2021 Fiscal Year Research-status Report
Pulmonary function survey of rescue and recovery workers of the Great East Japan Earthquake
Project/Area Number |
20K10524
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
色川 俊也 東北大学, 事業支援機構, 教授 (70375179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河内 眞也 東北大学, 事業支援機構, 講師 (40375035)
黒澤 一 東北大学, 事業支援機構, 教授 (60333788)
小川 浩正 東北大学, 事業支援機構, 教授 (90361162)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 災害労働者 / 東日本大震災 / 肺機能 / 職業性肺疾患 / 防護具 / フィットテスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究調査は、①東日本大震災で救命・救助活動に従事した救急隊員や消防隊員の震災前後の健診肺機能検査結果を入手し、その推移を比較検討することで、東日本大震災の救援・救助活動や復旧活動に従事された労働者の粉じん曝露による肺機能への影響を確認する、②同様に震災後のがれき処理や復旧作業に従事した労働者の震災前後の健診肺機能検査結果をもとに復旧作業労働者の粉じん曝露による肺機能への影響を確認する、③近年多発している災害時の救命・救助活動や復旧作業に従事する労働者の粉じん曝露による健康障害(特に肺機能障害)の防止に貢献できる方策を提案することの3つを目的とした研究調査である。 令和3年度は、宮城県沿岸7自治体の消防事務組合(10消防署)に協力を依頼し消防・救急隊員の肺機能調査集積・分析を主体に研究を進めた。結果的には、当初の200名の目標に対して、最終的に50名の健診結果しか入手できなかった。 現在、集まった肺機能データを解析中であるが、単純に比較が難しいデータであり、分析方法と解釈を種々試行・検討している。 しかし、一方で健診肺機能検査結果収集と同時に実施した既往歴・現病歴・生活歴、および震災時の作業状況や防護具の装着状況に関するアンケート調査の結果から救急・消防隊員の殆どが、救命・救助活動の際の防護具として、防塵マスクでは無い使い捨ての紙マスクを使用していたことや正しい防護マスクの装着法の教育を受けていないことが判明した。 この様な事実に基づいて、研究目的の調査に協力していただいたN消防本部にて46名を対象に防塵マスクの正しい装着法を学び評価するフィットテスト講習会を実施した。この活動は、現在、新型コロナ感染症拡大下で展開されている平時の救助・消防活動時の感染防止や粉じん吸入曝露から健康被害を防止する対策にも貢献できていると思われ、受講者からも好評を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は新型コロナ感染症拡大下で各消防署へ思うように訪問・依頼する事ができなかった。令和3年度は宮城県内全ての沿岸の自治体消防本部を訪問し研究調査への協力を依頼した。しかし、東日本大震災から既に10年を経過していたため、当時活動した署員で既に退職された方も多かったこと、定期健康診断項目に肺機能検査が入っていないため、人間ドックを複数年受診している署員でないと調査対象とならなかったこと、協力の意向を表明していただいた場合でも、手元に古い健診結果が無い場合、健診機関に提供を依頼したが、保管義務年限の5年を超過した健診結果が既に廃棄されていたこと等の不測の事態が重なり、各消防署とも退職者も声がけしていただいたにも関わらず当初の200名の目標に対して、最終的に50名の健診結果しか入手できなかった。回収できた肺機能データも受診間隔が個人ごとに差異があり、受診回数も違っているため、単純な比較が出来ないことから、種々分析方法を試行し、客観性のある意味ある解釈を得ることに苦労している。 また、復旧作業者の肺機能評価については、当時の労働者が短期・日雇い労働者が多かったことや、じん肺検診で肺機能検査対象となる管理区分の者が非常に少なかったことから、当初想定していた様な継続的な肺機能検査結果の入手が困難である事が判明し、従来のじん肺健診結果を活用した、別の検討方法を再考する必要が生じている。 この様な状況から当初の研究計画より遅れていると考えているものの、一方で、消防署員協力者に実施した震災時の作業状況と防護具の装着状況に関するアンケート調査の結果に基づいて、労働者の吸入曝露防止対策の実践としてN消防署員を対象に防塵マスクの正しい装着法を講義しフィットテストで実際に評価する実地講習会が開催できたことは予定外の進捗であったことから全体としては、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
救急・消防隊員の肺機能調査については、2001年米国同時多発テロ時に救命・救助活動に従事した労働者の肺機能推移や健康被害に関する公表されたデータと比較して分析・検討を行う予定である。研究代表者は、東日本大震災当時、約2年間にわたって、宮城県内の被災した沿岸地域の土壌環境の調査と網羅的細菌叢調査を実施している。それらの調査結果と併せて、当時曝露したと想定される粉じんの性状要因も含めて考慮した肺機能への影響を分析評価し、学会や学会誌で公表したいと考えている。一方、被災地復旧作業に従事した労働者の肺機能調査については、個別の肺機能検査結果の収集が困難であるため、宮城県内の複数の健診機関で実施されたじん肺検診の結果を集約して分析することを検討している。震災前後で、管理区分対象者率やじん肺X線検査で有所見率が増えていないかなど傾向を捉えたいと考えている。又、災害時の粉じん曝露による呼吸器を主とした健康被害を防止する具体的な予防対策として、令和3年度、N消防署にて実施した防塵マスクに関する講演とフィットテストの実地研修を宮城県消防学校や各消防署単位で実施し、災害時に活躍する宮城県内消防隊員の健康被害防止に貢献したいと考えている。その結果を学会で発表し、活動を国内他県にも復旧させることを目標としている。
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Causes of Carryover |
肺機能検査結果の収集人数が当初目標の200人から50人となったために謝礼発生件数が減ったこと。新型コロナ感染症の世界的な感染拡大が未だに収束せず、国内・国外の学会出席が出来なかったことにより予定した旅費を使っていないこと。が次年度使用額が生じた大きな要因である。2022年度は、国内外を問わず学会に出席し研究成果を発表したい。又、成果を英文論文として公表したい。また、調査対象者が予定より減った分の謝礼については、当初見積もりの無かった、労働者の健康被害防止対策の一環として実施する消防署員対象の防護具装着に関する講演会やフィットテスト実地研修会への費用に充てたい。
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[Presentation] 新型コロナ感染症流行下での産業保健活動におけるVR・ARデバイスの活用.2021
Author(s)
色川俊也,中谷敦,五味遼太,田中雄大,中村剛,菅野恭加,五十嵐侑,新國悦弘, 荒川梨津子, 大河内眞也, 小川浩正, 北村喜文, 黒澤一
Organizer
第80回日本産業衛生学会東北地方会.
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[Presentation] 「仙台産業医学推進協議会~COVID19 ワクチン摂取に関わる今後の職場の課題と事業場・産業保健職の対応について~」のご報告2021
Author(s)
大河内眞也, 色川俊也, 五十嵐侑, 荒川梨津子, 漆山祐希, 望月るり子, 大内みやこ, 小川浩正, 広瀨俊雄, 森弘毅, 岩渕範好, 黒澤一
Organizer
第80回日本産業衛生学会東北地方会.
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[Presentation] 教育・研究機関における作業環境測定を利用した管理シートの安全衛生管理への活用.2021
Author(s)
中村剛,色川俊也,小川浩正,大河内眞也,玉井ときわ,田畑雅央,佐藤和則,鍛冶光司, 吉田裕美, 本間誠, 三上恭訓, 冨樫晋, 服部徹太郎, 黒澤一
Organizer
第94回日本産業衛生学.
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