2021 Fiscal Year Research-status Report
野菜、野生動物における薬剤耐性菌の実態解明ならびにヒトへの伝播リスク評価
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20K10433
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
中野 章代 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (10707441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 寿一 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20374944)
中野 竜一 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (80433712)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / 腸内細菌科 / 野菜 / 野生動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤耐性菌は、ヒトのみならず、家畜、愛玩動物、食品、環境など様々な分野から分離されており、これら全ての領域で包括的な対策を講じようとするワンヘルス概念が推奨されている。特に医療現場において、第3世代セファロスポリン(3GC)は感染症治療薬として多用されている抗菌薬の1つであるが、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生による耐性菌が世界中で増加し問題となっており、本邦でも医療現場のみならず市中からも分離されている。耐性菌がヒトに伝播する経路として考えられる、野菜および野生動物における耐性菌の実態解明ならびにその特徴を解析し、ヒトへの伝播リスクについて明らかにすることが目的である。R3年度は、野菜の栽培環境として土壌、野生動物として鹿の糞便を収集した。鹿については、異なる3箇所の地域に生息する野生鹿の糞便を収集した。野菜栽培環境の土壌からはKlebsiella属とEnterobacter属などを分離したが、薬剤耐性菌は分離されなかった。鹿については大腸菌が多くを占め、3GC耐性大腸菌が分離された。その分離頻度は地域により異なりゲノム型も異なっていた。そのため地域特異的に3GC耐性大腸菌が分布している可能性が示唆された。また、カルバペネム、フルオロキノロン、アミノグリコシド、コリスチンなどの薬剤に耐性を示す菌株は分離されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画に従い、R3年度は野菜栽培環境と野生動物(鹿)の検体を中心に収集し3GC耐性大腸菌の分布状況とその関連性などについて解析し、国内における学会で報告した。当初は違う地域の野生鹿の糞便採取を計画していなかったが、奈良公園の鹿から多く分離されたCTX-M-15産生大腸菌が違う地域の野生鹿にも分布しているのか、さらなる実態解明を目的にサンプリングと解析を行った。今のところ奈良の鹿と同じゲノム型の大腸菌は分離できていないため、奈良公園の鹿に特異的な大腸菌がいる可能性があり、次年度も引き続き検体収集を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度は野菜環境の土壌や鹿の糞便から検体を採取したが、検体数がまだ少ないためR4年度も引き続き野菜とその栽培環境や野生の鹿の糞便収集と解析を行う。また、鹿の生息地周辺の病院から3GC耐性大腸菌を収集し、さらにその周辺住民の便も収集し、鹿が保有する大腸菌と同じ特徴を示す株がないかどうか調べる予定である。
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Causes of Carryover |
R3年度に欧州で開かれる学会にて成果発表するための旅費を考えていたが、新型コロナウイルス感染症によりオンライン開催となったこと、野菜の栽培環境について主に調べたため、野菜購入費が発生しなかったことなどから、次年度使用額が生じた。野生鹿の糞便採取のための旅費と追加で野菜検体を購入するための費用として次年度に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)