2023 Fiscal Year Research-status Report
Basic and clinical research aiming at optimization of blood sugar management for shift workers
Project/Area Number |
20K10416
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
吉川 昌江 金城学院大学, 薬学部, 教授 (80581389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 康郎 金城学院大学, 薬学部, 教授 (20374192)
吉岡 弘毅 岐阜医療科学大学, 薬学部, 講師 (30756606)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 交替制勤務 / 糖尿病 / 血糖降下剤 / 概日リズム / 糖鎖代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
経口血糖降下薬に関する時間薬理学の報告はほとんどない。交替勤務者が糖尿病に陥りがちな要因として、不規則な勤務状況による生体リズム攪乱及び服用時刻変化が推察される。本研究では「ヒト及び動物で、投与時刻依存で血糖降下薬薬効は異なるのか、生体リズムが攪乱状態において最適服用時刻は存在するか」を明らかにする事が目的である。 ●ヒト:交替勤務者の血糖降下薬の服用時刻と血糖管理効果:1日1回服用のDPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬服用中の「2交替:日勤・夜勤を7日毎に繰り返す」勤務の糖尿病患者を対象に、今年度は勤務体制の違いにより治療薬効果が異なるかを検討した。SG[センサーグルコース値]は、日勤と夜勤で有意差は認められなかったが、日勤のTIR[平均グルコース値70-180mg/dLの時間の割合]は、夜勤のTIRより有意に高いことを確認した。●動物:マウスによる検討を実施。今年度は昨年度に作製・検討が終了したモデル動物を用い、高脂肪食を負荷、さらにSLGT2阻害薬であるダパグリフロジンを朝8時に投与する群と、明期が開始されてから2時間後の投与群でその薬効に差があるかどうか検討した。検討の結果、朝8時での投与の方が、体重減少や血糖値の低下などダパグリフロジンで見られる薬効が強い傾向が認められた。●昨年度に引き続き、モデル動物の評価と薬剤効果の評価指標を探索するために、①コントロール投与群、②高脂肪食群、③高脂肪食+ダパグリフロジン群の3群(各N=3)の血漿中のN-glycanの解析を行った。今年度は①~③について、朝と夜採血のものを解析して生体リズムの影響も評価するとともに、より多くのN-glycanを測定対象とした。その結果、マウスのN-glycomeに明確な概日リズムがあること、高脂肪食で糖鎖発現が変動すること、ダパグリフロジンが糖鎖発現に影響を及ぼすことを示す結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
●交替勤務者の血糖降下薬の服用時刻調査と血糖管理効果:12名に実施したが、コロナの影響で交替勤務が変更となった対象者が出てしまい、最終の条件を満たしたものは8名となった。患者に生体リズム(クロノタイプ)」が確認できる「朝型・夜型アンケート」を実施し、対象者の生体リズムを確認した。血糖トレンド値をTIR(皮下のグルコース濃度が70~180にある時間が70%以上)の時間帯で検討した結果、①勤務に合わせて服用の方が良好だったものが4名、②勤務に関わらず同一時刻に服用の方が良好であったものが4名の結果を得た。その要因が生体リズムと関係しているかをアンケート結果と唾液中の時計遺伝子測定により解析中である。コロナ渦で対象者の勤務体制が大きく変化した影響が響いている。●高脂肪食負荷モデルマウスによるSGLT2阻害薬の薬効評価:高脂肪食を負荷した本実験を行うとともに、SGLT2阻害薬を8時、もしくは明期が開始されてから2時間後の2パターンで検討を行い、シフトモデルにおいてどの時刻がSLGT2阻害薬の効果が得られやすいか検討を行ことは概ね順調に進行した。動物モデルにおける検討は、概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
●ヒト:交替勤務者の血糖降下薬の服用時刻調査と血糖管理効果:血糖トレンド値をTIR(皮下のグルコース濃度が70~180にある時間が70%以上)の時間帯で検討した結果、①勤務に合わせて服用の方が良好だったものが4名、②勤務に関わらず同一時刻に服用の方が良好であったものが4名と半々に分かれた結果が得られた。その要因が時計遺伝子によるものかを唾液中の時計遺伝子で現在検討中である。生体リズムアンケートと合わせて上記の結果より、交替勤務者の最適服薬時間が判明する可能性がある。 ●動物:令和6年度は脂肪細胞や肝臓組織での分子生物学・生化学的な検討を行い、薬効差が認められた機序解明を目指す。 上記のヒト及びモデル動物による検討結果で、「ヒト及び動物で、投与時刻依存で血糖降下薬薬効は異なるのか、生体リズムが攪乱状態において最適服用時刻は存在するか」を明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ渦による対象者の勤務体制の変更等により、実施計画の見直しが必要となった。その為、研究遂行が遅れたが、コロナが第5類に移行したことから、実施計画を順に遂行している。今年度に研究実施のための必要物品購入等を行い、最終検討を実施し、成果を学会発表及び論文を作成することで報告したい。その為の費用が必要となるため。
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