2022 Fiscal Year Research-status Report
銀ナノ粒子による肺がん細胞のプログラム細胞死の解明
Project/Area Number |
20K10454
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
宮山 貴光 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20620397)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ナノ粒子 / 銀 / オートファジー / 小胞体ストレス / リソソーム / 肺がん / 神経芽腫 / Rubicon |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに得られた銀ナノ粒子による肺がん細胞の細胞死誘導メカニズムを比較検証するため、神経芽腫のモデル疾患細胞であるSH-SY5Yを用いて実験を継続した。 銀ナノ粒子をSH-SY5Y細胞へ処理して、オートファジー・リソソーム系の評価を行ったところ、タイムラプスライブセルイメージングにより、オートファゴソームの蓄積が経時的に増大する様子を認めた。銀ナノ粒子処理により、リソソームのマスターレギュレーターであるTFEB(transcription factor EB)の発現が抑制される既存の現象に加え、オートファジーのネガティブレギュレーターであるRubicon(RUN domain and cysteine-rich domain containing, Beclin 1-interacting protein)の増大を同時に認めるという新規の現象を観察した。 前年度に検証済みの銀ナノ粒子による小胞体ストレス応答の増大のみならず、上述の結果を包括的に考察すると、オートファジーの破綻形態メカニズムの新たな知見と細胞死の関連性をさらに深める機会につながった。すなわち、銀ナノ粒子の細胞死誘導の新たなターゲットが、近年注目されつつある小胞体ストレス/オートファジーの連携機構に存在するものと示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、2020年度より続く新型コロナウイルス感染症の流行により、連携する他の研究施設への訪問が制限されるケースが継続していた。また、一部の試薬や研究資材の納入に遅れが生じることもしばしばあった。学会参加においては、現地開催とオンライン開催のハイブリッド型の参加形態が主流となり、研究者同士の活発な議論や意見交換の機会を得難い状況が続いている。
|
Strategy for Future Research Activity |
近年、相次いで報告されている小胞体ストレス/オートファジーの連携機構と銀ナノ粒子の細胞死との関連性が想定される。 すでに、オートファジーの進行プロセスに小胞体膜が必須であることや(Nat Cell Biol, 2017, J Biomed Sci, 2020)、種々のナノ素材が小胞体ストレス応答を引き起こすこと(Nanotoxicology, 2018, Part Fibre Toxicol, 2020)、小胞体ストレス応答の因子がオートファジーを調節すること(Arch Toxicol 2017, Clinical Science, 2020)がそれぞれ報告されている。 今後は、上述の個々の先行研究と本実験で得られた検証結果を含めて研究展開をはかっていく予定である。
|
Causes of Carryover |
2022年度は、2020年度より続く新型コロナウイルス感染症の流行により、連携研究機関への施設訪問の制限、本来予定されていた学会・研究会への参加が一部オンライン形式に変更になるなど支出額が当初予定と比較し差異が生じた。一昨年度より続く一部の試薬や研究資材の調達の遅れや入手困難に伴う代替品への検討が本年も生じたため、試薬の購入費用においても差異が生じた。 2023年度以降においては、新型コロナウイルス感染症の法的取り扱いが変更されることから、研究計画通りに研究活動が遂行できると予想している。
|