2023 Fiscal Year Research-status Report
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を標的とした抗体ファージライブラリーの構築と検出法開発
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20K10557
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
笹尾 亜子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (80284751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 佳宏 熊本大学, 環境安全センター, 准教授 (10363524)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 薬毒物スクリーニング / 免疫学的検出 / 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬 / 抗体ファージライブラリー |
Outline of Annual Research Achievements |
法医解剖や検屍・検案時の死因診断において、その死因に薬物が関与したかを確認する事は極めて重要である。現在、その検査手段として免疫学的検出法を用いた簡易薬物検査キットが幅広く利用されている。免疫学的検出法は、簡便に対象薬物を検出できるため急を要する現場では最適なスクリーニング法である。しかし、検査対象とする薬物は限定的であり、また国内の中毒発生状況との乖離が年々進んでいる現状がある。これは免疫学的検出法に必須材料となる薬物に対する抗体作製の難しさが一因となっている。 この現状に対して我々は、新規薬物に対する免疫学的簡易検出法を組換え抗体技術を利用することで迅速に提供するための体制作りを行ってきた。特に、抗体検索に有用と考えられる抗体ファージライブラリーの構築は、薬物検出法の構築までの迅速化に大いに貢献できると考えている。そこで我々は、近年処方が拡大している非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を標的とした抗体ファージライブラリーの構築とその検出法の開発を本研究課題の目的とした。 本年度は、昨年度までに調製した非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ザレプロンに対する組換え抗体についてザレプロンやその代謝物5-オキソザレプロンとの反応性を調べた。(進捗1:一本鎖抗体の調製とその特性)。次にQuenchbody(Q-body)を作製してザレプロンとの反応性等を調べた。(進捗2:Q-bodyの特性)。今後は、この組換え抗体のザレプロン結合能の向上や代謝物との結合能向上を目指していくことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、上記概要に述べたように非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ザレプロンに対するQ-body前駆体である一本鎖抗体を調製して特性を調べた。さらに、Q-bodyを作製して抗原反応性などについて以下のように検討した。 1)一本鎖抗体の調製とその特性:昨年度の検討において、抗原結合性の高い抗体遺伝子を用いて作製したベクターで抗体産生大腸菌2種を形質転換しいた。目的タンパク質を大量発現させ、その破砕上清から粗タンパク質を回収した。アフィニティクロマトグラフィーで精製してQ-body前駆体である一本鎖抗体(MRZ13、MRZ45)を得た。各抗体について、酵素抗体間接法(ELISA)でザレプロンや代謝物5-オキソザレプロンとの結合活性を調べた。MRZ13、MRZ45は異なる結合活性を示し、ザレプロンではMRZ13に比べてMRZ45がやや強い結合性を示した(50%阻害濃度:3、1μM)。また、5-オキソザレプロンとの反応性はいずれも低かった(50%阻害濃度:>100μM)。 2)Q-bodyの特性:各一本鎖抗体を常法に従って蛍光標識してQ-bodyを作製し、蛍光分光光度法にて抗原添加による蛍光強度変化を調べた。Q-bodyはザレプロン添加で何れも1分以内に蛍光上昇が認められた。また、抗原濃度依存的に蛍光上昇し1.5μMザレプロンで約4倍の蛍光上昇率を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの結果では、MRZ13、MRZ45はザレプロン代謝物との反応性がやや弱いことが示されている。そのため、ザレプロンや代謝物との結合能を上げるようにファージライブラリーから変異体を検索することを予定している。なお、Q-bodyとしての蛍光応答性は高い結果が示されており、検出法としてはこの方法を採用することを予定している。想定している結合能を持つ変異体が選別されたのちに、交差反応性等の特性も併せて検討していく。
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Causes of Carryover |
研究内容に関する技術習得のため、研究代表者が他機関に出向いて研修する必要が生じた。そのための研修出張期間が2023年度内に調整ができず、翌年度まで本課題の予算を繰り越しして実施することになったため次年度使用額が生じた。
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