2022 Fiscal Year Annual Research Report
重金属毒性治療薬の開発を目指した糖尿病治療薬エパルレスタットの新規作用の解明
Project/Area Number |
20K10434
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
立浪 良介 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (90285552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 恵亮 北海道科学大学, 薬学部, 講師 (60733946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エパルレスタット / カドミウム / グルタチオン / MRP1 / グルタチオン転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
カドミウム(Cd)は、血管内皮を標的とする環境汚染物質である。最近の研究では、Cdと血管疾患との関連が示唆されているが、そのメカニズムの詳細は明らかではない。本研究の目的は、糖尿病性神経障害の治療薬として使用されているエパルレスタットのカドミウム誘導細胞毒性に対する影響を明らかにすることである。Cdによる細胞傷害をエパルレスタットが抑制し、その際に細胞内グルタチオン量が増大することを明らかにした。またノックダウン細胞を用いた検討などにより、転写因子Nuclear factor erythroid 2-related factor 2(Nrf2)が上記の抑制作用を制御していることを見出した。さらに本研究では、エパルレスタットが、CdとCdトランスポーターZIP8、メタロチオネインの細胞内濃度に影響を与えることを明らかにした。特に2022年度においてはCdの解毒排泄機構に関わるエパルレスタットの影響について検討した。エパルレスタットにより増大したグルタチオンは、転移酵素GSTによりCdとの複合体を形成してMRP1を介して排泄される。エパルレスタットは、転移酵素GSTP1の発現を誘導したが、一方でMRP1に対する影響は認められなかった。これらの結果から、エパルレスタットによるCdの解毒排泄の作用は主にGSTP1への影響と考えられる。期間全体の成果は、エパルレスタットによる転写因子Nrf2を介したグルタチオン、ZIP8、メタロチオネイン、グルタチオン転移酵素の制御がカドミウム中毒に対する有望な治療アプローチに繋がる可能性を示唆するものである。
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