2020 Fiscal Year Research-status Report
地域一般住民高齢者における重症化予防・介護予防対象ハイリスク者同定の試み
Project/Area Number |
20K10532
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
大西 浩文 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20359996)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 雅之 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10822736)
斉藤 重幸 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (60253994)
樋室 伸顕 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80516576)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 生活習慣病予防 / 高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施 / フレイル / サルコペニア / 地域一般住民コホート / 危険因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我々が継続している地域一般住民コホートにおける高齢者を対象に、高血圧、糖尿病、循環器疾患への罹患とフレイル・サルコペニアの進展の両者に共通する危険因子を明らかにすることを目的としている。今年度は、平成29年度の健診受診者中65歳以上でフレイル・サルコペニア関連の検査を受けた男性155名、女性187名の計342名を対象として、各種健診項目とサルコペニア指標特に下肢筋量との関連について横断的な検討を行った。測定項目は、身長、体重、 腹囲径、血圧値、空腹時血糖値、HbA1c、空腹時インスリン値、中性脂肪値、HDLコレステロール値、LDLコレステロール値、高感度CRPである。インスリン抵抗性指標としてのHOMA-IRを算出した。体組成計にて測定した下肢筋量体重比(%)を従属変数とした重回帰分析をステップワイズ法で行った結果、男性においてはHOMA-IRが有意な関連を示し、女性においてはHOMA-IRに加えて年齢、BMI、腹囲径、高感度CRP、HDLコレステロール、LDLコレステロールが有意な関連を示した。下肢筋量体重比(%)を中央値で高低2群に分けて従属変数とし、教室既報のインスリン抵抗性のカットオフ値であるHOMA-IR1.73以上を共変量として加えた多重ロジスティック回帰分析を行うと、下肢筋量低値に対するオッズ比は、男性のHOMA-IR≧1.73で3.02 (1.49-6.10)、女性のHOMA-IR≧1.73で4.71 (1.43-15.51)とインスリン抵抗性が強い関連要因となっていた。以上の結果より、下肢筋量の低下とインスリン抵抗性は強い関連を示し、インスリン抵抗性が2型糖尿病の背景因子であることを考えると、サルコペニアの予防と糖尿病の予防にはインスリン抵抗性改善が共通要因となる可能性が示され、他の年度のデータでの確認や縦断的な検討が今後必要になると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においては、まず継続中の地域一般住民コホート研究のデータを使用した横断・縦断的検討により、高齢者における生活習慣病罹患とフレイル・サルコペニアの進展に共通する危険因子を解明することを目的としている。研究計画においては、毎年の健診データおよびサルコペニア・フレイル関連指標を前向きにも収集・蓄積する予定であったが、令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、対象地域での特定健康診査を行う上で、感染防止対策を十分とった上で行う方針となり、受診者の会場内での密を避けるため、予約制として人数を制限したことやフレイル関連の筋力測定や歩行速度などの追加検査は行わない方針となったため、前向きなデータが蓄積できていない状況である。令和2年度については、過去に収集したデータで検討を行うことができたが、今後の健診でのデータ収集方法については対象自治体とも検討を行っていく必要がある。今年度はまず横断的な検討によって下肢筋量減少というサルコペニアとインスリン抵抗性という関連を明らかにすることができたことから、今後は複数の年度での同様の検討や他のサルコペニア・フレイル指標と健診データの関連についての横断的検討を拡大することに加えて、縦断的な検討によって因果関係の解明も進めていく方針である。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、従来の特定健診の方法から大きく見直さなければいけない状況となった。健診会場でのクラスターの発生を防止するために、会場内で密にならないよう予約制として受診者数を制限したことや追加項目を行わないことによって健診会場での滞在時間を短縮することを行ったために、本研究の分析項目となるフレイル・サルコペニア指標の収集はできなかった。ただし、平成29年度より、フレイル・サルコペニア指標の収集は継続しており、既存データを活用して横断的な検討を行うことができたことから、次年度のデータ収集も難しいと判断される場合も想定して、縦断的な検討についてもこれまで蓄積したデータによる分析がどこまでできるかを検討する方針としている。次年度は感染防止対策とデータ収集の両立が可能となるよう、自治体と検討を進めている。
|
Causes of Carryover |
本研究においては、特定健診の健診項目以外のインスリン値や尿アルブミンなどの測定費用やフレイル・サルコペニア指標の追加検査の予算を計上していた。しかし、令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、健診会場内の密を避けるために人数制限を行ったことや、健診会場での滞在時間をできる限り短くするために追加検査は行わない方針となったため、支出が少ない結果となり、次年度使用額が生じた。 次年度は、対象自治体と相談の上、十分な感染防止対策を行った上で健診を行って、追加検査も行うことができるように検討を進めており、検査委託費等への支出が想定される。また、本研究においては健診時に対象者から収集するデータが多く、データ入力・整備等に時間を要することから、次年度は今年度より多くの人件費に加えて、現地への調査旅費等としての使用も予定している。
|