2021 Fiscal Year Research-status Report
ABO遺伝子は何のためにあるのか―ABO遺伝子研究の新たな展開と法医学的応用―
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20K10551
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
佐野 利恵 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70455955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 遥一郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50640538)
早川 輝 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90758575)
窪 理英子 群馬大学, 医学部, 技術職員 (40747127)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ABO式血液型 / ABO遺伝子 / エンハンサー / OBP2B |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、クロマチンはトポロジカル関連ドメイン(Topologically Associated Domain, TAD )と呼ばれるループ構造を作り、TADの内部で離れた場所にあるエンハンサーが標的遺伝子に近接し転写調節がなされることが明らかとなった。これを踏まえ、TAD内でABO遺伝子エンハンサーが他の遺伝子発現に関与するとの仮説を立てた。これまでに、ABO遺伝子下流域の上皮細胞エンハンサー(+22.6-kb site)が上皮系細胞におけるABO遺伝子転写活性化に必須であることが明らかとなっている。そこで、CRISPR/Casシステムを用い、胃癌細胞KATOⅢの+22.6-kb siteを欠失させると、ABO遺伝子だけでなく、遺伝子下流のOBP2Bの遺伝子発現量およびタンパク量が減少した。次に、OBP2B遺伝子上流域を組み込んだルシフェラーゼベクターを用いたレポーターアッセイを行い、OBP2B遺伝子のプロモーター領域を明らかにし、+22.6-kbsiteがOBP2Bプロモーター活性を上昇させることを証明した。以上から、OBP2B遺伝子の転写活性化にABO遺伝子エンハンサー+22.6-kb siteが係ることが明らかになった。上皮系細胞株であるMCF-7細胞におけるChIA-PET(クロマチン相互作用)データによると、ABO遺伝子とOBP2B遺伝子は同一のTAD内に存在する。本実験結果からABO遺伝子エンハンサーは、同一TAD内でOBP2B遺伝子の転写を活性化すると考えられた。OBP2B遺伝子は匂い結合タンパクをコードし、リポカリンファミリーに属する。ヒトOBP2Bタンパクは性腺や乳腺などの分泌腺で高発現し、ヒトにおける機能は明らかになっていない。同一TAD内で協調的な遺伝子発現調節がなされるOBP2BタンパクとABO式血液型合成酵素の機能が関連することが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エンハンサー欠失細胞株の樹立から、ABO遺伝子とその周辺の遺伝子解析がすすみ、周辺の遺伝子発現に関するABOエンハンサーの関与が明らかとなった。これらの結果を学術雑誌に投稿し、受理された。本研究結果はABO遺伝子の存在意義に迫る結果であり、これまでの研究にない全く新しい知見となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに遺伝子下流のABOエンハンサーの欠失株の樹立、それに伴う遺伝子発現の変化について明らかにしてきた。今後は、第1イントロン内のエンハンサーの欠失株や、転写開始点下流36kbに存在するエンハンサー候補領域に関して欠失株を作製する。同様の検討を血球細胞株や他の培養細胞でも行い、ABO遺伝子とその他の遺伝子の遺伝子発現の関連について検討する
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Research Products
(15 results)