2020 Fiscal Year Research-status Report
成人学習理論に基づく父親の育児行動促進のための周産期の看護介入プログラムの開発
Project/Area Number |
20K10930
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山口 咲奈枝 山形大学, 医学部, 講師 (20431637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 幸子 山形大学, 医学部, 教授 (30299789)
藤田 愛 山形大学, 医学部, 准教授 (70361269)
遠藤 由美子 琉球大学, 医学部, 准教授 (90282201)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 父親 / 育児行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、成人学習理論に基づき、父親の育児行動を促進するための周産期における看護介入プログラムを開発することである。近年日本では、男性の育児休業の取得促進や長時間労働を是正する働き方改革などの制度が充実してきている。また、20代30代の男性の70%が妻と同様に育児を行いたいと考えており、社会制度や父親の意識は積極的に育児参加する方向に変革している。研究者はこれまでに父親の育児行動を促進する介入研究を行ってきた。その結果、父親の育児行動を促す動機を明らかにし、自分の意思で育児をする意欲を高め、実践を通して育児能力を身に着けることで、父親の育児行動は促進されるという概念枠組みを構築した。Knowlesが提唱した成人学習理論は、このように対象の自主性と経験に働きかけることが、行動変容に有用だと示している。若年世代の父親は育児に関わろうとする意思があることから、その思いを尊重しつつ、父親が育児をする必要性を理解してもらえるように働きかけることが動機付けとなり、出生直後に我が子の育児を経験することで、その後の育児時間が増えることが推定できる。したがって、本研究では、成人学習理論を基に、父親が自分の意思で育児をする意欲を高め、育児の実践を通して育児能力が身に着くようなプログラムを作成し、周産期に介入することで、父親の育児行動が促進するかを検証することとした。父親の育児行動を促進することは、夫婦協同の育児につながり、夫婦のワークライフバランスが実現する。さらに、父親の育児参加によって、夫婦の出産意欲が高まり、次子の出生率が上昇することから、本研究は少子化社会の改善に寄与する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は成人学習理論に基づき、父親の育児行動を促進するためのプログラムを作成することを目的とした。研究分担者と共に成人学習理論の4つの概念を柱にプログラムの具体案を検討した。プログラムの構成案は、妊娠期の準備、産後の生活や育児についての個々の計画を立てる、妻や子どもとのスキンシップのエクササイズ、子どもの世話の実践、父親が育児をする意義や妻が望むサポートの紹介、産後の母子の生理的変化と生活リズムの解説、看護者による育児手技のデモンストレーション、子どもの啼泣時の対応方法のシミュレーションである。また、プログラムに導入したエクササイズについては、フィット・フォー・マザー・ジャパンのインストラクタコースを受講し、指導スキルの向上に努めた。プログラムを実行するにあたり、妊娠期から産後にかけて、どの時期に実施することが妥当であるか、研究分担者との話し合いや文献検討を行ったが、根拠となる成果が得られなかったため、対象者である父親のニーズを調査することとした。そこで、全国の1歳未満の育児をしている男性を対象としたアンケート調査を行った。また、2020年は新型コロナ感染症の影響により、産前教室などの育児指導は中止となったり、オンライン形式に変更になる等の社会的な変化がみられたため、保健教育の実施手段のニーズについてもアンケート内容に含めて調査した。 このように、本研究は研究実施計画通りに研究を実施できている。したがって、本年度は研究実施計画を十分に達成していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、父親の育児行動を促進するための看護介入プログラムを開発し、ランダム化比較試験によって、プログラムの有効性を検証することを目的としている。2021年度はパイロットスタディを行い、研究プロトコルを確立することを目的として研究を進める。2020年に実施した父親の保健教育に関するニーズ調査では、保健教育の項目によって、妊娠期から産後にかけてどの時期に実施を希望するかや、対面式、オンラインなどどのような手段を希望するかについて、ばらつきがみられた。この結果を基にパイロットスタディの時期や方法を検討していく。また、申請当初は、対面式での保健教育を想定していたが、社会情勢の変化やアンケート結果を踏まえ、保健教育の内容によっては、対面式だけでなくオンライン形式のパイロットスタディも検討する必要があると認識している。したがって、2021年度のパイロットスタディは対面式およびオンライン式双方の実施を計画している。また、2020年度に実施した父親の保健教育に対するニーズ調査の成果は、2021年度に論文投稿をする予定である。 このように本研究は年度毎のタスクを遂行し、看護介入プログラムの作成、パイロットスタディの計画を順調に進めていることから、今後も研究実施計画通りに研究を進められると考える。
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Causes of Carryover |
申請時の計画通りに研究費を使用したが、2020年度はCOVID-19により学会が中止または延期されたことで、申請していた旅費を使用しなかったことから残額が生じた。 2021年度はオンライン開催される学会に参加する。残額を合わせて申請時の計画通りに使用する予定である。
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