2022 Fiscal Year Annual Research Report
慢性ヒ素中毒による肺がん発生に特異的なmiRNAを標的とした新規予防法の開発
Project/Area Number |
20K10449
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
崔 正国 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (90572115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲寺 秀邦 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (10301144)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒ素 / がん / 細胞死 / 活性酸素 / SIRT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒ素中毒予防治療法の確立を目指して、フェニルアルシンオキシド曝露による細胞死における天然薬物バイカリンの防護効果と分子機序について解析した。前年度までに、フェニルアルシンオキシドの曝露が誘導するHaCaT 細胞生存率の低下と細胞死にはSIRT3の発現減少と酸化ストレスの増強が関与すること、バイカリンがそのSIRT3の発現低下を抑制することを見出した。本年度はその分子メカニズムの詳細を解明するため、HaCaT 細胞にフェニルアルシンオキシドの処理をおこない、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD2)、Mitogen-activated Protein Kinase(MAPK)とプロテインキナーゼB(AKT)の活性について解析した。その結果、バイカリンはフェニルアルシンオキシドの処理により低下したSOD2の活性を有意に上昇させた。また、フェニルアルシンオキシドが誘導したJNKおよびp38リン酸化の増加とAKTの活性低下を有効に抑制した。SIRT3の阻害剤であるニコチン酸アミドは、そのSOD2活性の上昇を有意に抑制し、細胞内活性酸素生成の増加、JNKおよびp38リン酸化の増強とAKT活性の抑制に伴い、バイカリンによる細胞死の防護効果を減弱させた。以上により、バイカリンはSIRT3とSOD2の活性回復、酸化ストレスの抑制、MAPK/PI3K/AKTのシグナル伝達経路を介し、ミトコンドリアの機能損傷を抑制することにより、フェニルアルシンオキシドの毒性から生体細胞を守ることが明らかになった。本研究で得られた知見は、バイカリンによるフェニルアルシンオキシド毒性の防護効果と詳細な分子メカニズムを示した初めての研究成果であり、ヒ素中毒予防治療法の確立のために重要な情報を提供することと考えられる。
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