2020 Fiscal Year Research-status Report
特定健康診査受診の医療費低廉効果に関するエビデンス構築のための縦断研究
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20K10502
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
安田 誠史 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 教授 (30240899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮野 伊知郎 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 准教授 (00437740)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 特定健康診査 / 医療費 |
Outline of Annual Research Achievements |
【方法】 研究対象自治体国保加入者を性、年齢階級で層別して無作為抽出した600人を対象に、連続する4年間について、特定健診受診状況と国保からの医療給付状況を収集した。2年目から4年11か月目までの35月を解析対象期間とし、死亡と後期高齢者医療保険加入を観察打ち切りイベントとした。解析対象期間の月ごとに、曝露有無の判定とアウトカムの計算を行った。曝露有無判定は以下の定義によった:前回の特定健診受診年月からその年月を含む12か月間を前回の特定健診受診の影響がある期間、前回の特定健診の受診年月から13か月目以後、次の特定健診受診年月の1つ前の月までの期間を前回の特定健診受診の影響がない期間。アウトカムは、その月に国保から給付された、入院と外来を区別せずにすべての点数表を通して合計した診療点数であった。 【結果】 標本全員で検討すると、月あたり保険診療点数は、健診受診の影響がある期間では3,033点、影響がない期間では3,402点で、前者は後者の0.89倍であった。標本を、解析対象期間のうち健診受診の影響がある月の割合が100%(健診を毎年受診した90人が該当)、1-99%(健診受診が不規則だった258人が該当)、0%(健診を一度も受診しなかった252人が該当)の3群に層別して、月あたり保険診療点数を比較した。「100%」群では2,374点、「0%」群では3,301点で、前者は後者の0.72倍であった。「1-99%」群においては、健診受診の影響がある期間では3,427点、影響がない期間では3,624点で、前者は後者の0.95倍であった。健診を毎年受診した「100%」群とまったく受診しなかった「0%」群との比較だけでなく、健診受診が不規則な「1-99%」群における健診受診の影響がある期間とない期間との比較によっても、特定健診受診が少ない医療給付に関連していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特定健診受診後12か月を特定健診受診の影響がある期間とみなすことによって、特定健診受診間隔が不規則であっても、特定健診受診の影響がある期間とその影響がない期間を定義できること、そして、2つの期間の間で医療給付を比較できることを実証できた。ただし、医療給付という正規分布をしない変数の要約値について、特定健診受診の影響がある期間と影響がない期間との差を統計学的に検討する方法の開発には着手できなかった。今年度の実績がない成果発表には、次年度以後に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
・特定健診受診の影響がある期間と影響がない期間の間の医療給付の差の統計学的有意性を検討する方法を開発する。 ・特定健診受診の影響がある期間を12か月より短く、あるいは長く設定して、特定健診受診の影響がある期間とその影響がない期間との間で医療給付の差を検討する。この検討から、アウトカムが医療給付の場合の適切な健診受診間隔を提案する。 ・特定健診受診と少ない医療給付との関連が、外来医療と入院医療のどちらで強いかを検討する。 ・特定健診非受診者には、特定健診が標的とする疾患とは関係性が乏しい疾患での管理を受けている者が含まれるので、医療給付を受けた傷病を、特定健診が標的とする疾患だけに限定する解析を行う。この解析の結果を、特定健診受診と少ない医療給付との関連の特異性の吟味に役立てる。
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