2022 Fiscal Year Research-status Report
超高齢化社会における骨折予防:医療介護レセプト研究と費用対効果分析からの提言
Project/Area Number |
20K10340
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
森 隆浩 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学成田病院, 教授 (50384780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
藤井 朋子 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (40793089)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脆弱性大腿骨近位部骨折 / 骨粗鬆症薬物治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は、我が国の超高齢社会において重要な課題である骨折予防に関してエビデンスの蓄積に貢献することである。大腿骨近位部骨折を受傷した高齢者では2次骨折のリスクが高いが骨折予防のための骨粗鬆薬物治療が十分に行われていないことが実情であり、本年度は以下の研究を進めた。
茨城県つくば市の医療・介護保険レセプトと介護保険認定調査データを用い、2014年10月から2017年12月に大腿骨近位部骨折に対する手術を受けた65歳以上を抽出した。そのうち手術前3ヶ月間に薬物治療を受けていなかった患者275人について、個人要因(年齢、性別、認知症、チャールソン併存疾患指数)、ヘルスサービス関連要因(手術年、病院の種類、ベッド数、回復期リハビリテーション病棟への入院)と手術後1年以内の薬物治療の有無との関連を多変量ロジスティック回帰モデルで検討した。男性と認知症は術後1年以内に薬物治療の無いことと関連しており、手術年が遅いことと回復期リハビリテーション病棟への入院は薬物治療が導入されることと関連があった。男性や認知症のある大腿骨近位部骨折患者では骨粗鬆症薬物治療が導入されにくい傾向がみられたが、薬物治療の適応について検討が必要である。また回復期リハビリテーション病棟へ入院した患者ではそうでない場合と比べて骨粗鬆症薬物治療へよりつなげられやすい可能性があるという知見は意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 費用対効果分析研究:研究代表者が筆頭著者で研究分担者が共著者である論文が骨粗鬆症領域で有力な国際学術誌であるArchives of Osteoporosisに2本掲載されており(2020年度に1本、2021年度に1本)、進捗状況は順調である。
2. 医療・介護レセプトを用いた研究(医療費に関して):全国規模の医療レセプトデータを解析した結果を用い我が国における大腿骨骨折に関連する年間医療費の総額を約3290億円と算出した論文がArchives of Osteoporosisに掲載されており(2022年度)、進捗状況は順調である。
3. 医療・介護レセプトを用いた研究(大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症薬物治療導入の有無に関連する要因を検討):当初はA市から入手済のレセプトデータを用いて研究する計画であり研究は順調に進んでいたが、途中データの不備が見つかり研究は中断となった。その後、他の自治体(B市)から入手したレセプトデータを用いて本研究を施行しているが、COVID-19の影響などもあり進捗状況はわずかに遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
医療・介護レセプトを用いた研究(大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症薬物治療導入の有無に関連する要因を検討)を推進する。本研究の進捗状況はわずかに遅れていたがデータ解析は完了しており、研究の成果を9/29-10/1に開催される第25回骨粗鬆症学会で発表すべく演題の登録を行った。今年度は最終年度であり、本研究の内容を論文化して骨粗鬆症領域の有力な国際学術誌(査読あり)に投稿し論文の受理まで進める予定である。その際のopen access論文掲載料は今年度の予算として確保している。
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Causes of Carryover |
2020年度から2022年度まで旅費、人件費・謝金などを計上していたが、COVID-19の影響で学会はリモート開催となり旅費(交通費、宿泊費)が不要となった。また研究員雇用費を予定として計上していたが、こちらもCOVID-19の影響で研究室での研究員雇用は実施されなかった。これらが主たる理由で次年度使用額が生じた。
使用計画:日本骨粗鬆症学会に参加し研究結果を発表する予定である。その他、当該学会の活動に参加することが研究遂行に役立つ学会の年会費や学会参加費も計上する予定である。論文がアクセプトされた際のopen access論文掲載料も確保している。COVID-19の状況が落ちつき今後学会は現地開催が主となってくることに加え今年度で研究を終わらせて論文のアプセプトとopen access論文掲載料の支払いまで完了する必要があり、作業の効率化を図るため持ち運びに適したコンピューターを1台購入予定である。
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