2020 Fiscal Year Research-status Report
生前の臨床症状をふまえ死後変化を予測した死後の処置方法の検討
Project/Area Number |
20K10598
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
片山 知美 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 臨床研究企画運営部, 研究員 (30510812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 裕 東邦大学, 看護学部, 講師 (10510810)
森岡 広美 関西医療大学, 保健看護学部, 准教授 (80641662)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 死後の処置 / 死後変化 / QOD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生前の臨床症状が遺体の死後変化に及ぼす影響を明らかにし、生前の臨床症状をふまえ死後変化を予測した死後処置の方法を確立させることが目的である。本年度は、主に文献検討及び、次年度の調査をスムーズに進めるために調査対象となる機関との関係を築き、調査説明を順次行った。あわせて、系統的レビューをもとに調査票の作成を行った。 文献検討では、わが国において看護師により死後の処置が行われるが、諸外国ではこうした処置は看護師により行われることはなく、エンバーマーなど葬祭業者がその役割を担うことが示されていた。わが国では1~2割程度のエンバーミングであるが、アメリカやカナダでは約9割、イギリスやシンガポールでは約7割とその割合は高く、アメリカでは、エンバーマーへの結核感染、HIV、HCV、HBV感染が報告されていた。イギリスにおいては病院から遺体を出す際は納体袋に収容することが義務付けられており、遺体搬送時における葬祭業者への接触感染リスクが講じられていた。しかし、看護師が死後の処置を行うわが国における看護基礎教育において、遺体の死後変化について学ぶ機会はなく遺体を科学的に捉える知識をもっていない。さらに、生前の臨床症状が遺体の死後変化に及ぼす影響を検討した研究も管見で認められず、死後処置後の死後変化により生じる遺体からの接触感染リスクを考慮した死後の処置方法は検討されていないことも示された。しかし、法医学・遺体管理学では遺体は健常者とは全く異なり恒常性が消失しており、外部環境や外力に対して非常に脆弱で影響を受けやすく不可逆的な変化を生じる。遺体の腐敗は高サイトカイン血症の患者に多く、死亡前38℃程度の体温が続いていると、死亡後12時間以内に目視できる腐敗現象が始まり劇症型腐敗につながることが明らかであり、画一的な死後処置の方法ではあるべきでないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大に伴い、医療機関への立ち入りが制限され、研究協力依頼を行える状況ではない状態が未だ継続している。さらに、本研究計画書申請時には予期できなかった、COVID-19による遺体の死後の処置方法は、COVID-19の感染拡大を防止する観点から、厚生労働省等から示された新たな遺体管理方法に基づいて行われるなど、本研究を取り巻く状況は大きく変化している。さらに、海外への渡航が制限されており、海外の知見を収集することも行えていない。以上のようなことから、当初の計画通りに進めることができておらず、本研究課題の進捗状況は、やや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降において、看護師、葬祭業者、遺族を対象とした実態調査を行う予定である。その結果をもとに、共同研究者2名と共に生前の臨床症状が死後の変化に及ぼす影響を検討する。また、法医学の専門家、遺体に関わる医療従事者や納棺師・葬祭業に関わる者、感染管理認定看護師などの感染の専門家、看護基礎教育に関わる者らでバズセッションを行い、法医学のみならず、遺体管理学、感染管理学、看護学などの視点から生前の臨床症状をふまえ死後変化を予測した死後処置の方法を検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) COVID-19感染拡大に伴い、本研究課題の進捗が遅れていること、共同研究者間の打ち合わせをオンライン会議に変更したこと、世界的な感染拡大により海外視察がおこなえなかったことから次年度の使用額が生じた。 (使用計画) COVID-19の感染状況をみながら海外視察を検討する。次年度実施予定の実態調査では、当初計画通り、交通費等移動に関わる費用が必要になる。その他、調査・面接データの入力作業費、分析のためのソフト購入費、学会発表に関わる費用等で使用する。
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Research Products
(1 results)