2020 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性がんサーベイランスの利益不利益バランス評価と社会的・財政的負担に関する研究
Project/Area Number |
20K10331
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
濱島 ちさと 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (30286447)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝性がん / サーベイランス / 利益不利益バランス / 社会的負担 / 財政的負担 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム医療の進化と共に遺伝子検査の機会の拡大が予想され、がん発症リスクを示唆する遺伝子が検出されることでハイリスク者としてラベリングされる人が増加する。遺伝性がんハイリスク者の遺伝子カウンセリングはあるが、その後のフォローアップ体制は明確ではない。リスクはあっても社会的には健康者に過剰なサーベイランスを提供することは、がん検診と同様の不利益があり、社会的にも損失となる。遺伝性がんサーベイランスの利益を科学的に評価し、利益と不利益のバランスを検討することで、遺伝性がんハイリスク者への適切な対応を提供することができる。遺伝性疾患特有の疾病負担や自然史などの疾患特異性に配慮し、遺伝性がんサーベイランスの利益と不利益のバランス評価方法を検討し、ガイドライン作成の応用を目指す。さらに、プログラムの受容可能性や社会的・財政的負担を調査し、政策導入への基本条件を検討する。 【1.諸外国における遺伝性がんサーベイランスガイドラインの検討】遺伝性疾患サーベイランスに関する諸外国のガイドラインを収集し、その評価方法、特に研究デザイン、評価のエンドポイント、研究の質について評価方法の比較検討を行う。遺伝性がんの疾患特異性をも考慮したサーベイランスの利益不利益バランス評価方法を検討し、ガイドライン作成(特に推奨グレード決定方法)への応用を検討する。 【2.サーベイランス評価に関するシステマティックレビュー】評価プロセスを遺伝性がんサーベイランスへ応用する可能性について、Li-Fraumeni症候群などの評価研究と照合し、有効性評価方法を検討する。 【3.遺伝性がんサーベイランスプログラム】政策導入に向けて、Budget Impact Analysis 、MCDA (Multiple Criteria Decision Analysis) 調査、利益不利益バランス評価に基づき、基本条件を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【1.諸外国における遺伝性がんサーベイランスガイドラインの検討】 遺伝性がんサーベイランスガイドラインについて、作成情報を含めた網羅的な情報を収集するため、国内外での情報収集のため、ヒアリング調査や国内・国際学会への出席を予定していたが、コロナ禍にあって国際的な情報収集が困難であった。主たる方法をインターネット検索や論文検索に切り替えて、情報収集を行った。さらに、情報収集の効率化を図るために、遺伝性がんサーベイランスも対象疾患はLi-Fraumeni症候群に限定した。 2017年にAmerican Association for Cancer Researchは専門家を招聘し、エクスパートオピニオンに基づき、Li-Fraumeni症候群サーベイランスのガイドラインを作成した。参照された研究の多くは、限られた施設における成績報告であり、対象も限定されており、研究成果の主体はがん発見率などであった。疾患の特殊性はあるものの、遺伝性がんサーベイランスを検証するには不十分であることから、専門家の知見を加えたガイドラインであり、最終的に対象数も多く経過観察期間も長いトロント研究のプロコルを踏襲したサーベイランスを推奨していた。NCCN、オーストラリア、UKCGG consensus groupも同様に、全身MRIによるサーベイランスを推奨している。これまでの成果からがん発見率も高いが、陽性率が高いことが指摘されているが、十分な議論が行われていなかった。 【2.Li-Fraumeni症候群サーベイランス評価に関するシステマティックレビュー】 Li-Fraumeni症候群のサーベイランスに限定し、システマティックレビューを開始した。文献検索は完了し、研究の質評価とメタアナリシスを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム医療の進化と共に遺伝子検査の機会の拡大が予想され、がん発症リスクを示唆する遺伝子が検出されることでハイリスク者としてラベリングされる人が増加する。遺伝性がんハイリスク者の遺伝子カウンセリングはあるが、その後のフォローアップ体制は明確ではない。リスクはあっても社会的には健康者に過剰なサーベイランスを提供することは、がん検診と同様の不利益があり、社会的にも損失となる。遺伝性がんサーベイランスの利益を科学的に評価し、利益と不利益のバランスを検討することで、遺伝性がんハイリスク者への適切な対応を提供することができる。遺伝性疾患特有の疾病負担や自然史などの疾患特異性に配慮し、遺伝性がんサーベイランスの利益と不利益のバランス評価方法を検討し、ガイドライン作成の応用を目指す。さらに、プログラムの受容可能性や社会的・財政的負担を調査し、政策導入への基本条件を検討する。 【令和3年度】 令和2年度に引き続き、遺伝性疾患サーベイランスに関する諸外国のガイドラインを収集し、その評価方法、特に研究デザイン、評価のエンドポイント、研究の質について評価方法の比較検討を行う。評価プロセスを遺伝性がんサーベイランスへ応用する可能性について、Li-Fraumeni症候群の評価研究と照合し、有効性評価方法を検討する。 【令和4年度】 Li-Fraumeni症候群について、サーベイランスの利益(有効性)、不利益、費用(Budget Impact Analysisの結果)、価値観及び疾病負担(有病率、自然史など)の面から政策導入についてのMultiple Criteria Decision Analysis(MCDA)を用いたインターネット調査を行い、遺伝性がんサーベイランスプログラムに関する意思決定要因の優先順位を検討する。
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Causes of Carryover |
【1.旅費】遺伝性がんサーベイランスガイドラインについて、作成情報を含めた網羅的な情報を収集するため、国内外での情報収集のため、ヒアリング調査や国内・国際学会への出席を予定していた。しかし、令和2年度は国内外の学会の延期中止が続き、国際的な情報収集が困難であった。このため、情報収集はオンラインが主体となったことから、旅費については支出しなかった。次年度以降は、環境も整備されたことから、ハイブリット開催の国際学会なども活用し情報を収集、また必要に応じ、ZOOMを活用してヒアリング調査を行う。 【2.人件費・謝金】文献整理のために定期的な研究補助を行える人材確保のため、当初は人件費・確保した。しかしながら、コロナ禍でテレワークが推奨される社会状況下で新たな人材を確保することが困難であった。次年度以降は人材を確保し、研究の遂行に遅滞なきよう努める。 【3.その他】初年度はコロナ禍による出張制限などが生じため、PC及び統計解析プログラムを購入し、研究環境を整備した。次年度以降も引き続き活用する。
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Remarks |
科学的根拠に基づくがん検診推進のページ http://canscreen.ncc.go.jp/
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[Journal Article] A Summary of the 2020 Gastric Cancer Summit at Stanford University2020
Author(s)
1)Huang RJ, Koh H, Hwang JH, Abnet CC, Alarid-Escudero F, Amieva MR, Bruce MG, Camargo MC, Chan AT, Choi IJ, Corvalan A, Davis JL, Deapen D, Epplein M, Greenwald DA, Hamashima C, et al
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Journal Title
Gastroenterology
Volume: 159
Pages: 1221~1226
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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