2021 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性がんサーベイランスの利益不利益バランス評価と社会的・財政的負担に関する研究
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20K10331
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
濱島 ちさと 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (30286447)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝性がん / サーベイランス / 利益不利益バランス / リンチ症候群 / Li-Fraumeni症候群 / BRCA1/BRCA2 |
Outline of Annual Research Achievements |
諸外国の遺伝性がんのマネジメント・プログラムを参照し、政策導入の可能性を検討した。 1)英国NHS:リンチ症候群のマネジメント-NICEガイドラインに基づき、NHSではリンチ症候群の段階的マネジメントを行っている。第1段階から第2段階では大腸がん診断時に生検を行い、検体の遺伝子検査によりリンチ症候群を確定する。第3段階では、大腸がん予防対策としての患者本人への情報提供・支援対策・サーベイランスを行い、第4段階で患者の家族に支援を拡大している。 2)英国NHS:Li-Fraumeni症候群(以下LFS)のマネジメント-英国NHSではBRCA1/2、LFSを含む遺伝性乳がんについては検診の早期開始、頻度の増加、MRIの活用など疾患特異性や発症リスクに応じたプログラムが設定されている。UKCGGでは専門家のコンセンサスにより、多臓器のがんの検出サーベイランスを提案している。ただし、対象患者のリスクを明示し、発見頻度が高いがんにサーベイランスの標的を集約している。 3)米国USPTSF-BRCA1/2リスクの可能性のある患者に対するマネジメントとして、リスクアセスメントを行い、乳がんリスクのある患者にはタモキシフェン等による治療も可能としている。intensive screeningについては精度評価研究が1件のみであることから推奨していない。またBRCA1/2のよる卵巣がんリスクに対する卵巣がん検診や婦人科診察も推奨しなかった。 4)まとめ-遺伝性がんのマネジメント・サーベイランスは専門家が中心となりintensive surveillanceが提案されてきたが、必ずしも国家のプログラムの対象にはなっていない。ただし、有病率が高いことや介入の科学的根拠が明確な者に限定して優先的に予防対策が採用されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・遺伝性がんサーベイランスガイドラインについて、作成情報を含めた網羅的な情報を収集するため、ヒアリング調査や国内・国際学会への出席を予定していたが、コロナ禍にあって国際的な情報収集が困難であった。主たる方法をインターネット検索や論文検索に切り替えて、情報収集を行った。さらに、情報収集の効率化を図るために、初年度は遺伝性がんサーベイランスの対象疾患はLFSとし、2年目にはBRCA1/2、リンチ症候群を追加した。 ・遺伝子疾患の諸外国プログラム情報を集積することにより、通常の診療ガイドラインとは異なる疾患特異性やサーベイランスに資する医療資源の相違から、マネジメントの方針の相違点が明らかになった。本年度は診療ガイドライン作成に至るプロセスを重視し、関連する情報の収集を行った。 ・初年度から、先行して行っていたLFSのサーベイランスに関するシステマティックレビューでは、新たなガイドラインや報告が相次いだことから追加検索を行い、その結果に基づき、研究の質評価とメタアナリシスを再検討することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム医療の進化と共に遺伝子検査の機会は今後の拡大が予想され、がん発症リスクを示唆する遺伝子が検出されることでハイリスク者としてラベリングされる人が増加する。遺伝性がんハイリスク者の遺伝子カウンセリングはあるが、その後のフォローアップ体制は明確ではない。リスクはあっても社会的には健康者に過剰なサーベイランスを提供することは、がん検診と同様の不利益があり、社会的にも損失となる。遺伝性がんサーベイランスの利益を科学的に評価し、利益と不利益のバランスを検討することは、遺伝性がんハイリスク者への適切な対応を提供することができる。遺伝性疾患特有の疾病負担や自然史などの疾患特異性に配慮し、遺伝性がんサーベイランスの利益と不利益のバランス評価方法を検討し、ガイドライン作成の応用を目指す。さらに、プログラムの受容可能性や社会的・財政的負担を調査し、政策導入への基本条件を検討する。 【次年度以降の計画】 ・引き続き、遺伝性疾患サーベイランスに関する諸外国のガイドラインを収集し、その評価方法、特に研究デザイン、評価のエンドポイント、研究の質について評価方法の比較検討を行う。 ・LFSについて、サーベイランスの利益(有効性)、不利益、費用、価値観及び疾病負担(有病率、自然史など)の観点から政策導入についての調査を行い、遺伝性がんサーベイランスプログラムに関する意思決定要因の優先順位を検討する。 ・LFSの評価研究のシステマティックレビューを完了しメタアナリシスを再検討する。
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Causes of Carryover |
・遺伝性がんサーベイランスガイドラインについて、作成情報を含めた網羅的な情報を収集するため、国内外での情報収集のため、ヒアリング調査や国内・国際学会への出席を予定していたが、コロナ禍にあって国際的情報収集が困難であった。主たる方法をインターネット検索や論文検索に切り替えて、情報収集を行った。さらに、情報収集の効率化を図るために、初年度は遺伝性がんサーベイランスの対象疾患はLFSとし、2年目にはBRCA1/2、リンチ症候群を追加した。 ・初年度から、先行して行っていたLFSのサーベイランスに関するシステマティックレビューでは、新たなガイドラインや報告が相次いだことから追加検索を行い、その結果に基づき、研究の質評価とメタアナリシスを再検討することとした。初年度の評価を更新したため、論文化に遅延が生じた。
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Remarks |
国立保健医療科学院:令和3年度保健医療事業の経済的評価に関する研修会「がん検診のガイドライン」濱島ちさと.
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[Journal Article] The IARC Perspective on Cervical Cancer Screening2021
Author(s)
Bouvard V, Wentzensen N, Mackie A, Berkhof J, Brotherton J, Giorgi-Rossi P, Kupets R, Smith R, Arrossi S, Bendahhou K, Canfell K, Chirenje ZM, Chung MH, del Pino M, de Sanjose S, Elfstrom M, Franco EL, Hamashima C, Hamers FF, Herrington CS, et al.
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Journal Title
New England Journal of Medicine
Volume: 385
Pages: 1908~1918
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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