2020 Fiscal Year Research-status Report
単剤・多剤の処方薬長期連用が認知機能関連の脳局所容積に及ぼす影響-探索的縦断研究
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20K10542
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
安藤 富士子 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 教授 (90333393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 礼 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 室長 (00532243)
西田 裕紀子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 室長 (60393170)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 処方薬 / 長期連用 / 中高年者 / 大脳局所容積 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
処方薬の多剤併用や長期連用は近年急増しているが、その弊害に着目した研究は少ない。 本研究では地域在住中高年者からの性・年代層化無作為抽出者約2,200人(初回調査時40-79歳)の20年超の縦断疫学調査「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデータを用い、1)ベースライン(第6次調査)から過去10年間の薬効別処方薬(約200種)の使用状況とその基礎疾患を明らかにし、2)薬効別処方薬の単剤・多剤の長期連用がその後10年間の大脳容積、特に認知機能に関連する領域の容積の変化や認知機能の変化に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 研究初年度の2020年度には、1)NILS-LSA第6次調査(2008-2010、ベースライン)から過去10年(第1次~6次調査)の処方薬使用状況を明らかにした。対象者の5%以上が服薬していた薬剤は催眠鎮静剤・抗不安薬/解熱鎮痛剤/精神神経用剤/総合感冒剤/降圧剤/脂質異常症用剤/消化性潰瘍用剤/下剤/糖尿病治療剤/漢方製剤で、服薬者の13~35%は10年前(第1次調査)にも同薬効の薬剤を服用していた(総合感冒薬を除く)。また2)ベースラインの頭部MRI3次元画像のデータベースをクリーンアップし、ベースラインの処方薬使用状況と脳灰白質および海馬等認知症関連領域容積との関連について解析した結果、降圧薬の服用者では脳灰白質・側坐核容積が非服用者と比較すると低値であり、その傾向はACE阻害薬服用者で顕著であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した2020年度の研究実施計画は、ベースラインから過去10年間の処方薬の連用状況を明らかにすることと、ベースラインの頭部MRIの3次元画像のデータベースを作成することであった。現在までにこれらすべてを終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には処方薬の連用状況とベースラインの全大脳・全大脳皮質・認知機能関連領域(海馬、扁桃体、嗅内皮質、紡錘状回、下側頭回、前頭前野等)の容積との関連を明らかにする。 2022年度には処方薬の連用状況とベースライン・2年後(第7次調査)・10年後(追跡調査2)の全大脳・全皮質・認知機能関連の大脳領域の容積変化との関連を明らかにする。中高年者の大脳認知機能関連領域の容積(変化)に関連する薬剤(群)が明らかになった場合は、その薬剤(群)の長期連用が認知機能にも影響を及ぼしているかを検証する。 なお追跡調査2は2018年度に開始され、2021年度中には終了する予定であったが、2020年2月頃からの愛知県下における新型コロナウイルス感染拡大の影響で調査は大幅に遅れている。しかし2020年度末時点で半数以上(約1,200人)の調査が終了しており、2022年度後半には解析に足る十分なデータの蓄積が見込まれる。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナ感染症蔓延の影響で、当初予定していた追跡調査(追跡調査2)への対象者の参加が大幅に落ち込んだ。このため調査スタッフの人件費・謝金が一部未使用となった。また同感染症の影響で国際学会への出張を差し控え、国内学会もWEB開催が多かったため、旅費を使用しなかった。 次年度以降も調査遂行や研究発表は新型コロナウイルス感染症蔓延状況の影響を受けると考えられるが、今後2年間で調査の遅れを取り戻し、積極的に研究発表を行う予定であり、次年度使用額は主に、人件費・謝金、旅費に充てる予定である。
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