2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation and control of changes in epigenetic metabolism of offspring induced by the mother's nutritional environment
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20K10424
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
斎藤 健 北海道大学, 保健科学研究院, 特任教授 (40153811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藏崎 正明 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特任准教授 (80161727)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 栄養 / 次世代影響 / 糖・脂質代謝 / アポトーシス / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、母親および仔ラットに高脂肪食(HFD)を与えた異常な栄養環境において、授乳期母親のポリフェノール摂取が成熟期仔ラットの脂質代謝に及ぼす影響を検討した。実験にはWistar系ラットを用い、カテキン等のポリフェノールを豊富に含む緑茶抽出物(GTE)を与えた。与える食餌が妊娠期/授乳期/離乳後の仔ラットの順にCON/CON/CON(CON群)、HFD/HFD/HFD(HF群)、HFD/HFD+GTE(0.24%)/HFD(GTE群)となるように3群に分けた。雄性仔 ラットを51週齢まで飼育し、血液と臓器を採取した。 CON群と比較してHF群では、肝臓中トリグリセリド(TG)及びコレステロール(CH)濃度は有意な高値を示し、血漿中TG及びCH濃度は有意に低下した。GTE群では体重及び脂肪組織重量は増加していたが、HF群に見られた血漿中及び肝臓脂質濃度の異常が軽減されており、CON群と有意な差はなかった。肝臓において、HF群ではCON群と比較してFAS、ACC、SREBP-1、DGAT-2、LCAD量が有意に低下し、DGAT-1量は有意に高値を示した。GTE群ではCON群と比較してDGAT-2量は低値を示した。さらに、HF群で他の2群と比較してMTTPの低下とLDLRの有意な高値が示された。 これらの結果は、HF群の肝臓への脂質蓄積は、LDLRによる血中からの脂質取り込みの促進とMTTPによる血中への供給の抑制によって生じていることを示唆している。また、HF群では食餌由来FAを用いたTG合成が促進されていることもTG蓄積に関与していると考えられる。GTE群ではHF群で認められた変動がCON群レベルまで改善された。以上の結果より、胎児期から継続するHFD環境が51週齢仔ラットに誘導する肝臓への脂質蓄積と、それに対する授乳期母親のGTE摂取による保護作用が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
covid-19の影響で、研究室での研究時間や人数に制限が生じたものの、ほぼ当初の計画通り動物実験を遂行し、胎児期から継続する高脂肪食環境が誘導する肝臓への脂質蓄積と、それに対する授乳期母親のポロフェノール摂取による保護作用を明らかにすることができた。また、肝臓中脂質代謝関連タンパク量の測定によって、高脂肪食環境下では仔ラットの肝臓での脂質合成や取り込みが促進される一方で血中への供給が減衰すること、それに対して授乳期母親のGTE摂取は仔ラットの肝臓での代謝異常の改善を介して肝臓への脂質蓄積を抑制することを明らかにすることができた。さらに、これらの成果を取りまとめて、専門学会での発表(紙上発表)を行い、最終的に英文論文として出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、授乳期および発達期の高栄養環境が仔の成熟期において肝臓への脂質蓄積を誘導すること、その作用機序は、肝臓での脂質合成の減少、血液からの脂質の取り込みの増加および肝臓から全身への脂質供給の減少によることを明らかにすることができた。さらに、その影響に対して、授乳期の母親のポリフェノール摂取が改善効果を示すことを明らかにすることができた。これらの結果を踏まえて、高栄養環境が誘導する肝臓への脂質蓄積の原因と影響についてさらに追求する。具体的には、脂肪代謝に密接に関連することが知られている生体機能、オートファジーおよびアポトーシス機能の変動とそのメカニズムについて研究を進める予定である。 さらに、母親の低栄養環境が次世代の成熟期の糖・脂質代謝に及ぼす影響とその作用機序、さらには、授乳期の母親のポリフェノール摂取による改善効果について動物実験を進める予定である。
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Causes of Carryover |
covid-19の影響により、得られた成果による学会発表が紙上発表となり、学会参加のための旅費の支出がなくなった。さらに、covid-19の影響により、研究室での研究実施において、人数および時間制限が設けられたので、それに伴う物品費、人件費の支出が減少したため。
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Research Products
(3 results)