2022 Fiscal Year Research-status Report
肥満者の皮膚障害予防を目指した真皮細胞外マトリックス調節機構の解析
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20K10604
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
槇原 弘子 横浜市立大学, 医学部, 講師 (00708696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤瀬 智子 横浜市立大学, 医学部, 教授 (50276630)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肥満 / 皮膚 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満は創傷治癒遅延、創部感染、褥瘡などの皮膚障害のリスク因子である。肥満者に対する皮膚ケアや皮膚障害に対する予防策を確立していくためには、基礎研究の積み重ねによる分子メカニズムの解明が必要となる。本研究では、肥満により減少する真皮の細胞外マトリックスには皮膚の強度だけでなく創傷治癒促進に働くことに着目し、その減少メカニズムについて解析するものである。 これまでに肥満モデルマウスによる検証で明らかにした真皮エラスチン線維について、ヒト皮膚組織を用いて検証し、BMIの増加に伴い真皮エラスチン線維が減少することが示された。一方で、肥満モデルマウスで生じていたエラスチン分解酵素の遺伝子発現の亢進については、ヒト皮膚組織では認められなかった。本年度は、エラスチン産生に関わる分子の遺伝子発現量を解析し、ELNの発現量がBMIと正の相関、エラスチン線維量と負の相関関係を示すことが明らかとなった。この結果はヒトでは肥満によるエラスチン線維の減少に対し、代償的な産生の亢進が生じていることを示唆する。 さらに本年度は、皮膚組織におけるECM産生に対するSema3Aの関与を検証した。Sema3Aノックアウトマウス(ヘテロ)と野生型マウスの皮膚組織を用いてCol1a1, Col 1a2, Col 3a1の遺伝子発現量を定量した。その結果、ヘテロマウスではCol3a1の発現量に減向を認めたが、統計的に有意な差異ではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
解析に使用するヒト皮膚検体に関して、COVID-19の影響による対照施設での手術予定の大幅な変更に伴い、解析用の検体の入手が難しい状況が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに肥満モデルマウスおよびヒト皮膚組織では共に肥満によって真皮エラスチン線維が減少することを示してきた。しかしながら、肥満モデルマウスや先行研究で示されている分解酵素については、発現増加が確認できていない。これに対し、ヒトの加齢によって亢進する分解酵素も報告されているため、それらの分子の解析を進める。また線維の産生に関わる分子についても未測定のものの解析を進めていく。 Sema3Aの解析に関してはノックアウトマウスおよび肥満モデルマウスのWntシグナルの解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大により、動物実験の制限やヒト皮膚検体回収の減少などが発生した。その影響によりこれまでの累積として1,336,283円の繰越が生じている。今後はSema3Aノックマウスや肥満モデルマウスの解析を中心として、ECM産生に関する分子の解析を進める。また次年度は、これまで得られた成果を学会や論文投稿を介して公表してく予定であり、学会参加費、宿泊費及び旅費、投稿に関わる英文校正等の費用に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)