2020 Fiscal Year Research-status Report
助産師に焦点を当てた医療事故判例分析の医療安全教育への活用
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20K10850
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Research Institution | Kawasaki City College of Nursing. |
Principal Investigator |
山崎 由美子 川崎市立看護短期大学, その他部局等, 教授 (00341983)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 周産期医療事故 / 助産師 / 再発防止 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療事故の再発を防止する施策が医療者に求められている。医療事故の再発を防止するためには過去の事例を正しく認識し、それを教訓として学ぶ姿勢をもつことが重要である。そのため本研究は、医療事故判例を再発防止の観点から分析し、助産師教育や卒後教育に役立てることを目的とする。これにより、助産師に焦点を当て分析した過去の事例を体系的に収集することができ、実践の場で活用できる医療安全教育システムを構築することが可能になると考えている。 令和2年度は、過去20年間の裁判例につき、法律データベース(TKCローライブラリー)を用い検索した。平成10年以降の周産期医療事故訴訟判例は127件あったが、そのうち助産師の行為が主な争点になったものは31件あった。31件中、助産師の過失が認定された原告勝訴判決は21件あった(内訳:高等裁判所判決3件、地方裁判所18件)。その中には民事と刑事、両方で争われた事案も含まれる。再発防止対策の検討を行うため、これらの主な争点を分類したところ、①医師への報告義務、②陣痛促進剤投与中の経過観察義務、③分娩監視装置の装着・経過観察義務、④異常時の対応義務に問題があったものが多いことがわかったため、一部を学会発表した。また、少数ではあるが、裁判における助産師の証人尋問に対する信憑性や、医師-助産師間の証言の食い違いを認定する場面における記録の重要性が問われたものもあった。 助産師の過失が認定された原告勝訴判決の多くが分娩期の事例であり、妊娠期の事例は1件のみであった。被害内容は母体死亡、子の脳性麻痺、子の死亡であった。被害の重症度から、慰謝料認定額は当事者につき約2,000万円と高い傾向にあることがわかった。 次年度は、これらの判例の争点を絞り、助産師の視点で再発防止対策を図式化することを考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、コロナ禍により大学運営に大きな変更が生じた。そのため、本研究調査においてもスタートが若干遅れる等の影響があった。しかし、結果として過去20年間の裁判例の検索は令和2年12月に終了し、その後①年度別、②分娩経過別、③助産行為別、④被害の重症度別、⑤頻度別のカテゴリー分類まで終了することができた。 一方、緊急事態宣言等により専門家による意見を十分に得ることができなかったため、ホームページに事例を公開するまでには至らなかった。この点に関し、次年度は早急に取り掛かると同時に、今年度の計画についても同時遂行していくことを考えているため支障はないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、令和2年度の結果を踏まえ、周産期医療事故につながる重要な場面から①裁判で認定された助産師の過失、②再発を防止するために必要な場面の振り返り、③被害者の事故後の状況等につき、詳細な検討を行う予定である。また、裁判における助産師の証人尋問に対する信憑性や、医師-助産師間の証言の食い違いを認定する場面における記録の重要性が問われたものもについて、その要因等を学会発表する予定である。
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Research Products
(1 results)