2020 Fiscal Year Research-status Report
優れた看護実践を導く看護情報の明確化と電子カルテ看護情報提供システムの構築
Project/Area Number |
20K10693
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中西 永子 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (10843013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂下 玲子 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (40221999)
小野 博史 兵庫県立大学, 看護学部, 講師 (70707687)
新居 学 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (80336833)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電子カルテ / 情報探索行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「優れた看護実践に必要な情報は何か」が、学術的に明らかにするために、良い実践を行っている看護師はどのような情報を、どのような順番で、どのような思考パターンで情報を収集しているのかを明らかにし、どのように情報提供をすれば看護実践に必要な情報を効果的・効率的に収集できるのか試作モデルを作成し検証することを目的にしている。 本年度は模擬電子カルテシステムに視線計測器を設置し、操作者の視線の動きを画面上に表示させた画像を録画したデータの分析を行った。看護師の視線動画は1秒ごとに分割し、静止画にした。静止画内のどのエリアを見ているのか、タスクに沿って分類した。同じタスク名を見ている秒数をカウントし、ベテラン群と新人群に分けて分析を行った。看護師に対するインタビューデータから患者情報把握得点を求めた。結果、患者1名あたりの電子カルテからの情報収集に費やす時間は平均約5~6分で、全タスクは約70タスクあり、情報収集に費やす時間の約半分を電子カルテの操作時間に費やしていた。ベテラン看護師は新人看護師より情報収集時間は短い結果となったが有意差は認められなかった。看護記録からの情報収集時間は新人群のほうが、有意に長かった。看護記録の中でも、臨床上アセスメントするポイントが多い記録の情報収集時間は新人群のほうが、有意に長かった。患者情報把握点数が高い看護師は、タスク数が多く、観察項目についての閲覧時間が長いことが明らかになった。患者情報把握得点が高い看護師は、同じ画面を集中して閲覧するのではなく、必要だと考える情報を、画面を切り替えて収集し、自身の中で患者像を組み立てていったと推測された。 動画データを1秒単位で分析した結果では不十分であるため、0.1秒毎の写真データへ変換し、視線注視部分のみを人工知能を用いて自動抽出し、注視していた文字列を一覧できるシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではベテラン看護師は22名、新人看護師は13名のデータを分析した。本研究の結果、患者1名あたりの電子カルテからの情報収集に費やす時間は平均約5~6分で、全タスクは約70タスクあり、情報収集に費やす時間の約半分を電子カルテの操作時間に費やしていた。今回の結果では、電子カルテの操作時間に費やす時間を多く費やされていたが、看護師が情報収集に必要とするデータと必要のないデータが電子カルテ上に混在して表示されており、迅速な検索が困難になっている状況がうかがえた。看護師の情報ニーズに合ったユーザビリティが配慮された電子カルテのインターフェイスを検討する必要があることが明らかになった。ベテラン看護師は新人看護師より情報収集時間の結果は看護記録からの情報収集時間について新人群のほうが、有意に長かった。看護記録の中でも、臨床上アセスメントするポイントが多い記録の情報収集時間は新人群のほうが、有意に長かった。患者情報把握点数が高い看護師は、タスク数が多く、観察項目の閲覧時間が長いことが明らかになった。全体の閲覧時間については患者情報把握点数との関連がみられず、情報の把握は、時間ではなく、情報の取り方が影響することが示唆された。今後、看護師にとって効果的な電子カルテを構築する場合には、必要な情報に優先順位をつけアクセスしやすくすることも重要であるが、看護師側がどのような情報が患者把握に重要なのか、そのアセスメント力を鍛えることも同時に必要であることが示唆された。 視線動画データを1秒単位で分析した結果では不十分であるため、0.1秒毎の写真データへ変換し、視線注視部分のみを人工知能を用いて自動抽出し、注視していた文字列を一覧できるシステムを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
動画データを1秒単位で分析した結果では不十分であるため、0.1秒毎の写真データへ変換し、視線注視部分のみを人工知能を用いて自動抽出し、注視していた文字列を一覧できるシステムを利用し、データ分析を進めていく。情報収集時間の結果、ベテラン看護師と新人看護師の時間的有意差が生じた看護記録からの情報収集時間について0.1秒ごとの分析を行うことを予定している。また、患者情報把握点数が高い看護師はどのような順序で閲覧し、情報を統合しているのかを明らかにする。データ分析は、時系列に並べたテキストを、統計解析フリーソフト「R」の時系列パターン分析を行うためのアルゴリズム(cSPADE(Sequential Pattern Discovery using Equivalence classes):arulesSequencesパッケージ)を用いて、時系列パターン分析を行う。頻度や時系列順序のパターンについて明らかにすることを予定している。そのパターン結果を踏まえ、臨床看護師にも意見を聞く機会を設置し、看護実践に必要な情報を明らかにし、情報収集しやすい看護情報提供モデルを試案するためのデータ収集を行う。
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Causes of Carryover |
開発環境用電子カルテに視線計測機を装着し、病院で「優れた看護実践を行っている」と所属長が考えている看護師と経験年数が少ない看護師からの調査を予定していたが、新型コロナ感染症の関係から調査が困難となった。そのため、本年度は事前に収集したデータを用いて動画分析の手法や内容について取りまとめを行った。次年度、感染状況が落ち着いた場合は研究の実施、看護師からのインタビューなどを予定している。また前年度取りまとめた内容を論文投稿を予定している。
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Research Products
(1 results)