2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性ヒ素中毒による肺がん発生に特異的なmiRNAを標的とした新規予防法の開発
Project/Area Number |
20K10449
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
崔 正国 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (90572115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲寺 秀邦 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (10301144)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒ素 / がん / 細胞死 / 活性酸素 / SIRT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒ素は、半導体の原料、液晶ガラスなどの工業生産に用途が多い。しかし、ヒ素は非常に毒性が高く、その慢性曝露は肺がん、膀胱がんなど腫瘍性病変の大きいリスクファクターになっている。ヒ素の中毒については、未だに特効薬が開発されていない。本年度は、引き続きフェニルアルシンオキシドの曝露における予防治療法を目指して、フェニルアルシンオキシド急性曝露が誘発する細胞死を抑制するバイカリンの防護効果とその詳細な分子メカニズムについて解析した。ヒト表皮角化細胞株(HaCaT 細胞)をフェニルアルシンオキシドにより処理すると、カスパーゼ-3の活性化を伴いアポトーシスによる顕著な細胞死が認められた。また、フェニルアルシンオキシドはサーチュイン3(SIRT3)の発現を減少させ、細胞内活性酸素の生成を増強した。SIRT3はミトコンドリア特異的に局在するサーチュインタンパク質であり、マンガンスーパーオキサイドディスムターゼを脱アセチル化し、活性化させることにより、細胞の酸化ストレスのレスポンスに深く関与している。興味深いことに、バイカリンの前処理はフェニルアルシンオキシドによるSIRT3の発現抑制を防護し、細胞内活性酸素生成の増強を抑制した。その結果として、フェニルアルシンオキシドの曝露によるアポトーシスも有意に防護された。フェニルアルシンオキシドの曝露におけるバイカリンの防護作用には、SIRT3の発現変化の制御による細胞内酸化ストレスの抑制が重要な役割を担うことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、フェニルアルシンオキシドの曝露による細胞死には、SIRT3の発現減少と細胞内活性酸素生成の増強が関与することが判明した。また、バイカリンはそのSIRT3の発現減少を抑制することでフェニルアルシンオキシドが誘発する細胞死を防護することを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
バイカリンによるフェニルアルシンオキシドの毒性防護効果について、SIRT3を中心にその分子メカニズムをもっと詳しく解析する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度にSIRT3を中心とし、バイカリンがフェニルアルシンオキシドの曝露における防護効果の分子メカニズムを解析する予定であり、本年度の研究費の一部を繰り越して使用する。
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