2020 Fiscal Year Research-status Report
看護学部での放射線健康リスク教育を支援する教材開発とその教育効果の検証
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20K10669
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
塚本 恭正 岩手医科大学, 看護学部, 准教授 (80341725)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射線 / 看護学教育 / 教材開発 / 多職種連携 / 放射線防護 / 医療被ばく / 患者指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」で求められている「放射線健康リスク教育」について放射線学を専門としない看護系教員が実施できる教材を作成し、その教育効果を検証することを目的としている。初年度は、その第一段階として放射線健康リスクに関する教材(第1案)を作成し、研究代表者が看護学部1年生91名に対して研究授業を実施した。作成した教材は、90分授業3回分で、第1回「放射線とその単位、放射性同位体、半減期」、第2回「放射性物質と環境」、第3回「放射線の防護と安全、放射線の人体への影響」で構成した。作成した授業資料は放射線関連の専門用語をなるべく平易に解説し、理解に最小限の用語にとどめた。また、イラストを多用してイメージしやすい構成とした。そのイラストや表などは著作権に配慮するためPCを用いたデジタル画像を作成した。将来的には放射線学の知識が十分ではない看護教員がこれらの資料を用いて授業をすることを計画しており、そのための資料作成も同時に行った。作成した資料の妥当性を評価するため昨年度の研究授業は、研究代表者が実施した。今回の授業で明らかになったことは、高等学校で放射線について履修していない学生が6割を占めていた。高等学校では物理基礎で放射線の基礎を扱っているが、履修しても実際の授業では扱われていないケースもあった。それらの学生は今回の授業で初めて放射線について学ぶことになり、それに配慮したコンテンツの作成が必要であることが分かった。今回実施した授業の理解度は、各回で課したレポートで簡易的に評価した。放射線と放射能の区別ができていない学生や、放射線量や被ばく量の関係についてもあいまいな学生も多く存在していた。放射線学の専門用語や考え方に苦手意識が感じられた。今回の研究授業を実施して浮かび上がった改善点を教育コンテンツの修正と充実に反映させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では本研究は以下の3段階に分けて遂行する予定となっている。 段階①:医療現場で必要とされる放射線看護の知識と看護学教育モデル・コア・カリキュラムの学修目標を踏まえた「放射線健康リスク教育」教材および教育支援資料(指導用マニュアルなど)を作成する。 段階②:作成した教育コンテンツを用いて放射線を専門としない看護系教員が授業を行い、その学習効果を検証する。 段階③:教育コンテンツを広く公開し、利用者の意見をフィードバックできるプラットフォームを構築する。 このうち2020年度は段階①「教材および教育支援資料の作成」を実施する予定だったが、教材の作成と改善を行うことができ、おおむね順調に進展していると判断した。作成した教材を使用した研究授業を実施して改善すべき点が明らかになり、資料に修正を加えてより充実したコンテンツになったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究授業を実施した対象学年が1年生ということもあり、放射線医療に関連した内容には踏み込めていない。今後は看護学部2年生を対象に「放射線を用いた画像診断」についての教材を作成する。X線撮影、CT(コンピューター断層撮影)、PET(陽電子放射断層撮影)を実施する際の患者(介助が必要な場合は看護師も)の被ばくと防護について学べる教材とする。臨床現場で行われている患者の検査に伴う放射線被ばくについて患者の不安を軽減し、検査前の処置、検査後に有害反応が生じたときの対処について学び、必要な対策などについて考えられるようにすることができる教材作成を目指している。さらに疾病や看護学各論についての学習が進んだ看護学部3年生に対して「放射線治療」についての教材を作成する。ここでは放射線治療の原理と共に放射線を照射することによって正常組織に生じる有害反応(急性期反応および晩期反応)への治療前後のケアについて学べる教材とする。このように看護専門教育を受けた年数(学年)に応じた教育コンテンツを作成することにより、より広い利用者の獲得が見込まれる。また、教材の一部に音声データを組み込むことも始めており、放射線について知識が十分なく、教材の利用をためらう教員に対するサポートとなることが見込まれる。今後は作成した教育コンテンツを看護系教員が利用して実際に授業を実施するための準備を進めていく。また、作成した教育コンテンツが看護師に必要なものであるかを放射線科のスタッフの協力を得て確認してもらうことも並行して行う。
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Causes of Carryover |
学会参加のための旅費として当初、300,000円を計上していたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う年会の中止やweb開催などにより使用しなかったため、次年度使用額が生じた。
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