2020 Fiscal Year Research-status Report
処置場面における子どもの体験に関する状況特定理論の構築
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20K10875
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
藤井 加那子 兵庫医療大学, 看護学部, 講師 (30404403)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子どもの体験 / 採血 / 状況特定理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主として、理論構築のための前段階準備としての先行研究の検討と、先行研究内で示されている内容の分析を行った。先行研究の検討は、「採血を受ける幼児」が記述されている研究の網羅的な収集を行った。その結果、海外と国内では処置を受ける子どもが置かれる状況は異なる部分もあるが、採血実施前という状況で見せる反応や医療者と子どもの相互作用に関する研究が確認されている。海外文献は、古くは痛みの緩和に関する研究が多くなされていたが、近年子どもの体験している世界を知る、現象学的手法を用いた研究のように子どもの姿を記述する研究もみられてきている。国内では、古くは子どもの恐怖心や不安に関する研究が中心であったが、子どもと医療者の相互作用や子どもの対処行動に焦点を当てた研究が多くなっている。 子どもの採血に関する研究は「コミュニケーション」や「医療者の働きかけへの反応」「プレパレーション」のように主題とする内容が複数にわたるたっており、子どもの体験に関する記述の整理が不可欠であり、文献検討と並行して実施を行っている。この文献検討で得られている結果は、今後予定をしているシステマティック・ビュー(以下、SRと略す)でコアとなるキーワードの検討やプロトコール策定に活かしていく。 また、「採血を受ける幼児の体験」を考え、状況特定理論を構築していくうえで元となる理論についての検討を行っている。ストレス・コーピング理論等、いくつかの理論を候補として考えているが、主に看護学分野の理論の検討となっている。 なお、本年度はCovid-19のため臨床現場での実践現象の観察を実施することは困難であり、計画書に挙げていた採血場面における子どもを対象とした参加観察研究は次年度以降に実施、あるいは計画内容の見直しを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は主として「処置を受ける子ども」を主題とする先行研究の検討と、先行研究内で示されている内容の分析を行った。各データベースを用い文献収集を網羅的に実施し、国内・国外の先行研究内容の検討を実施している。「処置を受ける子どもの体験」そのものを主題とする研究は少なく、「処置を受ける子ども」が対象となった研究で確認できる子ども姿の整理を実施している。先行研究は質的研究を中心に内容の確認、精読を実施している。文献検討においてはキーワードの探索に時間を要した。特に海外文献検索におけるキーワードは国内文献検索で用いたキーワードをそのまま用いることは難しい部分もあり、時間を要した。先行研究の検討は現在も継続しているが、新たに加えるべきキーワードはないか注視している。 また、基盤となり理論の探索を看護分野で用いられる中範囲理論を中心に検討を行っているが、どれもが成人を対象とした理論であるため、子どもに適応できる理論なのかどうかを検討する必要があると考えられた。このため、看護分野以外の発達心理学や認知心理学といった心理学分野にも探索を広げて、理論探索を行っていく必要がある。 参加観察型研究については、フィールドの了承を得ることがCovid-19下では難しく、研究計画の見直し、修正を余儀なくされている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においては、文献検討を終了するとともにSRのプロトコール策定を実施する。 すでにプロトコールのJBI登録を経験している研究者より助言をもらいながら、21年度中の申請、可能であればプロトコール登録を目指す。SRプロトコール策定のための文献の収集と整理には時間を要することから、適宜研究補助者を雇用して、これ以上の遅滞なく進められるようにしていく。 Covid-19により臨床での現象確認が難しいことが見込まれるため、実践家からのインタビューといった観察に替わる方法を用いることで理論構築が行えるかを検討していく。可能な限り実践状況の観察を行えるように、施設と交渉を行っていくが、必要に応じて実施計画の変更を検討する必要がある。実践状況の観察研究は医療状況の影響を強く受けるため、先行研究検討、SR、基盤となる理論探索といった現在の状況でできることに重点を置いて計画を進めていく。
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Causes of Carryover |
Covid-19下による本務(教育)対応に時間と労力を要したため、研究開始に遅れが生じてしまっていた。そのため計画全体が遅滞気味となり、研究使用額も減少している。また、研究を進められる時期には、所属機関都合で20年度科研費の執行が行えず、やむなく2021年度に繰り越さざるを得ない部分があった。 2021年度は、研究補助者を雇用し20年度に集めた文献の整理やSRプロトコールの翻訳など適宜行っていく(謝金による支払)。また、理論探索のための文献購入などを行う。 Covid-19のため、各種学会が全てオンラインとなっているが、理論開発に関係する学会に参加を今年度は検討している。
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