] 電子化クリニカルパスによるインシデント予防効果の評価2022
Author(s)
松本武浩, 木下琢也, 阪本純也, 田浦直太, 臼井哲也, 大伴哲治, 一橋了介, 辻 明美, 堀田ほづみ, 山下利佳, 野上朋幸, 伊藤眞由美
Organizer
第23回 日本医療情報学会学術大会(岡山 岡山コンベンションセンター), 20221117-20
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